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沈む森空覆う森踏みつづけ隠れる陰なくさまよえる象
足跡のかたちに残る氷から時かき乱す水の手を知る
母を呼ぶ子を呼ぶ誰も居ぬ道の果ての果て ....
無い音が無い音のまま駆け廻る影より疾く影より疾く
花はただ花を呼吸し花に在るわたしたちでなくわたしらでなく
空つまみ冬を廻して雪を舐め夜を分 ....
かろうじてつながる
陽のなかの骨
白い壁が
歩き出しては消える
花の匂い
花の礫を残す
空より長い
影の上をゆく
ときおり丸い
鳥の火の音
....
橋をくぐる橋の向こうに
ひとつおきに壊れた灯があり
ひとつおきに鳥の背を射る
青のなかの金
金のなかの青
朝に昼に 夢をめくり
めくりめくり 剥がれ落ちる
....
闇のなかを 群れがすぎる
音は光り 見えなくなる
低い午後に
指ひとつ残る
二色の霧
陽の渦の橋
冷えた片目
手のひらに隠す
白い花の背
浴びては ....
曲がり角ごとに鳥はいて
夜を夜をとまたたいている
青紫の窓がふたつ
甘い手管にひらかれてゆく
うすぐもり
なりひびき
皆なにかを
抱きしめるかたち
昇るもの ....
雪原の風たぐり舞う銀髪にあるはずもない笑みを見ていた
くりかえし光の行方追いつづけ雪の背骨を駆けてゆく子ら
道に棲む{ルビ静寂=しじま}に映る水の笑 ....
雨が来る
雨は去る
屋根は
何も変わらない
陰の色の石があり
誰も通らぬ道があり
雲がひとつもない日にも
常に陰のままでいる
花は風に放られて
雨をつかま ....
夜の雨を燃す火があり
風をつかみ
家を鳴らす
屋根のかたちが
曇に映る
明日の水を知る花の群れ
遠い音を見て動かない
鼓動と鼓動のつながりが
水平線を巡っている ....
「ようこそ」
「君の顔の前に浮かんでいるのは何?」
「ガラスだよ」
「いま左手でガラスの右のほうを
右手で左のほうを引っ掻いたね
でも何も音がしなかったし
ついた ....
急に上になど行けない
水は常に低い方へと流れる
上に行くことを望むものは
誰でも一度は澱まねばならない
それが嫌なら
瀧のように落ちよ
氷のようにと ....
雨の天使が
岩の物語を読んでいる
{ルビ静寂=しじま}と{ルビ静寂=しじま}を
鳥の声が{ルビ継=つな}ぐ
焼き捨てられた本の煙
地から天へ帰る雨
恵みの恵み
....
雨を見る蝶
草を分ける黒い道
滝の音にふりかえり
光が空を割るのを見る
西の半分がとても暗く
夜風は水のにおいになってゆく
壊れた傘が
春を乗せたまま川を流れ ....
空がうねり
濃さがまわり
夜は満ち足りる
放つもの
発するもの
それらに応え
季節は猛る
風が風に入り込み 抜け出る
けだものが雲の履歴を見つめる
残されることも ....
ゆるしはなく
叫びは消え
川に照らされ
独りになる
雨は去り
夜になり
小声は咲く
とどめの白
とどかぬ花
水と葉 ....
肩の上のものたちは再び去った。世も肩も結局は自分を苦しめただけで何ももたらさなかった。目覚めは長くなったが、終わりはさらに近づいた。
雪が空にもどるのを見て泣いた。 ....
出たり入ったりしていたものが、
入ったきり出ていかなくなった。
このまま自分は夜に倒れる。
とどろくもの、うねるものの内に行く。
犬のあとをついてゆく
時おり振り返っては笑う
犬のあとをついてゆく
コンクリートの空の地下道
下半身が猫のままの
犬のあとをついてゆく
土の道のできそこない
泥のよ ....
恐怖は何者にも触れず、視界の端々の森の内と外に属せるだけ属しようとする。
この無知、この保守、この空腹。同例などなく、差別もなく、真なるものもない。
ひとつの点が百になり ....
木は影になり
しずくを流し
銀はせつな
銀はとこしえ
光の粒が
川になり
見つめるまなこ
満たすはじまり
昼の星の
糸をたぐり
ふたりで赤子を
紡ぎま ....