指先だけで、そっと
窓を開いてみる
隔てていた向こう側には
空の海があり
紙飛行機を飛ばす
誰宛てとかではなく
紙飛行機を飛ばす
そこに、意味なんてない
ここは海だろ ....
ステンドグラスが光る
クラシカルな部屋で
私は無言のまま
珈琲を含み
ケーキを頬張っている
鏡張りの壁に
もたれ掛かる身体は
きっと、もうすぐ
溶けてしまうのだろう
....
忘れ物思い出し歩を返し言う
独りごと人に聞かれし居しかも
凍る朝素足に草鞋の修行僧
声あげ行くに襟正したり
断絶と言わるる代に独り居の姑に
電話をすれば風邪ひき
家の建つ前 ....
こたえ、という
ことばそのものは
とてもかよわいものです
だからといって
あきらめたりはせず
突きつけることもせず
こころは、そう
並んでいけたなら
じゅうぶんだと思います ....
普段は絶対に使わない漢字を
みんなはすらすらと書いている
そんなことぐらい
書けて当然らしい
でも手紙や作文の書き方を
ほとんど知らない
当たり前のことが
わからなくなっている
複 ....
{引用=「序」
万華鏡に
甘い想い出だけを そっと詰めて
くるくるまわして のぞきこむ
金平糖のじゃれあうような
さらさらした音がはじけて
あまりの甘さに 歯を痛めて ....
まだ、淡い光の粒が
生温い風に乗って
私の目の前を
きらきらと通り過ぎた
限り無く空に近い
窓辺から首を出して
その、行く手を追い掛けても
追い付ける筈は
なく
....
空気で身体を洗って
空を仰いで
膨大な宇宙に
飛んでいく
あのころの
空は
青く澄んでいて
忘れられない横顔
長い睫毛が
煌めいていた
そのすべてが愛しくて ....
{ルビ静寂=しじま}からもの憂き雨が貫けど
破れる夢もない熱帯夜
曼珠沙華かさなる闇に{ルビ咲乱=さくらん}す
狂おしいまま抱く情に似て
熱き夜に悶える ....
換気扇が、軋んだ音を降らす。
両親たちが、長い臨床実験をへて、
飼い育てた文明という虫が、頭の芯を食い破るようで、
痛みにふるえる。
今夜も、汚れた手の切れ端を、掬ってきた、
うつろな眼で、 ....
銀色に輝く
紋白蝶の魔法の粉
きらきら
どれほど集めれば
自由に羽搏けるといふのでせうか
あをいそら
一枚二枚
母の髪を梳くやうに
幼い私
蝶の翅をもぎ取る ....
プラットホームに無数に付けられた
チューインガムの黒点が
未熟な夏の気温を
幾分か下げている気さえして
ぎんいろの屋根に逃げ込む
そこから視界に飛び込む紫陽花の
無防備な一片は
まだ ....
まどろみを さめたり もぐったり
白日の 季節の かいなの なか
体力は うばわれ
けだるさに 眠って
窓を 吹いて くる
れもんの 風との トランスファー ....
一 「ミッシング・ピース」
手渡されたたった一枚の
欠けた切符のように
行き先でもなく
日付でもなく
空白のはずなのに
それ以上に大切なものを
どこかに忘れたまま
....
はしゃいで飛び込んだプールの底に顔面を泣けるほど打ったけど
涙をプールの水に紛らせ笑った夏でした
カルピスが痰みたいに絡んだけれど
白くて甘い夏でした
台風で傘が根元から折れたけど
....
そっと でいいから
ふれてみたい
あなたの零した一雫のわけを
どこから
流れてきたのですか
まりのような白い雲が
あちこち 漂っている
空なのに
雪解け水が激しく流れる季節は
....
嘘で固めた
仮面を嵌めて
道化のように
飄々と
愛想笑いを
貼り付けて
表面上の
お付き合い
誰も仮面に気づかない
誰も嘘には気づかない
....
この地球には
捨てるものなど
何一つとしてありません
あなたたち動物の排泄物も
やがては花となり
実となるのです
まだ使えるものなのに
物を捨てさせなければ
物を作り出せない
そ ....
{引用=
浅い夢に色を塗って
コバルトブルーの空にして。
}
辛いことがあったとき
一人心の中だけで
泣けるような大人になるには
まだ、時間がかかりそうです。
....
羊水の中で生きぬように
私はかく強くありたい
境界線に達してもいいさ
それが私の生き様となるのなら
羊水の中で溺れぬように
私はかく厳しくありたい
機械にも人形にもなりたくはないさ
....
群れを成し
一点を見定め
乱れぬ様は
予め組み込まれた
仕掛けのように
波紋がやがて
飲み込まれ
波間の一部となり
消えゆくように
石瀬に映る影が
揺れながら
あとを追う ....
「アリュール」
{ルビ汚=けが}れならば五月雨川に流せりと誘ふその手は{ルビ梔子=くちなし}に似て
「ブラック」
黒髪に触れし指先奏づるは重なる肌のあつき旋律
....
東京、ぼくの見た東京
髪や服に滲みついた煙草と、酒と青春と
01/06/2007
イヤフォンは四六時中、質問を繰り返す
だから答えばかり眺めている
きみのいないところで
間違い ....
緑色いっそう深まり空曇りスズメさえずる朝の机に
わずかなる胸の痛みと音楽の耳にいりくる今朝の心に
マンネリか歌に心はずまずに昔作りし懐かしき歌
陽は上り妻の植えにしかわゆ ....
夜の飛行場には
サヨナラが点在する
携帯電話のキーのような
小さな光の形をして
滑走路を疾走するもの
引き離されるもの
雲に呑まれるもの
星になるもの
僕らの住む街 ....
「いつか奇跡」
霧雨の向こうに遠い日の日記 差し出した手が迷い濡れてく
影送り透けて遠のく僕たちの眩ばゆいほどにピュアな夏の日
吹くはずのない甘い ....
沙漠から取り寄せた砂を
僕たちは浴槽に撒く
言葉に塗布された意味を
一つずつ丁寧に
酷くゆっくりと落としながら
シャボン玉を
空間を埋めるために飛ばす
乾いた砂に埋もれた言葉を
....
ただの憧れだけだったなら どんなに楽だろう
数歩先を歩く後ろ姿 顔なんか見えなくたって
笑っているのがわかる 距離
目分量で注いだ優しさ 芽吹く日が来るのはわかっていた
君の心と 僕の心を ....
いちたすいちは
にじゃないと答えたら
みんなに笑われた
でも
美術の先生だけは頷いてくれて
スケッチに出かけた
あの丘の上から
故郷の青空をいつまでも眺めていた
ずっと憧れていたこ ....
夕暮れ色の飛行船、
たくさん空に浮かんでいたけれど
空と一緒の色だったので
誰にも気付かれないままでした。
*
毎朝、起きたらすぐに顔を洗います。
....
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