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らんぷ一つのテーブルに 
湯飲みはひとり 
ねじれた影をのばして立っている  

窓の外から聞こえる 
鐘の音や鈴虫の唄
歪んだ唇を開いた{ルビ縁=ふち}からすいこみ 
器の形のままに入 ....
異国へ旅立つ 
彼の背中を 
小さい額の中から 
いつまでも 
亡き母はみつめていた 

手前に置かれた花瓶の百合は 
あふれんばかりに咲き乱れ 
いくつかの細長い{ルビ蕾=つぼみ}は ....
不器用な自分という役を 
脱ぎ棄てたくなった夜 
無人のバス停のベンチに 
重い腰を下ろし 
虚ろな瞳を見上げると 

( お気軽に ) 

壊れた電光看板の 
止まったままの赤文字 ....
居酒屋で 
ビール片手に酔っ払い 
まっ赤な顔して 
柿ピーの一つひとつを 
座敷畳の隅に並べ 
目尻の下がった
頼りない 
顔をつくる 

「 なんだか俺みたいだなぁ・・・ 」 
 ....
木の幹にとまり 
無心に鳴いて一週間 
地に落ちて 
引っくり返った蝉の亡骸 

無数の蟻に 
体を喰われながら 
丸い瞳に陽の光をうつし 
両手を合わせていた 
{ルビ蜩=ひぐらし}の鳴く 
夏の夕空に 
紅く滲んだ雲のシルクハットが 
傾いて浮かんでいた 

{ルビ鍔=つば}の下に 
もうこの世にはいない 
あの人の顔が 
見える気がした 
 ....
ほんとうの幸いはきっと 
奈落の底の暗闇に独り立つ 
頬のこけたピエロが 
無人でゆれる空中ブランコの上に 
茫洋とした瞳で仰いだ 
プラネタリウムに瞬く 
あの{ルビ金星=ヴィーナス}み ....
二十一世紀の
ある青年は日々 
( 姿の無い誰か )が 
自分を呼んでいる気がした 

 *

二千年前の遠い異国で 
ある村の漁師は湖の畔に立っていると 
背後を誰かが通りすぎ 
 ....
寄り添う民は顔を並べ 
一つの空を仰いでた 

真綿の雲に腰かける  
マリアに抱かれた幼子を 

逆さのままに
舞い降りる天使等は 
丸い顔で母子を囲み 
小さい両手を重ねてた 
 ....
ある日の{ルビ些細=ささい}な出来事で 
仲良しだった 
AさんはBさんの陰口を 
BさんはAさんの陰口を 
別々にぼくの耳は聞いていた 

夕暮れの 
空気のはりつめた部屋に 
Aさ ....
窓辺には 
ガラスケースにしまわれた 
誰かの心臓が置かれている 

真夜中の無人の部屋に現れる 
今は亡きピアニストの面影 

奏でられる旋律に 
永い眠りから覚めた心臓は 
脈を ....
終電前の 
人もまばらなラーメン屋  

少し狭いテーブルの向こうに 
きゅっ と閉じた唇が 
うれしそうな音をたて 
幾すじもの麺をすいこむにつれ 
僕のこころもすいこまれそう 

 ....
帰り道を歩いていたら 

  ぽとん 

となにかが落ちたので 
ふりかえった地面には 
電池が一つ落ちていた 

( 塀越しの小窓から 
( 夕暮れの風に運ばれる 
( 焼魚の匂 ....
休日の静かな午後 
図書館で借りた
図録の頁を{ルビ捲=めく}っていた 

今は亡き画家が 
キャンバスに描いた野原に 
ぽつんと立って 
空っぽの{ルビ笊=ざる}を両手で持ち 
木苺 ....
玄関のドアを開くと 
家族の靴にまぎれ
老人の下駄がふたつ 
並んでいた 

あたりを照らす
天上の 
{ルビ仄=ほの}かな灯り

下駄箱の上に
立て掛けられた 
一枚の絵 
 ....
わたしはいつも、つつまれている。 
目の前に広がる空を
覆い尽くすほどの 
風に揺られる{ルビ椛=もみじ}のような 
数え切れない、{ルビ掌=てのひら}に。 

その手の一つは、親であり  ....
ファーストフードのレジに並ぶと 
厨房に立つ店員は
{ルビ神業=かみわざ}の手つきで 
ハンバーガーを さっ と包み 
すい〜っと横にすべらせる 

「あれじゃあまるで、モノじゃあないか・ ....
毎日ともに働く人が 
あれやって 
これやって 
と 
目の前に仕事をばらまくので 

わらったふりで 
腰を{ルビ屈=かが}めて 
せっせ せっせ と 
ひろってく 

そのう ....
喉が渇いたので 
駅のホームのキオスクで買った 
「苺ミルク」の蓋にストローを差し 
口に{ルビ銜=くわ}えて吸っていると 

隣に座る 
野球帽にジャージ姿のおじさんが 
じぃ〜っとこ ....
コンビニのレジの後ろに 
「 迷子です 」 
と貼り紙のついた 
こどもの靴が置かれてた 

つまさきをそろえた 
寂しげな迷子の靴 
なぜかぼくの足にぴったりに思え 
後ろ髪を引かれ ....
緑の葉を一枚 
唇に{ルビ銜=くわ}え 
言葉の無い唄を奏でる 

黒い影の姿で空を仰ぐ 
わたしのまわりが 
ひだまりとなるように 





  * この詩は「詩遊人たち」 ....
嵐のあと 
歩道に{ルビ棄=す}てられた 
ぼろぼろなビニール傘 

雲間から射す日射しに 
一本だけ折れなかった 
細い背骨が光る 

あのような 
ひとすじの {ルビ芯=しん}  ....
迷える羊の私を 
いつもの空から見守る羊飼いよ 

誰かに愛を求めては
粉々に壊してしまう私を 

自らを嘲笑うかのように 
紅く波打つ海に溺れる私を 

憐れんでください 

 ....
ひとりの人間の哀しみに
わたしは立ち入ることができない 

十日前に夫を亡くした同僚の 
目の前を覆う暗闇に 
指一本たりとも 
わたしはふれることができない 

( 背後から追い立て ....
目覚めると 
駅のホームの端に立つ街灯の下で 
粉雪はさらさら吹雪いておりました 

次の駅の街灯の下で 
雪は舞い踊っているようでした 

その次の駅の街灯の下で 
雪はまばらに降っ ....
ブリキのロボットはひとり
旅先の浜辺に{ルビ佇=たたず}んでいた 

羽織った黒いマントを 
浜辺の風になびかせて   


( 振り返れば 
( 浜辺には長い足跡 


拾った ....
いつまでも 
ひとりでいるのはさみしくて 
旅先で 
出逢ったきみに会うために 
遠い雪国へ
ぼくはゆく 

金はなく 
新幹線にも乗れず 
長いトンネルを抜けた
夜行列車で目覚め ....
仕事納めの年末に 
1月から他部署に移動するAさんと 
老人ホームの風呂場を{ルビ掃除=そうじ}した 

「 わたし家では掃除なんか
  ろくにしないんですよ〜  」 

とにっこりほほ ....
仕事帰りの夜道 
北風{ルビ凍=し}みる首筋をマフラーで{ルビ庇=かば}いながら 
それらが遠くに光っているのを見ると 
何故か吸い寄せられ 
いつのまに 
ペットボトルの並ぶ
窓の前に立 ....
一面に広がる{ルビ金色=こんじき}の 
麦畑の上に浮かぶ 
一本の道 

飛び込み台のように 
道の途切れた向こうに浮かぶ 
{ルビ一艘=いっそう}の船 

途切れた道先に 
組んだ ....
未有花さんの服部 剛さんおすすめリスト(102)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
湯飲の影_- 服部 剛自由詩507-10-3
Ave_Maria_- 服部 剛自由詩4*07-9-30
夜空のバス_- 服部 剛自由詩207-9-14
福笑い- 服部 剛自由詩707-9-2
いのり_- 服部 剛自由詩607-8-18
雲の帽子_- 服部 剛自由詩507-8-18
Happy_Star_- 服部 剛自由詩307-7-30
風ノ人- 服部 剛自由詩7*07-7-9
雲の上の母子像_- 服部 剛自由詩607-6-19
夕暮れ煎餅_- 服部 剛自由詩7*07-5-29
窓辺の心臓_- 服部 剛自由詩12*07-5-24
ゆげのむこう- 服部 剛自由詩19*07-5-21
秋刀魚_- 服部 剛自由詩14*07-5-18
麦藁の少女_- 服部 剛自由詩14*07-5-6
貝の家族_- 服部 剛自由詩13*07-4-28
椛の木陰_- 服部 剛自由詩25*07-4-24
手遅れな男- 服部 剛未詩・独白9*07-4-12
畑の道にうつむく人_- 服部 剛自由詩18*07-4-6
車内の隣人- 服部 剛自由詩33*07-3-25
「_迷子の靴_」_- 服部 剛自由詩13*07-3-18
口笛_- 服部 剛自由詩13*07-3-15
「_壊れた傘_」_- 服部 剛自由詩13*07-3-6
羊飼いへの祈り_- 服部 剛未詩・独白507-2-25
冬の車窓_〜二〜_- 服部 剛自由詩12*07-2-4
冬の車窓__〜一〜- 服部 剛未詩・独白1007-2-4
碧いボール_- 服部 剛自由詩9*07-1-18
雪原の足跡_- 服部 剛自由詩15*07-1-1
大掃除_- 服部 剛自由詩12*06-12-30
冬の友達_- 服部 剛自由詩8*06-12-21
麦畑の舟_- 服部 剛自由詩16*06-12-20

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