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夜のドレープに裂け目が入る
夜明けが裾にそっとくちづけると
私はすべてを脱ぎ捨て
一羽の鷹になって飛んでゆく
まとわりつく冷気を翼で切りながら
あなたを求めて飛んでゆく


   私は ....
ポケットのビスケットが
粉々に砕けて割れた
壁にじっと押しつけていたせいで
鳥が飛び立つのを見たかった
小さなクロツグミが羽を広げるのを
僕はしくじった
ビスケットは無残に割れてしまった
 ....
光は満ちてゆく
花のような小舟を浮かべて
ふたたびの光は寄せてゆく
まだ浅い夏の水際に


片足を浸して眺めるだけだ
ドアを細めに開けて
そっと知られぬように
飛び立つ小鳥を慈しむよ ....
窓辺に香る黒いグラジオラス
いつか見た記憶のようだった
車のライトがフラッシュバックのように
無言の部屋を通り過ぎてゆく


雨夜の帰り道
突然君にくちづけた
あのあたたかい
湿った ....
少女服脱ぎ捨て君は駆けぬける
    街角、インクの乾かない朝


追いかけて非常口ドア雨上がり
    無邪気な青にだまされてゆく


水にうつる言葉も意味もないグラス
    残 ....
しずかな時間に光がうまれた
わたしの心に映り形作られるもの
それは木もれ陽 それはうた
あたたかな陽だまりの中で
わたしを見つめるあなたの瞳
どこか遠いその瞳


あなたの眼差しに海が ....
わたしの頭にもやがかかってゆく
わたしの目に霞がかかってゆく


何も考えられず何も見えず
わたしはまはだかで歩こうとする
草がからみつき肌を切り裂くのもかまわずに
風になぶられる髪がど ....
ホリデイ
青空にはためく白い洗濯物
私は音の出ない口笛を吹きながら
遠くに走る車のきらめきを見ていた
いつか見た潮騒のようだとふと思う
あなたはまだ帰って来ない
風が気持ちいいわ 春のよう ....
かつて私の心はまだ白く何も描かれず
風のような手触りがした
誰も知らず 一枚の草の葉のように
静かにそよいで穏やかだった


ふとあやまって落としたインクのように
すべてがいつか変わって ....
太陽がのぼると
鳩がえさをついばみ
{ルビ教会=イグレシア}の鐘が鳴り響く
レタマ・ブランカの花が
今日も甘い香りを漂わせている
もうひとつの町にも
ここと同じ朝がはじまる


   ....
たとえばいつか
時計の針が十五時を指したら
南向きの窓辺に腰をおろし
熱いミントティーを飲む
白壁とコバルトブルーのきらめく
シティ・ブ・サイドのカフェにいるように
乾いた風が吹いたら
 ....
雪のなかに立ちつくし
あとからあとから降り続く雪片を待つ
そうして私を埋める白いせつなさよ
ぼんやりかすんだ空を見上げ何を待つのか
あとからあとから降り続く雪片を待つ
夕影がひたひた伸びて心ぼそい
    手の鳴るほうへ手の鳴る{ルビ方=かた}へ


最後まで残るこわさに二人して
    遊びなかばで遁げるたそがれ


終わらない遊戯にも似る夕暮は
 ....
桔梗の匂いです
ほんのりぼかした地平線は
花のうねりが続いています
その上をすべる
乳白色 あおい月
輪郭はまだうすい


   夜はさらさら
   風はさやさや


月は花の ....
春の陽はひとりの心を置きざりに
    雲の流れのさみしい空に


たわいないふとした言葉にはしゃぎ合う
    風を摘む指花を折るゆび


春の日は濃いめのお茶にまっさらな
    ....
すぬかんながぐつ。 さんの石瀬琳々さんおすすめリスト(15)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
五月の鷹- 石瀬琳々自由詩16*08-5-20
温室- 石瀬琳々自由詩7*08-5-14
水際、まだ浅い夏の- 石瀬琳々自由詩9*08-5-6
くちづけ- 石瀬琳々自由詩7*08-4-25
永遠中毒- 石瀬琳々短歌6*08-4-18
しずかな時間- 石瀬琳々自由詩9*08-4-3
とらわれの春- 石瀬琳々自由詩10*08-3-27
ホリデイ- 石瀬琳々自由詩16*08-3-12
赤い花- 石瀬琳々自由詩8*08-2-13
双子の町- 石瀬琳々自由詩10*08-2-7
たとえばいつか- 石瀬琳々自由詩7*08-1-29
空を見上げて- 石瀬琳々自由詩9*07-12-27
たそがれ- 石瀬琳々短歌13*07-11-22
月は花の海を漕ぎながら- 石瀬琳々自由詩25*07-10-16
三月うさぎ- 石瀬琳々短歌17*07-3-16

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