初冬の初雪の舞う中
風が木立ちの間を勢いよくすり抜ける
山の頂きから頂きに掛けて
送電線の唸る音が聞こえる
人造湖は波打っている
一瞬ふわっとしたかと思うと
空は洗われ 雑木林は明る ....
破壊と創造
あいうえお
かきくけこ
さしすせそ
たちつてと
なに・・・
。
....
ビー玉とは不思議なものである。人工的なもののはずなのに、オーロラのような、雪のような、星のような、魂のような、そんな雰囲気を漂わせている。
ビー玉は、ロマンチックで、霊的で、生きていくうえで ....
遠回りをした先の
二度と通ることもないような裏通りで
黄色い階段をみた
幾重にも黄色く重ね塗りされたような階段
色合いもさることながら
どこへ通じているのか、そもそもここを上る人がいるの ....
いくつかのブラックホールを超えて
僕の船は宇宙を漂っている
星はきらっと輝いたかと思えば
それは一瞬のきらめきであり
あとは黄銅色の鉱石が漂う空間だった
宇宙に風はないというが
少しだけ風 ....
滑り台の上で遊んでいた頃
高い場所にこそ冒険はあった
地面に落ちる前の雪を食べて
イチゴ味の飴を舐める瞬間
季節外れのかき氷を知った
僕のポケットはいつも膨らんで
友達を呼ぶとすぐに来 ....
塞がれた傷なら
新しいほど
ほの明るい
命と呼ぶには薄すぎる
生まれたばかりの緑の雲母は
はかなげに震える風の欠片
アスファルトに跳ね返る
光の刃が
明日には切り刻むだろう
....
ふたりが離れてゆくときは
理由はなにも言わなくていい
ただ一冊の青い本を
ふたりの間に置けばいい
ページをめくれば顔を出すだろう
散歩していた黒猫や
わずかな値段で売られたスズメ
....
なにかことばが書けるとしたら
私はここになにを書こうかたと
えば当たり前かもしれないけれ
ど詩人は嘘つきでその嘘は多分
真実と嘘の合の子でどこからど
こまでが本当でどこからどこま
でが嘘な ....
サキソフォンが夜の道を歩いていた
あたり一帯高級な黒の絵の具を塗りたくったようで
サキソフォンだけが金色に輝いていた
暗闇は光を理解しなかった
途方に暮れかけたころ
黒くて大きな人がどこから ....
「字源」
ある日テレビを見ていると
アスペルガーと思わしきとある女性タレントが映っていて
こんなことを言っていた
「人」という字について
こんなことを言っていた
「人」という ....
今年もサマソニの入り口を私はくぐった
ベテランバンドだとか古参のバンドばかりが出ていたサマソニ
新しい世代のバンドも元気な声を上げていた
私の世代の文化はもうすでにない
夜 スタジアムに向 ....
仕事をさぼって美術館
展示室をうろついていると
赤いワンピースの女がついて来る
立ち止り絵を眺める横で
ぼそぼそと蘊蓄を語るのだ
頼んでもいないのに不躾な
学芸員にしてはずいぶん
粗野で ....
私の欲望にふれてみた
とても冷たかった
まるで氷のように
冷たかった
そこには愛はなかった
ひとかけらもなかった
とても悲しかった
欲望は私のうしろに
ずっとついてきた
まるで影のよ ....
大時計の針の上で寝そべる
空の瑠璃色を映す
湖の波紋が 夜の膜のように拡がってゆく
その浅い水の褥のうえには
夏に日焼けした物憂げな表情が
よりいっそうに青く映り込んでいる
その細ながい胴 ....
勾留されて取り調べを受けた。一日めでいちいち真剣に返答していたら体もたないことに気づいた。取調室に向かう際かならずロッカーを通る。そこでだけしばらく時間が潰せる。ロッカーのなかにノートを広げて今日のこ ....
きれいに折りたたまれた生活をそれぞれが晒している
涼やかな風を目元にたくわえ、定めた先に澄んだまなざしを向けている
生あたたかさにはしっかり蓋をして、静かに四隅を整えて桐の引き出しに仕舞い込む
....
夢の中でぼくは鹿であった
そして空を飛んだ
優しい獣毛がどんどん羽に変わり
いつしかぼくは
まあるい羽毛に包まれ
風に流されていた
そして、突風
綿毛は全て飛 ....
すべての
あどけないものよ
すべての
おとろえたものよ
すべての
あざやかなものよ
すべての
かげりゆくものよ
すべての
にげまどうものよ
すべての
おいかけるものよ
すべての ....
透明な紳士が
君の側にいる
趣味のいいネクタイ
よくみがかれた革靴
透明だから見えないけれど
天使でもなく
守護霊でもない
呪ったりしてない
助けてもくれない
ただ見 ....
夕焼けを信じます
とても遠くて
あたたかいもの
まいにち見ていても
絶対にさわれないもの
すべての
つくられたものを
だいだい色に
染める絵の具です
女を
男を
....
紙で飛行機を、なんて
誰が考えたことだろう
一体どれだけ乗れるというのか
世界には70億もの
人間があふれているのに
私たちには牙や鱗がないかわり
言葉というものを持っていて
言葉にある ....
家に戻ると白象がいる
リビングの大部分を占める巨体
なぜかしくしく泣いている
いったいどうやって
窓も玄関も
そんな大きさはないのに
どんなに宥めても
泣き止むことがない
仕方なく
....
太陽みたいな君が、君を嫌いになったときから長い夜が始まった。
どうしようもない夜に一つだけ星が見えて、その光がより一層夜を際立たせていた。
光の許されない夜に、僕は小さな光に救われる。
その ....
見えないものを見ようとし
聞こえない音を聞こうとし
愚かでもあいそうと
恐れおののいて
さよならも言わないで
どこかへ行ってしまうって
そんな、そんな、
こんな、どんな、
あなたのなか ....
肩越しに
LEDがにじんでた
それはやがて
朝焼けに溶けてった
いつの間にか
さよならだった
(即興ゴルコンダより)
私は警察署に来ていた。
あれだけ面倒くさい手続きやら、身辺調査やらをクリアし、ようやく手に入れた銃と所持許可であったが、止める時はなんの造作もないものだ。
書類手続きに慣れていない新任の警察官は ....
息絶えること
束の間の
蝶ちょ捕りでは
ないのだから
手にしたとたん
枯れはじめる
お花摘みでは
ないのだから
世界をきれいに
切り取るだけの
標本づくりは
もうたく ....
何気なく手に取った
鉛筆を見て気がついた
芯が尖っている
おかしいな、削った覚えはないのだが
ペン立てにある鉛筆を見てみると
一本残らず先が尖っている
どうやら私が知らないうちに
削って ....
父は十代後半に大原に入植。昭和二十年前半だったと思われる。
三十三年に私が生まれ、開拓村で生まれたので隣人が拓也と名づけたと聞く。
妹は五年後、自宅で産婆のもと生まれたのを記憶している。
幼 ....
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