エンマサマに舌を抜かれて一番困ることは
ともだちの味がわからないこと
手が勝手に増えたり
シナプスが複雑になったり
全部 ひとりぼっちになること
おじぎをおしえるおかあさん不足
そんな ....
鋭い痛みが走る
きつく押さえた指の間から
血が流れていく
ポタポタと落ちて
流しに広がる
息をのんで立ちすくむ
いったいどれほど切ったのか
怖くて見られない
ニンジンを見つめた ....
ちッちゃな子供が
こちらを見上げてしゃべるのだ
まだたどたどしくて意図がくめず
まるで異邦の言葉
大人は子供の
言葉の一つ一つをやさしくつむいでやるが
二人の伝え合いはあまりうまくいか ....
まな板の上で
かつて
生命を有していた
魚が微笑う
深い海の記憶が
プチプチとした卵のかたちをして
銀色に膨らんでいる
今にもビッグバンを起こして
マリンブルーの
星の卵が
膨張しはじめる気配
....
闇を彩る星たちは
静謐(しず)かな炎を纏い
熱き魂の唄を奏でる
遙かな月に手を伸ばす
掴めぬ あなた
信念(まこと)抱き 何処(いずこ)へ
涙は光の絲(いと)となり
切なさと恋し ....
濡れた髪は ずっしりと重く
何か 不吉なものでも
背負ってしまったかのような
切迫感に 駆られる夜
ドライヤーで 乾かすと
スッキリ 軽くなるから
何かを 失ってしまったような
不安 ....
絵の具のにおい
月に触れる指
何処へもいかない
うたの行方は
異なる星
燃えおちる 燃えおちる
ひとりの内に ひとりは増し
さらにひとり
さらに緑
....
あたしがみる夢は
いつも
途中で真っ黒になる
それは空から突然
真っ黒な布をはらりとかぶせられたように
やっと 電話が通じた途端
やっと あの人が現れた途端
やっと 抱きしめられた途 ....
望んでない炎
炎に{ルビ塗=まみ}れた稲わらが強引に{ルビ傾=かし}げる
カーテン越しから囁く者たちは
そこから離れなさいと
ただ 唇を動かす
ありえない色
塗り替えられた あの土地 ....
夕やみ歩く猫
のし
のし
人ごみと並んで歩いては
立ち止まり
都会が鼻歌まじりに風を歌うのを じっ と聞いている
夏はまだ長い
今日もずいぶんと蒸していて
建物からこぼれる冷気とごちゃ ....
雨が上がり
虹が出れば
人々は家から飛び出して
泥を捏ねて塑像を造ります
雲間から漏れる光で 塑像を乾かし
虹の絵の具で 自在に彩ります
そうして出来上がったものを
人々は ....
いいや、俺がピカソだ
お前がピカソなのか
そうだ オレこそがピカソなのだ
どうしてもピカソなのか
どうやらピカソなのだ
おまえは ピカソ化、そうなのか
....
夏の日差し
夏の青
真っ白な街真っ白なふるさと
だれもいない街
あれから悲しみは痛みに変わりましたか?
痛みを知りましたか?
雪の記憶の声
いえ
ひとりぼっちでただひたすら歩く ....
われわれは
枝葉末節にて
生きるもの
幹に遠い
根に遠い
地を摑めない
空を仰げない
無知の世界
生の盲目
見得るものしか
見られない
枝の一本 ....
塔
君はまだ
この街の謎に気付いていない
誰かが言った
この街は誰かが見ている夢で
目覚めたら
消えてしまうんだと
途端に
僕の体は透けはじめて
今じゃもう向こう側が見える程
....
最初は誰もがただの雨だと思った
それは空の破片だった
乾いてひび割れて
ぱらぱらと空が
降ってきたのだ
空のすべてが落ちてくるかもしれない
どうやって己を守ろうか
頑丈の建物を作っ ....
この真昼
かいま見る
白日のさなかに
真夜中の闇
見てはならぬものを見て
見ぬふりをしたくなる
光の中に
あってはならないはずの
漆黒のかげ
光はあるのだ
たしかにあるのだ ....
まっすぐに伸びた楡の根元に座って
視界に収まらない空を見ていた
眼球の限界―
やはり人間は限界のある生きものらしい
銀色の飛行機が頭上高くを過ぎる
遠ざかってゆく機影に憧 ....
活動しない雲は
たいてい灰色をしている
海の上に
面倒くさそうな
固形物が
存在する
白い犬
がそれを見ている
黒い少年
がそれを見ている
そんな淀みの中の
なんでも ....
僕らの道を
導くのは遠い
羊の瞳
冷たく澄んだ
あおい水が
てんてんしたたる
僕らの道と
それから血管
僕らの道を
導く導火線
あかく燃え立つ
みずうみの重みも澄み
そ ....
青らむ、夏の
わたしの首すじ に
風がひそかな挨拶をおくる
揺れやまぬ草の穂先のいじらしさ
痺れた指でもてあそびながら
あなたのことをかんがえる
青らむ、人の
まなじりの ....
遠い昔の縄文の
汚物の塚を保存する
歴史保存の尊さか
ヒマラヤ杉に隠された
世界規模の気候変動
遮光土器は本当に
差し込む闇が横一線
土塊(つちくれ)の中から捻り(ひねり)出 ....
ない花の
ない花言葉
曇と光に
隔てられる朝
あなたには誰もおらず
聞き耳をたて
鼓動はひとつ
あなたしか あなたにはおらず
雨の羽虫
水に映らな ....
波打ち際に
打ち上げられた
白
い木の
生
の部分が
別の情報
に置き
換えられ
死
はそれを
流木へと
昇華していった
白
い影が
太陽光に焼かれて
炭化してゆく ....
ずっと夕暮れの町で
よく
眠れないなら
おばけにあいにいこう。
廃工場に集まって
拾ってきた猫に
ミルクをあげたら
おばけにあいにいこうよ。
凶暴な僕らに
怖がらないで
....
わたしは、思い出す。
緑青色に変化する刹那に
わたしは、思い出す。
貴賎の値札を貼らないと不安な人々が
まだ陽気だったころ
西欧の文化道理の規範と日本とは別であったころ
学 ....
薔薇の花弁の道から
幼子は現われてくるのだ
父の一滴の涙と
母のうめき声のもとに
遠いはるかなところから
一つの言葉はやってくるのだ
父なるものの死と
母なるものの無のもとに
....
夜な夜な
あなたが台所から
空のボウルを持ってきて
食卓に置いた
私を人差し指でさして
「空だ」と言う為に
白のテーブルクロスに
私を寝かせて
殴り始める
夜な夜な
ボウル ....
あかちゃんが
いい
においを
させている
おかあさんは
花柄のタイツを
はいている
細かいプリーツの
スカートを
はいて
花が大きい
花が大きかったね
ベッドにつっぷして
....
奇跡が起きるなんて思ってないし
僕は君を愛さないし
何かが変わることにも期待してないよ
ゆれるよ
ゆれるよ
奇跡の入ったグラスの中で
溺れる君の心臓が
ほんの少しだけ嘘を吐いた
....
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