空の青さが遠くなる
秋の朝
それは同時に
山の芸術が近くなる
空の光が白くなる
秋の昼
それは同時に
山の葉が輝く
空の光が赤くなる
秋の夕暮れ
それは同時に
山が休むあ ....
きみのとなりを歩くとき
ぼくはガイコツになりたいのです
骨だらけの傘をさしかけて
あばらに雨が透ける
きみのふくよかなみみたぶに
ちらっと目をやれば
ぼくの目はがらんどうだから
ああなに ....
月を落せると信じていたから、いつか触れようと誓い合う。
ゆっくりと近づいてくる景色を、
遠ざけようと、するために眠る。
いつからか儀式となった風景を、懐かしいと君が言った。
首をかしげ ....
お外へふらりと出ましたら
銀色波がざわざわと
私を飲み込みダンスを踊る
くしゃくしゃ身体は舞い上がり
ひっそり佇む月は言った
今宵十三お祝いに
あなたと一緒にダンスを一 ....
ある日
少年の中に
戦争が充満する
少年の中に
潮騒が充満する
少年の中に
愛情が充満する
少年の中に
故郷が充満する
ある日
少年の中に
憎悪が充満 ....
幾多の性交を
支えたる声を
つぶれたる音を
抱えたる歌を
ビアだる四杯を
もちて
私達の成功は
無意味になった
しかしそれは
意味が無いのではなく(ムィーミー)
いまだ意味を持たな ....
日々の風景が
柔らかい布で
硝子の小鉢を撫でている
堆積する繁華街の雑音と
踏み付けられたスニーカーの踵と
人知れず花びらを千切る風
この窓の外側では
幼い子供の笑い声と家族の灯 ....
見覚えのない住所から
冬の匂いの封筒は届き
記憶の引き出しから
銀のペイパーナイフと
あらん限りの想いの欠片とを
わたしは交互に取り出す
かさり、と開くと
月夜の薄明かりのなかで ....
霧の朝僕は
白い虚しさにまかれる
あるいは
あるかなきかの徒労に
世界は音もなく沈んで
僕一人を孤立させる部屋
あの夏の日
彼女が湖水に指をすべらし
その音のない{ルビ水面=みなも}を ....
指を絡めて、乾いた唇をそっと食む
カルピスの味、がする
喉にねっとりとべたつく原液を
そのまま飲み下す
甘いものでいっぱいになれば
傷から染み込んでたものは
溢れて流されていく?
....
精霊が来て、持ち去った
取りこぼすのは私
廊下に生温い王冠が落ちている
寒い、
寒いこの手をご覧
肺が裂けてしたたるよクリクーシカ
嘘つき女
私をご覧
私の肌は今、色を変える
....
わたしはあなたを生んだ
でもわたしは あなたを抱けない
わたしの身体は灼熱の炎
あなたが燃え尽きてしまうから
わたしの吐息は害毒の霧
あなたを侵してしまうから
ああ ....
熱に浮いた体が悲鳴をあげた
体がぽっきりと折れた拍子に
ごっくりと塊を飲み込んだ私
体中をソレは駆け巡り
ちょっとずつ侵食していく
手足の先が動かなくなった
髪の毛ははらりはらりと抜け ....
紡ぎだされる現実は苦しくも
様々な色を添える
深紅が飛び散れば
花となり やがて枯れゆく茶となりて
貴方を包み
布はみるみるうちに思い込みにまみれ
煌びやかな虚栄がそこ此処 ....
楔形文字で時を刻んでみた
シュメール人ではなかったことに気がついた
なので
時を楔形にすることに決めたが
そもそも見えるものでないことに気がついた
亀の甲羅に刻んでもみたが
鼈甲の髪飾りに ....
雨は降る
無情の
恵の
日は注ぐ
旱魃の
神の
一本の幹に触れる
真っ直ぐな
曲がりくねった
別れた妻を想う
不肖の息子を想う
置いてきた過去 ....
ラジオをつけると
聞いたことのある曲が流れていて
愛とか希望とか自由とか
そういったことを叫んでいた
壁に掛けてある絵は
何の絵であるのか解らなかった
右下の隅に小さな文字で
ユリネ ....
アドリアの真珠
烏羽玉
饒舌な罪
無限階段
閉鎖
欺かれた空間
尾を咥えた蛇
厳かな闇
畏怖された光
美しい入り江
消し去られた物語
テ ....
(静かなるもののかげりに
文字は ばらばらになって
ぎこちない句読点をうつのをやめた)
とぎれとぎれ斜陽誓詞をよみあかす
きょうゆう の後の
接続を どこにも連ねることが
できない
....
見渡せば、{ルビ紅=あか}のパノラマ
岩肌の背を辿り
風紋の営みに耳を澄ませば
褐色の陰影、陽炎の揺らぎ
彷徨えば、蒼のカルデラ
火照った靴を脱ぎ
静寂の層流に{ルビ踝=くるぶし}を垂 ....
Ⅰ
小さな日だまり きらきらと
光のカーテン揺れている
小さな日だまり ゆらゆらと
そこだけ光の輪ができた
誰にも内緒教えない
あれは妖精の輪なんだよ
妖精たちが踊っている ....
波打った光は選ばれて
{ルビ海空=うみそら}は青 木々は緑
キャビネットは銀で コンクリートは灰
虹色は水滴の奥へ 息を潜めている
姿見に映した背中
もちろん翼など生えていなくて
どう ....
シャムロックに
お願いが
どうか
あの人との
仲介役に
君には
眼が 口が
手が 足が
だから
お願いだ
あぁ
でも君は
三葉 なのか
金木犀の
金木犀の
花の陰が
心にはらり、落ちてゆく
この道は
この道は
いつに辿ってきたのでしょう
金木犀の
金木犀の
花の香は
昔にかよう
消えかけた
面影一つ ....
「お前は泣き方を忘れたね。」
幼い私が言う。
「いらっしゃいませ」
笑う私。
「こちらへお願いします」
客に背を向ける。
途端、
ガラスの中に目が映る。
「悲しい理由は見つ ....
月ではまだ
冬の初めで季節が
止まっているようだった
浅い眠りの合間に
この頃よく、夢を見る
凍えたままの月面で
あなたをこの腕で抱き ....
朝焼けがまだ
始まらないので
本当は昨日
あなたに届くはずだった
手紙のことを思った
夜明け色の
手紙を贈って欲しい
君と一緒に
指差して、 ....
誰とも分からぬ手を取って
淡く土を開いてゆく
群の匂いは 偽って春
繋いだ指先から溶け混じるうち
赤く、白く、甘く染まる
羊水の中、震える声で目覚めを歌う
ねこおやじは
ねこのおやじ
言い換えると
ねこの父
いつも涼しいところで
目をつぶってる
ねこおやじは
エライ
妙に情を
かけたりしない
常に
クール
....
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