すべてのおすすめ
市営住宅を取り囲む塀のなかで
ぼくはひとり能の練習をしていた
隣接の公園でこどもたちの遊ぶ声が
やわらかなガラスみたいになって空を引っ掻いている
能を教えてくれたのはお母さんの ....
知らないから呼んでみた
そっとお父さんと
声にだしてみた
お隣にも友達にもいたよお父さんが
どんな人なのかは見て知ってた
お父さんって子供を
どんな風にみるの
お父さんって子供を ....
くもをたべる透明ないきものが
空に住んでいます
優しいナイフで切り開いて
あの日 歓声をあげて
逃げ水を追いかける
おさな子はぼくですね
ちっともつかまえられないのに
追 ....
死んだふりばかりうまくなって
世渡り上手になれなくて
からっぽの冷蔵庫みたいな心をもって
誰も愛すことができない僕は
たまに必要とされることが
たまごを割る時みたいにうれしい
濡れた藪の陰には
ヤスコちゃんがもう膝を抱えている
色の変わった大きな樽の中は
トシユキの指定席だ
横木の折れた狭い入り口に
クモの巣は長くぶら下がって
すでにだれかが小さな手足の跡を
....
むかし、近所に住んでいた
髪のながい女の人が
ことばはオモチャじゃありません
そういって
心に両手をつっこんで
僕の言葉を持っていってしまった
....
おかねをかりに
まちにきたと
つまがわたしに
でんわした
こんなにてつやして
やすみなくはたらいても
まだたりないのだ
しょうひんけんをかう
そのとなりで
はしゃ ....
そんなことしたら
また再会することになっちまうじゃない
愛より弱いこと
ひとりひとり続けようか
大好きだった
いつもそばにいた
いまも影や轍
気にして生き ....
芸術家なんてものは、名前が売れなければ金は無い。人間が生きていくには金が要る。名も無き芸術家は、生きていけない、死んでいくだけ。
もう駄目だ、と呟いて、自分の意思で死んでいこうとする画家がいた。 ....
きれいな空があるって知っていても
それをいつも忘れている気がする
空が街に沈んで街が空に昇り
そうやって今日が終わろうとするとき
おだやかに眠るための記憶が
きりりとした感 ....
手つなぎ鬼
手はなし鬼
追う声を呑み
誰もみな鬼
明るい網戸
羽の失い虫
みどり飽和
みどり喰む虫
見つかりません
見つかりません
あなたは順路 ....
子供の頃に見た
昼間の夜空を覚えている
小さな光の点を
本当の星だと思っていた
プラネタリウム
その言葉の響きの良さも
好きだった
そして
今でもときどき思うんだ
....
あと10日で
あたしの生まれた日が
来る
もう
嬉しくもない年だが
1年に一度
この日は
母に 感謝の電話を入れる日に
している
なぜなら
遠いこの日
あたしは産まれ ....
いろいろと・・
思うようにならないこと
かえってこない 返事
わざと ではないけれど
返事の書きづらい 手紙を 出してみた
少し 余分に 考えてもらいたくて
はみだ ....
ときのほとりで
さかなつりをした
たくさんつれたけれど
いっぴきもつれないひもあった
さかなはつまがりょうりした
おいしいとつたえた
たべないひもあったから
あいしてるとつけ ....
くじけそうになるたび
辛いことがあるたび
自分らしく生きよう
何度思い直して生きてきたのか
らしくあるために
何度自分の気持ちを捨ててきたのか
振り返ってみろよ
積み重ねてき ....
ママがホントは嘘つきだって
僕に教えてくれたのはデイジー。
白いスカートが似合う女の子。
パパがホントは嘘つきだって
僕に教えてくれたはデイジー。
真っ赤な頬した女の子。
デイジー ....
イマ カエル
妻に電話する
自分の声がおかしい
イマ カイモノ シテル
妻の声も
カタカナになっている
おかしい
近くで息子の声がする
オツキサン ミエナイ ....
お前自由を愛して
羽根をもがれるのは嫌だとか訳分かんない理屈で
あの娘を捨てたんだろう
....
卵に言葉を教えた
教えた言葉を
卵はすべて覚えたけれど
口がなかったので
話をすることはなかった
雲が形を変えながら
夏の空に消えていく
わたしが生まれてから
何度も見たそ ....
空を見上げたあなたを覚えている
強いひとになりなさい
と言われたことがある
そのときのあなたは泣いていた
いつしか同じことを僕が言っている
気づくと僕は泣いてはいない
あな ....
はあとのつもりで
はあとをつけた
いたがった
はあとのつもりで
あとをつけた
いやがった
はあとのつもりで
はとをつけた
とんでいった
はあとのつもりで
と ....
ときどき僕は、まだ羊水の中で
少し離れた場所から聞こえる声に
そっと耳を澄ませている気がする
それは子守り唄のようで
鼓膜を揺らすほどでもない
優しさを持っている
とき ....
あなたの
まじめさはいい
ただしさはいい
はじめはたにんを
ひていしなかった
けんきょさがいい
ひとがらもよかった
けれども
ひていしている
ひていしはじめている
....
僕は、雨が嫌いだ。
というよりは、雨で濡れるのが嫌いだ。
だから、雨が嫌いというよりは濡れるのが嫌いなのかもしれない。
しかし、シャワーを浴びるのが嫌いじゃないことから、水に濡れるの ....
泥になって
まもろう
あなたの
すこやかな睡眠と
思想を
まもろう
ひやりとあたたかく
まもろう
泥になったわたしには
思想もなく
身体もなく
ただそこにあるよう ....
厚顔無恥な私を
やわらかな笑顔で迎え入れてくれたその家で
酒をごちそうになった
しどろもどろの
要領を得ない
私の話に
やわらかな笑顔で相槌をうってもらいながら
温かい
温 ....
嫁が欲しいが良縁がないので
この際もう人でなくても良いと思い
皮付さきいかを嫁として迎え入れたが
晩酌のつまみをうっかり切らした際
ほんの出来心で嫁を食ってしまった
以来わたしは嫁殺しの罪を ....
きゅうじつ
のっぱらにねころんで
そらをみている
くもが
すこしずつ
かたちをかえながら
いそがしそうに
そらをながれていく
あれはあれで
しごとをしているのだ
....
林檎のかおりがする 天の河
もう随分と走ってきた
星へのひとり旅
白十字も恐竜の化石の海岸も通り越し
鳥を獲る人は、とうに降りてしまったし
銀のすすきの野をみるために
列車の窓を開 ....
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