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夏の涼しい夕暮れに 
恋の病にうつむく友と 
噴水前の石段に腰掛けていた 

( 左手の薬指に指輪をした
( 女に惚れた友が 
( 気づかぬうちにかけている 
( 魔法の眼鏡は外せない  ....
照りつける夏の陽射しの下 
墓石の群を横切る私の地面に頼りなく揺れる影 
一瞬 頬に見えた{ルビ滴=しずく}は 涙なのか汗なのか 

( {ルビ嘗=かつ}て 一途だった少年の恋は
( 夏の夜 ....
足元は、崩れている。 
真っ直ぐ歩くことも{ルビ覚束=おぼつか}ず、
肩が揺らいでいる日々。 

( ぼくの脳内には
( 壊れたリモコンが内蔵されている 

胸を張れども三日坊主。 
 ....
目の前に置かれた石を 
思い切り、蹴る。 

弾道は前方に細く長い弧を描き 
一面の霞の向こう側にある 
無数の「明日」を貫いて 
激しい雷雨の日を貫いて 
柔らかな陽が注ぐ日へと 
 ....
一 

 僕にとって大事なものをしまっている大きい封筒がある。その封
筒の中に、去年朗読会で年上の詩人・U さんに会った時にもらった
一枚の白黒写真のコピーが入っている。その写真は黒田三郎の ....
一日の仕事を終えて 
日誌のコピーをシュレッダーにかける 

箱の中に吸い込まれてゆく紙 
粉々になってゆく一日 
見下ろす私の影 

産声を上げた日から今日迄の 
私の年譜をシュレッ ....
夜が明けて 
窓から朝日が射し込むと 
目の前に 
猫背の暗い男が両腕を{ルビ垂=た}らし
立っていた 

「 私ハ生キル事ニ疲レタ 
  アナタノ生霊 
  アナタガ誰カト浮カレル時 ....
立ち位置を、探している。
いつまでも見つからない、
足の踏み場を。 

もしくは、
消えてしまった君の幻を
抱きしめる、
世界の中心を。 

人波の川が流れゆく
この街の中で、 
 ....
小雨の降る夜道を歩いていた。
ガラス張りの美容院の中で
シートに座る客の髪を切る女の 
背中の肌が見える短いTシャツには

「 LOVE 」 

という文字が書かれていた。 
 ....
私とあなたの間には 
いつも一枚の窓があり 
互いは違う顔でありながら 
窓には不思議と似た人の顔が映る 

私とあなたの間には 
いつも一輪の花の幻があり  * 
互いの間にみつめると ....
私は無人の都市を歩いていた 
 
見上げた無数の窓の一つから 
青い小鳥が堕ちて来た 

{ルビ掌=てのひら}で受け止めた
{ルビ痙攣=けいれん}する小鳥の青い羽は 
灰色へと変色し 
 ....
夜道を一人歩いていた 
道の先に立つ街灯が 
{ルビ辺=あた}りをほの白く照らしていた 

街灯の細い柱に{ルビ凭=もた}れると
地面に伸びる
薄ら{ルビ哂=わら}いを浮かべた 
私の影 ....
今夜 私には 
逢いにゆく人がいない 

孤独な夜の散歩者は
アスファルトに響く雨唄と 
ビニール傘に滴る雨垂れの 
二重奏に身を浸しながら 
果て無い雨の夜道を{ルビ彷徨=さまよ}う  ....
誰かと笑い転げる日々を過ごす私
仮面を一枚{ルビ捲=めく}れば 
誰の手も触れ得ぬ「もう一人の私」がいる 

あたりまえの幸福は 
いつも手の届く場所にあり 

浜辺へ下りる石段にぽつん ....
 湯田は温泉街なので、道を歩いていると数人で腰を降ろし足浴で
きる場所が何ヶ所もあった。記念館に近付くにつれて、「中也ビー
ル」という暖簾の文字が風に揺られている店をいくつか見かけた。 
 中原 ....
祝日 新宿の午後は人波に{ルビ溢=あふ}れて 
逃れるように僕は古びた細い路地に入る 

道の両脇に{ルビ聳=そび}え立つ高層ビルの壁に挟まれた 
細い空を見上げると吹いて来る向かい風 
ア ....
少女は長い間 
窓の外に広がる海を見ていた 
{ルビ籠=かご}の中の鳥のように 

時折 
人知れぬ{ルビ囀=さえず}りを唄っても 
聞こえるのは 
静かに響く潮騒ばかり 

( 浜 ....
日曜日の朝 
シャワーを浴び 
鏡の前で髪を整え 
{ルビ襖=ふすま}を開け
薄暗い部屋を出ると 
何者かが{ルビ袖=そで}を引っ張った 

振り返ると 
ハンガーに掛けられた 
高 ....
君が帰った Cafeの 空席に 
さっきまでノートに描いていた 
空へと届く望遠鏡の幻がぼんやり浮かんでいる 

別々に家路に着く 
君の切なさも 
僕の切なさも 
この Cafe に置 ....
開店時刻の前
Cafeのマスターは
カウンターでワイングラスを拭きながら
時々壁に掛けられた一枚の水彩画を見ては
遠い昔の旅の風景を歩く 


 *


セーヌ川は静かに流れている ....
深夜の浜辺で
青白い顔をした青年は 
{ルビ焚=た}き火の前で{ルビ膝=ひざ}を抱えている 

肩を並べていた親しい友は 
すでに家路に着いた 

胸の内に引き裂かれた恋心 
誰の手に ....
半年振りで姉は嫁ぎ先の富山から 
5歳の{ルビ姪=めい}を連れて帰っていた 

家族{ルビ揃=そろ}って
僕の出版記念すき焼パーティーをするので 
今朝の出勤前母ちゃんに
「 今日は早めに ....
春の陽射しに 
紅い花びらが開いてゆく 
美しさはあまりに{ルビ脆=もろ}く 
我がものとして抱き寄せられずに
私は長い間眺めていた

今まで「手に入れたもの」はあったろうか 
遠い真夏 ....
前田ふむふむさんの服部 剛さんおすすめリスト(83)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
呼声- 服部 剛自由詩20*06-7-30
渇いた夏_- 服部 剛自由詩26*06-7-26
潮騒の夜_- 服部 剛自由詩11*06-7-23
架橋_- 服部 剛自由詩7*06-7-23
黒田三郎詩集読書記- 服部 剛散文(批評 ...8*06-7-16
月夜- 服部 剛自由詩13*06-7-14
明日へ- 服部 剛自由詩11*06-7-9
「空」を抱く人_- 服部 剛自由詩20*06-6-19
「汚れた足」- 服部 剛自由詩21*06-6-14
傘を差す人_- 服部 剛自由詩21*06-6-9
「窓」- 服部 剛自由詩9*06-6-3
街灯_- 服部 剛自由詩11*06-5-28
夜の散歩者_〜_反射鏡を探して_〜- 服部 剛自由詩24*06-5-26
「自画像」- 服部 剛自由詩12*06-5-22
中原中也記念館に行った日_〜後編〜- 服部 剛散文(批評 ...11*06-5-15
「夢」_〜_新宿にて_〜_- 服部 剛自由詩14*06-5-6
海を翔ぶ翼_〜_少女と羊_〜- 服部 剛自由詩8*06-5-3
壁に吊るされた学生服- 服部 剛自由詩10*06-4-25
黒猫の瞳- 服部 剛自由詩14*06-4-24
セーヌ川の畔で_- 服部 剛自由詩12*06-4-18
幻の太陽_- 服部 剛自由詩15*06-4-16
姉のまなざし_- 服部 剛自由詩18*06-4-7
夕暮れの並木道- 服部 剛自由詩14*06-3-13

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