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眠る肢体の硝子の呼吸に
空の落下を錯覚する
心音の宙に浮いてきそうな静けさに
めまいしてうつむく不意なかたちで
水性のからだへと溶けそうで
うわ言をもらすあなたの手に
ドライフラワーを一輪 ....
ばっさり斬り落とした短い髪に
唖然とたたずむ
(なんか、めんどくさくって
照れたように君が笑う
右の頬を隠して
僕の知らない君の夏
正しい折れ曲がり方なんて
よく分からないけどさ
....
空虚な腹部で
命と鳴いている
今日は夏だ
われんばかりの空だ
あぁ、こぼれてゆく
大地の精霊を
宿す
からだは
青空のもとで響く
首すじに光る雫を
ハンカチーフにすっと吸わせる ....
Tシャツの背中をたどっていく
汗の粒が
落ち切る
急ブレーキのときの感触が、まだ消えない
喉でとまった騒音
頭痛の夜に
有効な腕の力を押し出して
短冊にさ ....
せかい、というビンのなかに雨がふります。
あおくとうめいな悲しみが、
ガラスの内がわにすいてきとなって、
したたっていきます。
ビンのなかでも、
そらは、どこまでもはてがないようで、
....
彼方からの気流にのって 届いたそれを
あのひとは
夏だと言った
わたしにとって
わたしの知らない、どこか
遠い場所で あのひとが
笑ったり、泣いたり、しているということは
あ ....
歩道橋の真ん中に
枯れた花束があった
しなびて横に傾いていた
錆びついた階段を
とにかくのぼって
誰かが飛び降りた
歩道橋の下の
....
舗装された過ぎた道路は西に伸びる
隠された向日葵の種は
次はいつ芽吹けばよいのかと
首をかしげ
夏は立ち尽くしている
都会育ちの猫は
酷い体臭を払い除けながら
夜を寝床として
彼の恋人 ....
湾曲している水平線上にて、
しめって酸化しそうな金属の肌が
垂れこめた雲に灰色の腐蝕を放っていて
見あげても星は降る気配
海の月の揺らぎ
飽和した幻影の瞬く電子
この神経を流れ去ることのな ....
ブルーベリージャムの あまずっぱい朝に
「お早う」と言って
庭へ目をやる
すっと口許に手をそえ
ちいさな欠伸
すこし涙がじんわり
(うつむいて)
すっと小さな海をふちどる
縁側でやんわ ....
夜のデパートの屋上に
つぶれた胎児
滑り台を
のろのろと
転がっていく
乳房にたどり着けなかった
液状のような未来像が
後から流れ落ちてきて
ライトアップのまばゆい光に ....
誰もいない電車の中
話し声が聞こえる
複雑に絡みあう心電図のリズムがぶつかっては弾け
私を切り刻む
邪な水位が胸の辺りまで
満たしはじめ
私は錯乱の消火器の底で
いつ ....
お人形と
お気に入りの
絵本を
雲間で
読み終り
障子に透ける
西日の淡く
映るところへ
夢想の焦点残照と
お散歩?
お部屋をくるぐる旋回
お話をお人形のお早うへ
あな ....
青みがかった林檎の衰退を
思い描こう
猫の目で
白いテーブルクロスの端の
黄ばみから生まれた
獣性
屠り
塀のレンガの数だけ
....
朝の空気の
光に濡れた
清々しい香気に、
私の五感はしとしとと沈み{ルビ水面=みなも}をみあげる重く熟した金属の愁い。
空間をよぎる
不透明な視線は、
無知な陽炎となってさえずり虚空を ....
女の 音よ
湿った 黒い 布を
擦れた 音をたて
陽射しは 見えず
目くらの 老女よ
祈る様は 砂塵の 禅僧
にも 似た
目
目の 落ち窪んだ
中から 蝶が 出る
祈 ....
雨の天使が
岩の物語を読んでいる
{ルビ静寂=しじま}と{ルビ静寂=しじま}を
鳥の声が{ルビ継=つな}ぐ
焼き捨てられた本の煙
地から天へ帰る雨
恵みの恵み
....
両手で耳を大きくすると
レールに乗ってやってくる
それは 子供が並べたりんごの列を
カタカナのように蹴散らしてやってくる
老木に耳を押し当てると
樹液も僕を聞いている
僕は掌にオレンジ ....
自炊なんかしねぇ
俺の部屋 三角コーナーのスポンジから
俺の生活の血が滴り落ちる
見ず知らずの人刺したのは
後でやっと気づいた
赤目剥いて俺を見つめる信号の赤
....
{引用=小鳥のあおいへ}
君の目の
レモンのかおりするかたちで青い輪にふちどられた高く清んでいる空
少女だった
君は、
妻になり
母になり
私の恋人でもあって
今日、{ ....
手のひらになじんだ約束は 紅茶が来る前に冷めてしまった
切り刻まれた家族写真 バス停のベンチの下に散らばって
あつめても元に戻らない 砂塵舞う風に消えた
....
筆先で湛えきれず
液体が
ぽたり、ぽたり、と
滴るので
両の掌をくぼませて、ふくらみをつくり
上向きに
すこしかさねて
それをすくおうとしてみるけれど
わずかな隙間を
液体はすりぬ ....
くるまって
まって一周するまで
くりかえす性
好き嫌いで見ちゃいない
忠実に実って
私種子を振動する
果物のコーナーで
ミカンやバナナ
リンゴキュウイイチジク
フルーツを物色 ....
濡れはじめた空が
歌をくりかえすのに
私はピアノを弾けないでいる
雲が沈み雨音が遠くなり
やがて射しこむだろう光に
伸びた髪をさらす
地上が反転する雫のなかで溺れる
鳥の影が風に波打つ
....
揺れる
カーテンの裾の
ほころびに揺れる
春と呼ばれた香りが
部屋の中で静かに声を潜めて
消える
まばたきの間に
ひとつ、ふたつと零れる花びら
風が
新しい季節が来ることを告げる ....
仕掛けのない心の中
もう 桜の噂
だまされちゃいけないよ
おわってなんかいないよ
水色の空 曇らせて
吹き やまない雪
綺麗な花 なんだよ
薄桃色の
枝の名前に はら ....
在る
始まって以来続いてきて
この枝の伸びやかな道道に
茂る葉の呼吸は瑞瑞しい
それも
小雪のちらつく昨夜の雲上の月も
陽炎のゆらめく送り火も
私を育ててくれる花娘
季節の ....
つみかさなっている遠さの てっぺんに憧れ
冷え切った形の流動する 煙仕掛けのからだ
あら、今日もあいさつをしている朝焼け
分解の森でうすわらい 月の咆哮の真空放電にしびれる華 ....
雨は雨から何も得ず
雨をふたたびくりかえす
歩みは歩みから何も得ず
雨をひとり歩みゆく
あたたかさ冷たさをくりかえす
愚かさを 愚かさをくりかえす
雨のなかを追いか ....
まだ見たことのない
果実に境界線を張り
流漂する異国の砂漠
三日月が蒼く涙する
空で暗雲が轟き裂けて
光速でかおるレモン
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