冬の車窓 〜二〜 
服部 剛

ひとりの人間の哀しみに
わたしは立ち入ることができない 

十日前に夫を亡くした同僚の 
目の前を覆う暗闇に 
指一本たりとも 
わたしはふれることができない 

( 背後から追い立てる
( 日頃の忙しさに 
( すぐつかれる私は  
( 畳の上 
( 青い顔で伸びている 

旅先の夜の車窓を 
只ぼんやりと眺め 
耳に入れたイヤホンから
静かな弾き語りを聞いていた  

ふいに 
夜の車窓のスクリーンに浮かび上がる 

一週間前の通夜
涙を見せたことの無い同僚が
喪服に身を包み 
遺影の前で泣き崩れる姿 





自由詩 冬の車窓 〜二〜  Copyright 服部 剛 2007-02-04 09:11:31
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