となり街にある
パン屋のお兄さんはいつも笑っている
入り口の貼り紙には
「冷めないうちに食べてください」と書いてあって
お店のショーケースにもところどころに
「冷めないうちに食べ ....
神や天使は
私を救うのを忘れている
死神や悪魔は
私を殺すのを忘れている
忘れられるのが辛いから
誰とも関わらない
私は惨めで醜くくて
世界は無機質で正確で
....
すっげえ高い山が
どっかにあって
その山のてっぺんに
箱がいっこ
置いてあって
その箱の中には
ま
どうでもいいか
そんな話
おやすみ
よみかけのぺーじに
しおりをはさんだまま
どこかへいってしまった
しょうせつ
つづきなんて
よめなくてもへいき
なはずだった
たいくつになったら
また
べつのほんをかえばいい
....
外から帰ったら
鍵が掛かっててお家に入れなかった日
ドアの前で
しゃがみこんで
靴のつま先を見つめていた日
誰かにそばにいて欲しいけど
「どうしたの」なんて言って欲しくない
お友達が ....
ココアを買いに行った。
振り返ったら
テーブルに 彼が座ってた。
ぼーっとどこかを見て
考え事してるひとりの彼は
普通の男の人だった。
たまたま休みだから
外に食べに寄っただけの
お客 ....
あなたの温かみと重みが
わたしの存在に加えられる
その重みで
わたしは少し沈む
ほんの少し
沈む、あなたのわからない程度に
支える四本の脚
と呼ばれている、それは
わたしの言葉
....
街の中で
伝説の少女は
鴎と一緒に銅像となって
海を見つめている
その光景は
通り過ぎた夢のようにも見えた
今度同じ夢に会ったら
きちんと名前を付けて
....
割れた爪は
治ってしまった
雨を待つことも
やめてしまった
この想いは
忘れてしまおう
思い出すことを
やめてしまおう
美しい夢だと
思うことに決めた
わたしのだいすきなだいすきなサイト荒らしが
また わたしの前からいなくなった
あらゆるほかの人たちから 罵られる間柄だけど
腐った土壌に咲く花が それなりに美しいのを
見たことが無いなら見てみ ....
腰の曲がった老婆がひとり
大雨の中を歩いている
両手を鎖に繋がれて
重い足枷を引きずりながら
濡れるに任せ歩いている
彼女にも愛は確かにあった
独り暮らしの雨は寂しい
愛は何処へ ....
「
これより10分間
朝を発信します
周波数を
合わせてください
」
嵐の夜を
一人で過ごすのは心細いので
傘を持って出かけた
何度持ち直しても
背中に張り付いてしまう
風が強すぎるみたい
服も髪も
私にぴったり張り付いてくる
雨も強すぎるみたい ....
逢いたいって言ったら追いつめるから言わないの
わざと
追いつめられたら
人は泣くだけ
しゃくりあげて
指の透き間少しあけて蛍を包む
かえってこなくて ....
そうだなあ
お前さまだけじゃないよ
ぞんざいに扱われるやつは
そんなものは
五萬とある
わたしだってそうさ
もうめったなことじゃ
傷つかなくなったよ
ぞ ....
ほんとうに欲しいと思ったんだ
あの夜
だから
ここにいるだけで
しあわせ
夏が終っても
君が胸を泳ぐから
クロール
息つぎをせずに
どこ ....
君は覚えているだろう
君がはじめて掴んだ自由は
真新しい買ったばかりの自転車に乗って
得意げに街中を走りまわる事。
そして今
世間との関わりを君は海に投げ捨て
白い灯台すれすれを斜 ....
あの日から、
背負ったこの柱は、
復讐だったのかもしれない。
だがもういい。
もういいんだ。
おれは後数日で、
十五から背負い続けた、
柱を下ろし、
そ ....
なにか とても
からっぽになったので
そこらへんから
どうでもいいものや
くだらないものを
いっぱい ひろってきて
つめこんでいます
きらめくものや
たいせつなものは
ひろうたび ....
悲しいことの、その理由は
こうしている間にも
いくらでも増えてゆく
昆虫の卵のように
冷たく白く光る
小さなつぶつぶとなって
いくらでも増えてゆく
その卵をぷつんと割ると
苦い涙の ....
ひまわり畑の上を
一羽のペンギンが羽ばたいていく
僕はその意味がわからないまま
男の人と手を繋いでいて
見送るより他なかった
ぎゅっと握ると
男の人の手は少し汗ばんでいて
何 ....
僕らが歩き出す衝動は
希望なのかもしれない
その過程でいくつかの
意味のようなものを口に含むけれど
次々と廃棄しなければならない
進めば進むほど薄くなるものを感じながら
やがて一番 ....
さびしくて
ねむれずに
ぽけっとのなかをさぐると
にんぎょうがゆびにふれた
さびしいって
ことばにするたび
つぎからつぎへと
にんぎょうがでてきた
つくえのうえにならべて
ひとりずつ ....
輪郭だけをのこしたまま
あのひとがいなくなってしまったので
いつまでもわたしは
ひとりと半分のからだで過ごしている
明かりの消えた部屋で ひとり
アルコールランプに、火を点ける
ゆ ....
ここが
せかいのはしっこだ
もんばんが
ゆびさした
しょっていたものを
ぜんぶすてると
からだがかるくなった
せのびやくっしんをするあいだ
もんばんはうでぐみをして
かぎのたばを ....
あなたがひとを殺しても罪になりません
ドクターは宣告した
石ころだらけの世界
まして
モラトリアムの真ん中で
ひとのこころくらい
かんたんに壊れてしまうでしょうに
....
届けられたのは
便箋にして二枚の
こころの欠片でありました
丁寧な挨拶の他には
少しの友情のような気配
けれど
こころ火照らせるには充分な
あなた ....
8.5.05
僕にできることは
なんだろうと
とにかく探していたけど、
ただ分かったことは
僕のあまたのまんなかに
あると思っていたものが
じつはなくて、
そんなものなく ....
ミルク色の夜が来て
駅からの長い道を
きみが帰ってくる
嘘という嘘を
ありったけ全部
腹の中にぶち込み
今日という一日の残滓を
身体中から滴らせながら
帰還兵のように疲れきって
....
相槌を打った拍子にしばかれる
理不尽と怒った拍子に褒められる
声もなく戸惑う拍子に捻られる
捻られた私はとうにコルク抜き
帰ること忘れてたまにコルク抜く
抜くコルク声なく ....
1 2