■共同作品■ カゲロウと花
Rin K





  
   「いつか奇跡」

霧雨の向こうに遠い日の日記 差し出した手が迷い濡れてく

影送り透けて遠のく僕たちの眩ばゆいほどにピュアな夏の日

吹くはずのない甘い風に結んだ手 「いつか奇跡」と握る強さよ

きらきらと波間で遊ぶ太陽を飲み込んだノドに夏の陽炎


 
   「春・初夏。五月雨」

春を乞う春をうらやむ痩せ猫に花びらかかる満月の夜

真っ白なコットンシャツの腕まくり早く来いよと夏を先取り

五月雨に澄みてかなしき高瀬川洛の賑わいとおく聴こえて

みどり葉を内に秘めたる群れツツジ 安らぎ分かつ今日ゆく者に



   「空に放とう」

語りくる無意識のなかにある意識たぶんコバルトきっとプラチナ

揚雲雀ここまで来いと声高く 届け祈りよ駆けよ希望よ

この空のはじめと終わりは見えずとも紙飛行機に想いを乗せて



   「愛のある町」

香ばしいあんドーナツのぬくもりは 誰にも譲れぬ母の手に似て

立ち上る湯気が螺旋を描いてる 「おかえり」が待つちいさな時間

繰り返し名前を叫ぶは夢の中セピアになった恋の思い出

追伸:夏には故郷に戻ります。 あの日のままの海を見つめに



   「影ロウと花」

夕映えが伸ばした君の影の先頬染めうつむく杏子一輪

五月雨の路(みち)打つ音に退いた 傍らに花濡れたまま咲く

ゆっくりと陽射しは胸に溶け込んで 3年後にはやさしさになる









短歌 ■共同作品■ カゲロウと花 Copyright Rin K 2007-06-03 09:46:57
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