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ゴミ箱はふたつ 横になっている
ほら そうして寒くなってきた
手も尻で 足の指が離れないまま片方の膝から下が無い
こうして時々積み上げておいた亀裂の前にやって来て
わずらわし ....
鴉を一度に十羽眠らせ
ごみ捨て場の連なる通りへと
傘をさして歩いてゆく
手をたたけば眠りはさめて
他の十羽が眠りだす
食事はたくさんあるのだから
あせらなくてもいいのだ ....
来るはずのないものを待つ
冬の蜘蛛のように
終わることを知らないひとつの季節と
同じ永さのなかでふるえる
汚緑の湖に打ち寄せるオーロラ
波の奥から
太陽を手にし ....
グラジオラス バブル
どこへでもいけると言いながら
壊れそうに撫でている
雨の音がある
日々の音がある
受けとめる
グラジオラス バブル
グラジオラス レベル
....
黒く巨きな鳩が
鴉の頭を踏みつけていた
鴉は言った
おまえのやりたいことをやれよ
鳩は
そうした
鏡に映らない羽が
わたしの横をすぎていった
....
朝の海には光しかなく
頂をすぎる風
うすい雲を呼吸するものには
既にそれは海ではなく
折りめ正しい紙の翼の
つけ根に震える飛べない心
枯れ葉の熱に渦まく白金
土が ....
ちからはちからへ垂直に落ち
からだはからだへ傾いてゆく
気まぐれな風の格子
雪道に揺れる草の影
重なるようで
重ならぬもの
煌々と冷たく
空を持ち去る
何も書かれて ....
ねむりたい頭のうえの冬蜜柑
渚なきからだ横たえ冬を聴く
白髪に月がふたつの冬夜空
斃れるはきさまだと知れ雪つぶて
おのれこそ ....
ふいにはじまり
ふいに終わり
悲しくそこにとどまるもの
晴れた夜の無灯火の群れ
光をちぎり 与える誰か
ちぎれる前の 光のありか
地に倒れた外灯が
赤い星を聴いている
青に ....
わたり鳥の光のかたむき
水と草とに散ってゆく声
拾う者なく散ってゆく声
あたたかな隙間ある冬のはじまり
器にはまだ水があり
夜の雲を映している
緑を覆う緑の暗がり
....
光の傷の足跡でした
小さくまぶしい姿でした
川はあふれ
流れはくちびるのかたちをして
水と土とを引き寄せるのでした
流れの音は
光の花の緑をしていて
過ぎてきたどこか ....
嵐の夜
白と黒の町
{ルビ礫=つぶて}のなかの
廃屋をめぐるまわり道
螺旋階段に立つ人々
雨のなかの天使を見下ろしている
瞳から瞳へ落ちてゆく滴
水彩の ....
壁のほうに入口を向けた
朽ちた小さな犬小屋
墓標のように
玄関の脇にある
鏡台につもる
見えない髪の毛
ふさふさとこぼれ
足指に触れる
鏡のふところにあなたはいる
鏡の声に応えるあなたと
ほころぶような微笑みと
映ることのないわたしを見 ....
生まれ ささげ 手わたし 去る
鏡のなかに増えてゆく
誰もいない家並みに
打ち寄せるすべての見えないもの
やわらかく 冷たく
悲しいもの
暗がりに立つ光の線が
自 ....
冷えた茶を飲むとき
私のなかに
雀が居るときがある
様々なものに殺された雀が
私のからだのなかではばたいている
....
触れればずっと鳴りつづく
触れない気持ちがそぞろに歩く
触れるものなどないはずなのに
気づかぬうちに触れはじめている
隣り合うふたつの窓のひとつに
遠い窓の灯りがとど ....
高い雲 低い雲
右からは見えない左雲
おうおうと鳴き
ふうふうと応え
夕暮れに撒かれる苦海の火
ひい ....
ふわふわが
ふわふわに言います
もっと
ふわふわになる
光が光に目をふせ
渦の生まれを見ます
ふたつ
生まれた
ほつれ
ほどかれる指が
からまわりし ....
線引きされた空からあふれ出て
黒雲は地へ
黒雲は地へ
つながるものがなにも無いところへ
おまえには何でも話せそうだ
....
からだをすり抜け まわされる腕
天使よ てんし 地使よ ちし
少しだけ浮くおまえの軽さ
水たまりの上の葉を踏んで
湿った土にひろがる重さ
毒のめまいを消し去るめまい
新たな ....
響くまま 風の輪をたどり
足もとは枯れ
緑にそよぐ
枯れては緑
枯れては緑の音を聴く
空にあいた鉄の穴を
夕べの羽が通りすぎる
響きは響きを消しては生まれ
まるい音 ....
人さし指と中指で
腕についた血を軽くはさむ
もう流れないそのかたち
なかば閉じかけた三本の指のあいだから
口と目のない白い髪の女のにおい
....
教会の屋根裏部屋に
無理矢理押し込められて泣き叫ぶ巨人のキリスト
空はほおずき色の仮面
閉じかけた口が地に近づく
くずれかけた家 ....
卵を産んでいる親蜘蛛を
卵と一緒に握りつぶして
やさしい少女の顔をした少年
そのままの手で夏の樹を抱く
夜多き午後に生まれて
水に逆らい 森になり
少しだけ埋もれた地の月を見る
暗い光の束を見る
血のにじむ手のひらの先
雲に重なる雲を見る
空が示すものに応えつづけて
ひ ....
夜
なにもかもが
羽のようにわかり
涙する
遠くの火が
空を揺らす
ねむりつづける花
ねむりつづける草
不夜を誇るものたちに
とどかない原の火
....
何かを描こうとした手のひらが
冷たい膝の上にひろがる
消えてゆく言葉に涙するとき
ふいに指先に触れてくるもの
遠い雷
遠い花火が
水の笛のなかにあり
ゆうるりとゆうる ....
川の向こうに
痛みが待っている
少女の姿をして
けだものの背にもたれて
得られないもののように笑い
届かないもののように立ち
詩わないもののように腕をからめる
....
力をふるうもの
草に狂うもの
ふたたび来る雨に吼えるもの
一片の永遠に触れ
燃えあがるもの
背中に降りる手を感じ
泣きながら目覚め
羽の失いことを知り
ふたたびね ....
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