うそつきにひとつ
水に沈む瞬間の
鳥のくちばしにひとつ
うそつきにひとつ
群れを照らす光
肩から上の影
音のない群れ
滴をもとめて
水が描くはざま
入 ....
ちいさな掌を
ひとつ結んでは覚えてゆく指あそび
ほんとうなんて要らない
と言い聞かせながら
それは未だ新しい
老いさらばえた両腕は
調和したスープと
子守歌で満たされる
動かな ....
人魚姫に会いに行きました
淀んだ空の下
冷たい雪を両手に伴い
そういえば
冷たい風も吹いていました
最寄りの駅から1キ ....
あま栗の中でいも虫が死んでいたよ
すでに黒く硬くなっていたよ
あま栗は甘い
いも虫は死んでいる
いも虫は栗をたべながら
たべながら死んだ
あま栗は甘い
いも虫は死んでいる ....
ふりしきる雨
雨してしまう
雨の
冷たい
季節
星夜
の
さく{ルビ夜=や}
の
雨
の
下
影もなく
灯る
灯台の夜が
流体にひそみ
その吐息にふれれば
はち切れて ....
右目が溶ける
まだ見える
左目が溶ける
もう見えない
右耳が溶ける
まだ聞こえる
左耳が溶ける
もう聞こえない
鼻が溶ける
口が溶ける
もう嗅げない
....
木々の散乱と林の包囲、
森々の重なりが無法の伸縮をみせ
人の呼吸リズムを緊張域に鎮める
猛獣は居ない 不審者も、
訪問者は
こちらの方であり、上昇でない下降の道を ....
あなたの望むかたちに
そぐわない私の心は
たとえばタイルのように
こまかく割ってしまおう
そう、ガウディっていうカタルーニャの人も
言っていたように
そのままではただの四角かもしれない ....
{引用=
ふるふると
ふるるふるると
ふるものにさらされ
森は輝いているのでありました
君は小さな家の屋根に立ち
眼を細め わずかに首を伸ばし
しばらくは光の匂い ....
自己が
集まるように
集まるように
一人
すり抜けるように
すり抜けるように
街
踊るように
踊るように
歌
歌うように
歌うように
嘘
乱すように
乱 ....
彼女に名前を与えられる
機械仕掛けの椅子に坐って
一刻ごとに鐘の音が
歯車に乗せられた私の幸福を砕く
踊り出たステージに
広場の石畳を鳴らす靴音のリズム
眼 ....
きれいな物はなんでも好きよ
雪が積もった時の睫毛や
私の口づけを求めるときの
少し荒めの白い吐息は
まるで水蒸気の妖精の舞
歩いた後にほわっと匂う薫りや
私を抉るときの指の ....
1
ホームの後ろに錆びた茶色の線路があります。
線路の枕木は腐りかけ、
雑草が点々と生えています。
線路は使われなくなってどれくらいがたつのでしょう。
わたしは線路に耳を当て ....
命からがら逃げて参りました
どこにもゆく当てなどはございませんが
走れるだけ走って
時に歩いて、
また走って
ここまで辿り尽きました
しかしここはゴールなのでしょうか
....
何かが去ったあとの高鳴り
大きなひとつの花になり
たくさんの小さな羽になり
微笑みながら消えてゆく
ひたされたとき
見えるかたち
雨はすぎて
胸とくちびる
....
凛とした空気の中
唯一の色が 始まり行く姿に
一度だけ背筋を伸ばして 僕は
ワンフレーズのみメロディを口ずさむ
宵の終わりに 見たワルツ
三拍子の一拍目
誰も知らない 似て非な ....
私は嫌なことがあると、まほー屋によく行った。
まほー屋とは、不思議な名前のお菓子がある駄菓子屋さんだった。
嫌なことがあると、そのお菓子を食べに行った。
友達と喧嘩したとき。
大切な物がな ....
{引用=357番の札をお持ちのお客様ー}
はい、睡眠口座の開設ですね
定期預かりにしますか
普通預かりにしますか
はい、普通預かりですね
いつでも定期に変えられますから
定期の ....
皮膚(かわ)を剥がれた兵隊は
本当は安心していたのかもしれない
あの凍土を溶かすかのような悲鳴は
快感の叫びであっただろう
降り積もる雪が
じわじわと真っ赤に染まる中
....
賑わった砂浜は
今では自分の足音しかなく
しかもそれは
波風とともに消されてゆく
目の前に見える海は
今の海ではなく
遠い昔に見た記憶の海
狭かった砂浜は
今では自分の足跡しか ....
月明かりに揺れる影を追いかけて
僕は真夜中を走り抜ける
君の姿は見えないけれど
きっといつかつかまえてみせるよ
みんなが寝静まった真夜中
僕たちは追いかけっこをする
君はうまい具合に影 ....
1 序章
慎ましい木霊の眼から、
細い糸を伝って、子供たちが、
賑やかに、駆け降りてくる。
溺れている海の家の団欒は、
厳格な父親のために、正確な夕暮れを、見せている。
見開 ....
市場通りに一尾の魚が落ちてゐる
眼は赤く悲しげに潤み
視線を曇天へと彷徨はせる
そして
路面についたもう一方の眼は
闇の地の深みを透視してゐる
魚は期せずして
天国と地獄を
同 ....
ちょいちょいと摘んで引っ張ったり
蝶結びにしてお洒落にしてみたり
もやい結びをして解けなくしてみたり
そんな事を考えているんだ
どんより
平穏な昼さがりに
風が渇いた
靡いた薫りは
わたしにも
洗濯物のように
懐かしい情緒でした
唐突が
悠々と大空を
雲海をかきわけ
未知数の心揺交々
いに ....
ぼく
おそらにのぼって いきたいな
じめんにおちて おはなになりたい
かぜにふわふわ はこばれて
しらないどこかで おうまにのりたい
だけどだけど
だいすきな
....
―刺青
そこには船があって
ずっとずっと遠くで
何かを引きずりながら
航海を 続けている
そこには涙があって
ずっとずっと近くで ....
この植物公園に薔薇の花が咲いております
あの日貴方と歩き回った道は今でも変わらず
芳しい香りを満たしております
貴方に抱かれることだけを想い
この日を待ち望んでおりました
後悔はしており ....
あおぞらが
おしえてくれた
あおじろい
あんたのうた
無声音でうたう
あんたのうた
ナイフはひびわれて
ナイフは鈍くなって
とびっきりで
ひとりきりの
うた
ここは
あかるい真 ....
とある静かな昼下がり
ぶらりと川原を散歩する
ふと気がついてわたしは聞くの
ねぇ 風よ
頬を撫でる やさしい風よ
あなたはなにを見てきたの?
できればわたしに教えて ....
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