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知らない街に居た
いやよく知ってる街だった
移ったばかりの部屋の
窓際に
くる日もくる日も座っていた
窓際に立つと眩暈が起こるので
窓際に座っていた
これは一つの逃走だった
....
ちッちゃな子供が
こちらを見上げてしゃべるのだ
まだたどたどしくて意図がくめず
まるで異邦の言葉
大人は子供の
言葉の一つ一つをやさしくつむいでやるが
二人の伝え合いはあまりうまくいか ....
われわれは
枝葉末節にて
生きるもの
幹に遠い
根に遠い
地を摑めない
空を仰げない
無知の世界
生の盲目
見得るものしか
見られない
枝の一本 ....
この真昼
かいま見る
白日のさなかに
真夜中の闇
見てはならぬものを見て
見ぬふりをしたくなる
光の中に
あってはならないはずの
漆黒のかげ
光はあるのだ
たしかにあるのだ ....
僕らの道を
導くのは遠い
羊の瞳
冷たく澄んだ
あおい水が
てんてんしたたる
僕らの道と
それから血管
僕らの道を
導く導火線
あかく燃え立つ
みずうみの重みも澄み
そ ....
薔薇の花弁の道から
幼子は現われてくるのだ
父の一滴の涙と
母のうめき声のもとに
遠いはるかなところから
一つの言葉はやってくるのだ
父なるものの死と
母なるものの無のもとに
....
くるくるまわる
風ぐるま
くるくるまわる季節の風
目の前にないにしても
鈍くちらちら光る
まわる羽の色
あのやすっぽさに感じいる
匂いたつ沈丁花の
垣根の道を
するする進み
....
視ること超えて
見える闇
聴くこと超えて
聞こえる沈黙
言うこと超えて
云われる言葉
もはや
見も聞きもしない
言葉が造る
虚構の世界を
観念のお化けに
呪われて
....
この場所は
なんてところだ
けったいなところだ
この場所は
なんてところだ
けったくそ悪いところだ
この場所は
なんてところだ
狭いところだ
この場所は
狭くて深いところだ ....
雲よ
僕は歌わない
ひびきあう童謡のしらべを
僕らは歌わない
青春と名付けられる
強迫的な力の律動を
雲よ
僕は見ない
抜けるような青空を
僕らは見ない
見るのはた ....