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ねえ、ブランシュ、
あのとき
あなたが越えようとしていたものがなんだったか
今のわたしにはもう
それを知る手だてもないけれど
あなたはいつも わたしの
理解の範疇をこえて
日常のただしさ ....
春が
はるが
傘の水滴に溶けて
声も密やに
幼いまるみの春の子に
子守唄を聴かせる
まだ固く木肌の一部の様子で
繚乱、を隠した蕾は
雨にまどろみ
陽射しに背 ....
息を
わたしたちは潜めて
東の空の彼方から
春がやって来るのを
待ち侘びていた
夜明けに
うすい紫の風が
わたしたちの
頭の上を撫でながら
通り抜けてゆくとき ....
傘を
返してほしい
名残りの雪は
綿のコートには冷たすぎて
ひとりで帰れる自信がないから
あの桜もようの紅い傘は
ほんとうはすこし空々しいから
好きではないのだけれど
....
忘れたいって
あなたが言うから
そうだよねって
私は言うけど
あなたが
忘れきれないくらい
有名になれたらいい、と
私は
少しだけ思う
そうしたら
あなたは少し
後悔 ....
透きとおる真昼に
日常が、消えていく
八月に買った青いびいどろは
もう割れた
観覧車に乗りたいと言ったのは
あのひとのほうだった
てっぺんに着いても
世界はちっとも見えなくて ....
またその話か…。
正直、私はうんざりする。何度同じことを言わせるんだこの人は…。私は、兄と一緒にほぼ絶望的な説得を続けていた。
私たちの言いたいことはひどく単純だ。足を悪くしたその人に、こ ....
もしも許されないなら
この瞳を抉り出して捧げますから
貴方の薬指を飾る石にしてください
蝕まれてゆくのはいつも正常な意識ばかりで
何かを伝えようとするたびに奥歯が軋んで
上手く ....
ぴちゃぴちゃと
水の跳ねる音がして
君が
夜に頷いて
時間
我慢した方が
いいけど
月が
助手席で
背中を折って
ぴちゃぴちゃと
水の跳ねる音がして ....
ひどく寂しそうな顔をして
いったいどこを見ているの?
私も君の視線を辿れば
同じものを見ることが出来るのかな?
近づきたい
そんな気持ちが
大きくなって
君と同じ所に
立とうと ....
移り行く季節
変わらない君の笑顔
どこかに置き忘れた
金色の鍵一つ
開けられないドアの
中にある笑顔
取り戻すことは
二度とない想い
繰り返す日々に
逃げ出したものの
独り ....
大好きだったあなた
まだまだ幼い恋心だったけど
ずっと忘れられないひとになるって知っていた。
片思いだから愛じゃないっていわれても
それでも愛してた
大好きだったあなた ....
夜は夜のままで、かたち通りに息づいていく
少しだけ回る酔いの、世界の
窓枠から月明かりが零れる
思うままに影の、区切られて
深くなっていく宵の
眠れないと、嘘をついた
流れはそこから、 ....
流されていく言葉の端にも
空の順列が
少しずつ結び付き始めている
この街にも人は零れていて
青でいっぱいになって、いつか身動きがとれなくなる
沈んでいけるのなら
そこに沈み込みたい
....
昔、あなたに宛てて書いた手紙
あなたが受け取らなかったので
まだ手元に残っている
手渡そうとすると
あなたは決まって困った顔をしたから
わたしは何故なのだろう ....
塾の講師なんて仕事をしていると
子供の心に触れてしまうことがある
前に受け持っていた女子生徒が
授業中に突然飛び出して
二階のベランダから飛び降りようとした
「死んでやるー!」と何度 ....
職場の後輩が結婚退職することになって、送別会に出かける。そこまで近い関係じゃなくて、しぐさとか笑顔とか、感じいいなあって思ってた人。そうかーよかったね。
だけどそんな感慨はもはや思いっきりマイナ ....
規則的に並んだ 長方形の、
石の上に横たわる
やわらかな、暗室
腕をまっすぐ 前に伸ばして
星座の距離をはかる
おや指とひとさし指で足りるほどの
遠さで
わたしを見下ろしている
....
東京は
私たちの隠れ家だった
誰も私たちを知る人などない街で
なにもかもを忘れたふりをして
ただのオトコとオンナになるための
狭くて大きな隠れ家だった
東京タワーも水族館も
....
いつのことでしたか
忘れてしまいましたが
絶句したその無言の先に
あの日がちらついていたのは、確かです
日溜りの微笑む
静けさのなか
涙は花ひそめ
無表情に泣いていました
それはか ....
たとえば
カーテン越しの陽だまりに
できるだけぽつんと
たよりなく座ってみる
時計の針の
こちこちという音だけが
胸にひびくように
明るみの中で目をとじる
いつの日かお ....
つめたい指をしている
と あなたは言って
ふたまわりほど大きな掌で
包みこんでくれた
ゆきうさぎの見る夢は
ほのかに甘い想い出ばかりで
わたしは人のぬくもりに
慣れていないから ....
煌星がひとつ
静寂に耐えきれずに
堕ちてくる
差し延べた
救いの手を
そっと抱き寄せる
言葉など
いらない夜だから
開きかけた唇を
そっと塞ぐ
冷たくなった幼子を
か弱き両手にひしと抱き
二度と帰らぬ温もりに
涙を流す母と子に
一体何が言えるでしょう
甘きは全て子に与え
苦きは我が身に受け止める
其れが母と知っていて
私に ....
甘くない珈琲を
手の中で
大事そうにしていた
猫舌だと言って
大事そうにずっと
両手の中で
十二月に降る雪のように
ま ....
満水の夜に
感覚をとぎすませながら
無数の魚が泳いでいる
距離と、位置と、
上昇する体温と、
そういうものを
止めてしまわないように
蛇口に口をつけて
あふれ出すカルキを吸うと ....
やわらかな陽射しに顔を照らされて
ふと立ちどまる
それはあの人の腕の中と同じ温もりで
ぽっかりと空いた胸の空洞に気づく
子供みたいに駄々をこねて
一夜だけでいいからと縋ったの ....
その時に何を考えてるかなんて
そんな野暮なこと聞かないでよ
あたしはただ数を数えているだけ
何も考えないし
あたしは眠らない
どんな男でも
眠っている顔だけは
妙に愛らしいこ ....
洗面台の鏡を傾けたら
小さい流木がころげおちた
どうやら 渦巻くのは小さい海
どこか角度の違う世界へと
つながっているらしい
悟ってはいけないよ、と
こころの母の声がして
そっと指を ....
一度だけでいいのと
貴方に抱いてもらう事は
簡単なように思えて
とても難しい
遠く遠くにいる彼女を愛する貴方は
私を拒むような気がするし
何よりも
今の関係を壊す事が
私には大罪のよう ....
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