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風のむせび泣く
夜のはしっこの
ほんの隙間に
こぢんまりと
丸くなって
眠ってしまえ
水銀の上下する
オブジェを見て
ころころと
声をたてて
笑えばいい
とじた
....
冬の空に
オリオンが南中する頃
ベテルギウスは涙を零して
名前が呼ばれるのを待っている
冬の空の、暗い、
まるで何も存在しないかのように ....
三千世界の夜が 墜つ
踊る大地の夢が 果て
君は痛い とは云わなかった
僕は痛い と叫んでいたんだ
大地に踊れ 過ぎし夢
背負った烙印は 僕を{ルビ灼=こ}がし
僕を抱く君 消 ....
言葉なく交わすあなたとの言葉
静寂に落ちたひとしずくの音色が
あなたのすべてを物語る
言葉なくあなたを抱きしめて
あなたへの誓いの言葉とする
一つ
二つ
数えながら歩いている
わらった わらった
影を数えている
花火の影が網膜にちらついているので
手をひいて二人で夜道を帰った。
消えいくものはすべて
かつて私 ....
朧月が泣く夜
カメラごしに見た光ではなく
自分の目で感じた景色
漆黒の中に浮かぶ
オレンジ二つ
ゆっくり私を追い越して
赤に変わった
ただ
教えてもらったモノではなく
自 ....
真っ青な空が広がる秋晴れの日
息絶えた老婆は白い{ルビ棺桶=かんおけ}に{ルビ蓋=ふた}をされ
喪服の男達の手で黒い車の中へ運ばれた
人生の終止符を告げるクラクションが低く鳴り響き
親族と ....
インターホンが壊れてしまって
不在票ばかり、溜まってゆく
ドアをノックする手を
誰も持たない
再配達を
今日は頼んだから、
夕暮れにつづく時刻に
言い訳を抱えて
ドアの内側に寄 ....
涙は
流れることを許されず
瞳にとどまっていた
雨が
かわりに泣いてくれたので
辛うじてプライドを保っている
物語は
最終章を目の前にして
頁を閉じられた
栞を
....
目に見えない時を読めるようになったのは
あのひとと次の約束をするためだった
等間隔にきざまれた目もりを
瞬間の目印にして
大きな流れの中でも
わたしたちがまた、手をとりあえるよう ....
幼い頃のひとり遊びの記憶は
影となって私に纏わり
誰かを愛そうとするたびに
耳元で呪文を投げかける
楓の色づく様を
薄の頭をゆらす様を
人と分かち合うやすらぎを ....
わたしの中に森が生まれたとき
その枝は音もなく広げられた
指先から胸へと続く水脈に
細く流れてゆく愛と
時おり流れを乱す悲しみ
わたしを立ち止まら ....
夏の最後の日差しが眩しくて
何も言えずに目を閉じた
晴れた空に向かって
君は背伸びをして手を伸ばす
それでも僕は何も言えない
ひと夏が終わるたび
....
妻と二人で梅干を漬ける
台風が近づいている
空はまだ晴れているけれど
窓から入る風は生暖かく蒸し暑い
梅の実の良い匂いがする
水洗いした梅の実をタオルで一つ一つ拭き
ヘタを楊枝でほ ....
冬の木漏れ日の中で懐かしい歌を聴きました
懐かしくてももう泣けない自分がいました
それが寂しくてそっと瞳を閉じました
太陽が淡く輝いた冬の日のことです
太陽 ....
記憶は
思い出に似ていて
にどと戻りはしないのに
私の体を小刻みにふるわせる
港町の風景が逆光の影のように
寒くてしょうがないのはきっと
季節を呪った
ブランコのせい
吹きかけ ....
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