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生まれ出る感情は
どこから湧いてくるのか
わからないけれど
森の中の泉のように
こんこんと
形を留まらせずに湧き出して
全身に流れてゆく
ある流れは海のような夢へと
広がってゆく
あ ....
そのヘッドフォンは
わがままな存在と言われながらも
誰からの耳も貸さなかった
自分に流れてくる音楽に酔いしれ
他人には一切聴かせることはさせずに
自分だけの世界に閉じこもっていた
誰よりも ....
夜の畑の前にふと立つ
まだ種しか植えられていない
土だけの畑
奥の方まで目を凝らしてみても
どこまでが畑で
どこからが空なのか
何の区別もない
ただ真っ暗な風景しかない
けれども畑は命 ....
あの日はきっと春だったと思う
部屋に置かれた
アジアンタムの葉がそよいでいた
近くのスピーカーからは
小鳥のさえずる声をバックにした
ピアノ協奏曲が流れていた
窓から差し込む光が
やさし ....
遠い記憶の片隅に
桜の花が咲き誇り
淡く染めゆくその色に
時の流れを知りつつも
時の流れの哀れさも
歳を重ねて見えてくる
はかなきものは美しく
美しきものは泡となり
消えゆくものは夢と ....
石鹸は邪悪な念を持ち始めた
毎日のように汚いものに接しているうちに
その心が侵されてしまったのだ
穢れがなければ自分の存在はない
穢れとともに生きてゆくことに
生きがいをもつようになった
....
冬の夜見上げる空の夢の種
一つ一つが眩く光る
春の朝道の片隅夢の芽に
新たな時の始まり想う
初夏の日に空に伸びゆく夢の枝
遠い山まで連なる姿
夏の海入道雲の夢の葉が
繁る姿に ....
その木はぬくもりの森の中にあった
根を深く下ろし
広く伸ばして
太陽の光で守られていた
その木から放たれる力は
周りの生き物の命に
安らぎへのメロディーになった
その歌を耳にするものは
....
咲き初めし頃より花を想ひ
春のゆくへを知りつつ
時を愛づる心はまさに無常の心なり
花は目にて見るにあらず
心にて見るものなり
花のみに限らず
人とてまた同じ
花の咲く時を知り
とも ....
生まれた時から
ぼくには父親がいなかった
母からは
父は遠いところで仕事をしている
としか言われていなかったが
ぼくは父の写真を一度も見たことがない
子どもの頃
母に連れられて
どこか ....
春の朝ようやく見えぬ霜柱
緩むは時と心の中も
春の陽の照らす大地の暖かさ
{ルビ温=ぬく}むは土と心の中も
春の道見せ合う初の制服に
歩むは足と心の中も
春の風少し強くは吹くけ ....
ジャージは恋をしていた
一目見たそのときから
そのサッカーボールにときめいた
本当は光沢のある白と黒の
単純な色をした丸い球体だけれど
大勢の人から蹴られて
その傷口からは土が染み込み
....
どうして人は空を飛べないの
小さな少女のふとした疑問
どうして人は空を飛べないの
人は大地を守らなければならないのです
大空を自由に飛びまれたら
人は守らなければならない大地を
破壊し ....
終点の駅に着いたので
降りようとしたら
網棚にかばんが置いてある
すでに乗客は誰もいない
きっと忘れ物なのだろう
駅員さんに届けてあげよう
かばんはとても軽かった
何も入っていないのかも ....
まず初めに、このサイトの管理人さん、いつも互いに励ましあって
詩作をしている方々に感謝いたします。
今日でこのサイトに登録してから1年になる。
365日前は詩というものは何一つとして書くこと ....
何も描かれていないその絵本は
風の中にあった
ミルク色をしたその紙の上に
風が運んだ川のせせらぎの音を
優しくのせてゆく
絵本の中では
水は静かに海へと流れてゆく
絵本の右上から小鳥のさ ....
麗らかな春の匂いはどこにある
梢の先の小さなつぼみ
清らかな春の光はどこにある
川に流れる小さな雫
ゆるやかな春の動きはどこにある
日なたで伸びる子猫のあくび
新しい春の心はど ....
角のない消しゴムは
捨てられる寸前だった
角があろうとなかろうと
同じ材質なのに
四つの角があるとないだけで
大きな差をつくっていた
丸みの部分にはすれたえんぴつが
くっついていて
手 ....
理由なんてどこにもない
夜中に目を覚ます
何をするわけでもなく
何がしたいわけでもない
とりあえず暗がりの中で
タバコに火をつける
カチッというライターをつける音が
何度もなく繰り返して ....
ぼくのかばんは空の色と同じだ
青いような白いような
どっちにしても気持ちいい
空より入らないけど
たくさん入れることができる
テキストとノートや筆箱を
ぎゅうぎゅうしながら押し込めて
背 ....
その竹薮の中は時が止まっていた
動いているものは風と
竹の軋む音だけ
空を見上げれば
青空の中を積雲が静かに流れる
心の中では
懐かしいオルゴールのメロディーが
小さく流れている
理に ....
歯車は旅に出た
今まで一緒に回っていた他の歯車と
どこかかみ合わなかった
自分の歯数を嘆いたり
他の歯車の歯数を責めたりもした
それでもやはりその場にいづらくなって
人知れず早朝に旅立った ....
隣の家に借金取りがやってきた
すごい剣幕で怒鳴っていた
家と家がくっついているくらい近いので
まるで自分の家に聞こえるかのようだった
小さい音ながら
何度も何度も隣の家のインターホンが
鳴 ....
今日はお姉ちゃんの卒業式だ
昔から卒業式はだいたい
今度入学する中学校の制服を
着ることになっている
お姉ちゃんもその一人だ
ぼくはいつものように
朝ごはんを食べている
いつもはみんな一 ....
ぼくらの夢が一つ消えていった
ずっと空き地だった場所に
高層マンションが建つらしい
みんなでゲームをしたり
自転車で走り回ったり
喧嘩になったりもしたけれど
いつも気軽にみんなが集まって
....
「たいへんよくできました」
というスタンプがどうしても
自分のノートに押されたかった
先生にノートを渡しても
いつも「がんばろう」とか
「あとひといき」ばかりだった
同じクマのスタンプなの ....
道は眠っていた
空になった夢を見ていた
春の暖かさに包まれて
とても気持ちがよかった
こうして一日中のんびりと過ごすのは
久しぶりだった
時が止まって
このままでずっといられたらと思った ....
晴れた日の夕暮れ
その詩人は必ず川原に現れた
夕陽を眺めては
気持ちを溶かし込みながら
一つの詩を生んでいった
ある時は静かに悲しく
ある時は力強い魂を
言葉を使いながら描いていった
....
少年は必死になって
学校から出された計算練習を
こなしていた
その数に何の意味があるのか
少年にとって関係のないことだった
この宿題を終わらせて
遊びに行くことの方が大切だった
仲間とと ....
ぼくの前にぼくが歩いている
ぼくの前のぼくはぼくに気がつかない
ひたすら前を向いて歩いている
声をかけようかと迷ったけれど
なぜか怖くなって
そのまま後ろを歩いた
ぼくの前のぼくは転がって ....
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