すべてのおすすめ
日本の冬はなんともはやうそ寒いし
不景気の師走の街もうっとうしくて
仕事らしい仕事もほとんどないし
飯島さんのせいでバルザックによみふけって
『従妹ベット』おもしろくておもしろくて
ユロ男爵 ....
ねむれ。
胎児のように、ねむるがよい。
せいけつなみなれた風景の、
すこしばかりの変化など気にせずに。
あわれなものだ。
マルチメディヤとかいうものに
おかされてゆく母胎の中では、 ....
ワイパーを身体につけたんだよ
ネジでさ、おへその穴に固定してね
勤続十五周年だもの
いろいろな人が去っていったもの
自分へのせめてものご褒美だもの
憧れていたんだ、ワイパーのある ....
起きたら
三島由紀夫だった
下唇を噛んだら血が出て
三島由紀夫の血はこんな味なのか とか
白くて小さめの歯は けっこう硬いのだ とか
会ったことないのに懐かしむ
せっかくだから ....
コーヒーをいれました
二杯
一杯はわたしのために
そしてもう一杯はあなたのために
並木のイチョウは黄色く色づき
風が吹くと何かの音をさせる季節
けれども窓は閉じられていて
見るこ ....
朝 通勤途中の人に
夜 犬の散歩をする人に
僕は 笑う
会社では
「あなたは愛されて育ったでしょ。」
と よくいわれる
僕は 生まれてすぐ人に預けられた
母に 社割で 花柄の ....
(あ)
あ
っという間もなく
それはもう
あ
ではなかった
語られることのないおとぎ話は
ただ
さらさら
さらさら
と音めいていて
僕の両手はいつも
掴まえることが ....
ほの暗い駅
列車の中で一点を見つめている
あなたの眼差しを見送る
”お気をつけて”
その一言だけが伝えたかったのだけれど
ベルが鳴り止んで動き出したのは
列車ではなく
ホ ....
にんぎょうをひろいました
どろをきれいにあらって
あたらしいふくをきせて
るぅ となづけました
おなかがすいたというので
くだものをかってきて
かわをむいて
るぅ となづけました
....
途方もなく繰り返される通勤という愚行
なんとか自由になろうと編み出した歩行
いまでは神保町から西新橋まで徒歩強行
満員すしづめと戦いながらの空しい思考
電車と速歩各一時間でストレス解消成功 ....
父はつまらぬ魚屋でございましたが、係累は多うございました。
たいそう古くから魚屋を営んでいたと申します。
けれども嫁はどこの馬の骨ともつかぬと祖母は母を貶めました。
わたしは母の係累をひとりも存 ....
東京駅の地下街で倒れた
「わかりますか?」と問われ
わかっているのは君のことだけだったので
「ラ・フランスは長野の特産」と、さっきわかったことを答えた。
ましかく な
雨
つち の
少し 上
ころっと
笑ったの
沈む
柔らかい
折り畳まれた
船
流れる
朝
ひ
自由になりたい
自由になりたい
っていうのが
口癖だったわけ
そしたら朝起きたら
翼がついてたわけ
そりゃもう嬉しくてね
飛びましたよ
ぐるぐる
ぐーるぐる
で ....
真っ白な画用紙の
その真ん中に
僕は
しま
と書いた
画用紙の海で遭難した船乗りが
泳ぎ疲れないように
ある日、画用紙の海で遭難した僕は
後悔することになる
....
季語は流通する
つんのめりながら流通する
枯れ野を越え、遠山を越え
関東平野を越えて流通する
人から人へと流通する
ある時は雪をかぶった
実南天のように可憐に
ある時は水辺に咲く
....
夏の空には白い雲がながれ
暗い緑色の湖にうつる木々
幼い想いを秘めた草いきれ
揺れて動く昆虫の青い狂気
母と若い二人の姉とぼくを
残して夏の日父親は死んだ
集まった縁者は皆知らん顔
....
この頃 冬といっても
僕の国や
何も知らない人達の国では
ギリシャ世界のアネクメーネのように
どんなに寒くても
明日への蓄えがなくても
火の点し方さえ知らなくても
飢 ....
震える指先が凍りついて
いつか口に含んでも動かなくなったとき
幾度も自分を納得させる言葉を吐いた
私は人より多少不自由なだけ
壊れた右耳は機械の力で補える
動かない指先は動く片手で補える ....
古本屋の女主人は
若くて
美しくて
両の目の間が人より少し離れている
本をめくりながら
チラリとその方を見たりすると
何故自分が生きているのか
時々わからなくなる
ある人はいう
空がくらくなるのは
日が眠るときに
よく眠れるように
空があかりをおとすからだ
と
ある人はいう
空がくらくなるのは
日がさるときに
次に会う瞬間を
空が恋こがれ ....
「浅間山荘に二人で泊まりたい」
と 君が言っていたので
私は ずっと 重信房子の髪型のままでした。
が、飽きてきました
今は ジャニス・ジョプリンぐらいです
銃のこと
最近知りまし ....
エレベーターに乗るとお線香の匂いがしておじいちゃんが帰って来たんだと思いました
10階にあるマンションのドアを開けるとおじさんやおばさんや知らない人がいっぱいいて
みんなでお寿司を食べ ....
二年振りに
帰ったときには
通夜はもう始まっとった
大往生や
ええ顔しとるやろ
せやな
いう声が ぽつぽつと
わしは
なんでか
涙もでえへん
ここ何年も口きいたこと
あ ....
[バリケードのこっち側]
その前日
あたしは工場で残業した
まんまるいちんち段ボールの箱と格闘して
それでもまだ働けとベルが鳴った
自転車をこいで家に帰ると
戦いは明日だと言う ....
ゆらゆら揺らめく
かげろうの下にある水に入りたくて
僕は走り出そうとする
遠くに行っちゃだめよ
手を引き寄せられた
夏の日のいつか
日傘を差した母を困らせるなんて
したく ....
ピジョンロックというから
鳩岩 鳩の岩なのに
一羽の鳩もいないのはどうしたことかと聞いたら
人が撃ってしまったのだという
だから 鳩岩に鳩はいない
ベイルートに平和が来ないのは
まさか ....
「町田康みたいになりたい」
と言って出ていった人は
「みたいに」
と言う時点で
きっと 駄目なのだけれど
そういう私は
映画館で赤い便箋を買って
別れたい男に
「愛しています」 ....
みんなおらっちのこと
さんらー
ってよんでるけど
おらっちはもっとちゃんとした
せいとく
っていうかっこいいなまえがあるのに
でもかんじはかけないからさ
さんらー ....
白い箱の中には 見たこともない形の 小さな部品がひしめき合ってた
ためらわずに たたいて壊した ハードディスクは
たたいても たたいても ビクともしないで
ただ 鉄の音が響いていた
スクリ ....
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