「窓」
服部 剛

私は無人の都市を歩いていた 
 
見上げた無数の窓の一つから 
青い小鳥が堕ちて来た 

てのひらで受け止めた
痙攣けいれんする小鳥の青い羽は 
灰色へと変色し 
頭を垂らし 息絶えた 

つぶやきかけた鳴き声を
掌に残して 


  *


( 私の心の開いた窓から
( 飛翔する青い小鳥の亡霊は
( 暗天の空へ 

( 空から地上を見下ろす

( 杖を突いた老婆がひとり 
( 雲の上まで昇る果てない階段を
( ゆっくり 一段ずつ 上っていた 

( 無人の都市を彷徨さまよう青年は 
( 降り始めた無数に光る雨糸を眺め
( 雨宿りをしていた少女と出逢い 
( 人知れぬ部屋で 
( ずぶ濡れの服を脱いで 
( 互いの寂しい肌を暖め合っていた 


ふたりが窓を開けると 
雨上がりの夜に 
ある
叫びを閉じ込めた
濡れた黒い石がひと
宙に浮かんでいた 

石には
杖を突く老婆の姿が刻まれ
金色の線が滲んでいた


  *


私は夜の無人都市を歩いていた 

見上げた暗闇の窓の一つヘ
青い小鳥が入って行った 








自由詩 「窓」 Copyright 服部 剛 2006-06-03 18:18:13
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