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◇小魚

雨の後は
小川の土手が増水し
小魚たちの遊戯場になっている

水圧に押されて
寝てしまった青草を
小魚がしきりにつついて
運び去ろうとする

一本の草とて
そうはさせ ....
逆境のとき

いつも傍にいて

慰めてくれるのが

猫だ

名前すら付けて貰えない

猫だ

おい 猫よ

おまえは

すぐ忘れ去られるのに  ....


こんなにも雪に降り込められるのを

喜ぶものがいるなんて

そうやって清らかなものに

深く深く染められていくのを

待っていたものがいるなんて
   野の兎
   降る雪ものともせずに
   跳ぶ

野兎にとって
視界のきく
晴れわたった銀世界は
好ましい環境とは言えない
狐や鷲、鼬といった
天敵の眼に自分の姿を曝してしまう ....
森の奥深くさまよっていると
重なり合う枝の
青黒い梢の繁みの中から
ふと
神の視線を感じた
見上げる先に
二つの眼光炯炯として
高妙なる
大ふくろう

神でこそなかったが
 ....
神の国はさながら

サバイバルゲーム

とことんやってみなければ

分からない

与えてようやく

見えてくるものがある

リトマス試験紙のように



そ ....
今日(四月十二日)はキリストの復活の日だそうです。
復活の日だから彼女に愛のポエムを書けと
神は言うのです
彼女って あの猫の?
と僕は訊きました
どうもそのようです
なぜ復活の日 ....
トクメイで詩を書いて人を脅すなんて
最低も最低 愚の骨頂 犬の骨だ
掲示板にトクメイを遣うのなら分かるさ
しかし詩はその人間の真髄を
もろに表わすものだぜ
それをトクメイで書くなんて ....
夏も終わって秋が忍び寄っている夜
北の方角で爆弾の炸裂する音がした
花火の季節はとうに終わっている
また爆弾の音
今度は南の方角で起こった
私たち狙われているのかしら
女が震え声で ....
ピサの斜塔を見てから

頭の中が傾いてしまって

たえず修正しようとする意識が働いている

倒れない限り

傾けば傾くほどいいらしい



小説もしかり

詩も ....
◇暮れ

年が暮れる
暗い時代の予兆は
そのままに

初日は
それらを
もろに背負つて
出てくるだらう


◇木にぶつかれば

蝸牛は彼なりの歩みを
何昼夜もつづけて
 ....
湖心から湖畔へと

一艘の無人の白いボートが

静々と漂つて来る

寄せくる波に身を委ねて

従順な驢馬のやうに

いつたい何を乗せるつもりなのだらう

あるいは誰を
 ....
◇尾瀬ケ原


虹に遇ふ

もつとも

さやかなるときに



◇車窓より


白鷺は立つ

点々と



四、五枚の

刈り田に

一羽



 ....
カモメは海沿いの線路上を飛んでいる
超低空で
軌道をいささかも外れることなく


線路は間もなく
海を逸れて山間へ入る
線路に添うか
海に添うか
カモメにとっての岐路だ


カ ....
一粒の雨が傘に弾いて
百匹の蛙になった
百粒弾いて
一万匹の蛙になった

一万匹は
すぐさま姿をくらまして
それっきり雨は止んでしまったから
微かに地面の濡れたところが
 ....
電車が大都市のビル群を

抜け出すと同時に

車内に閃光が走った

乗客はすわ核爆発と

その場に伏せ 

椅子の陰に身を隠した



しかし十人ほどは

 ....
旅先の田舎のベンチで
君の名前を見つけたよ 
夏子
いつたい誰が 断りもなしに
君の名前を書きつけたりしたんだ

(こんな色褪せた おんぼろベンチの
背凭れに 乱暴な稚拙な字で  ....
なぜ湖がよいのか

一望にできる姿をしてゐるから

瞳のやうに澄んでゐるから

四囲の風景をとかして

もう一つの世界をつくつてゐるから

おそらくそれら諸相に根ざして
 ....
ママが死んだの
私が高校を卒業して間もなく
ママが死んだの
ママと二人だけで生きてきたのに
そのママがこの世からいなくなってしまったの

ママはパパのことを私に教えてくれなかった
私 ....
◇光


雪山には

光が爆発してゐる

人影はなく

光の爆発はつづいてゐる


◇粉雪


粉雪がさらつてゆくものは

甘い想ひ出と

酩酊

ちりち ....
栗林沿ひの道を歩いて行くと

コツンと固い音が

地に弾けてやんだ

少し行くと

また同じ音がして

生きものめいて

転がつていくものがある

――栗の実――

 ....
市場通りに一尾の魚が落ちてゐる
眼は赤く悲しげに潤み
視線を曇天へと彷徨はせる
そして
路面についたもう一方の眼は
闇の地の深みを透視してゐる

魚は期せずして
天国と地獄を
同 ....
山肌が幅広く剥落して

日に晒されてゐる



真昼時は

まだいいとして

日が傾いて

夕日の色が

濃くなるにつれて



幅広の滝が

血を流し ....
―冬が来る前に一同集って
旧交をあたためようぜ―

Zからこんな招待状が舞い込んで
まあ、行ってみるか くらいの気持ちで
出かけていった
Zは中学時代の番長で
苛めっ子だった
俺はいつ ....
夢に月が現れて

どうしてあの山荘に

月見に来なかったか

と咎められた

バイトだよ 

欲しいゲームソフトがあったのでね

そうやっておまえは

取り残されていくんだ ....
 
今朝 
露にかがやいて
咲いた朝顔が

のこらず 
消えてしまつた

―小鳥が来て 
食べてしまつたわ―

と 
その家の母親は 
呆れ返つたが
 
真実は 
その ....
◇コスモス


炭鉱の閉山跡を

コスモスが埋め尽くして


炭鉱夫の青春が還つてきた

背景はあまねく

コスモスと青空



◇金魚


金魚は

いくら ....
緑濃い{ルビ山陰=やまかげ}から
ひらりと紋白蝶がさまよひ出た
断崖の下は海の群青
湧き上がるすでに夏とはいへぬ
冷ややかな風を器用に避けつつ
蝶は陸に沿つて舞ひはじめる
波打ち際には
 ....
 

しとどに雨が降る

大粒の雨が

ブリキ屋根に穴をうがつ勢ひで

降り募る

降つて 降つて

怨みを晴らさうと

降りまくる

中に侘び暮す人のうらみを

 ....
来る日も来る日も
欲しいだけの陽は降り注ぎ
水の恵みも充分受けてはゐたが
代はり映えのしない日々に
嫌気がさして
葉叢のなかの一枚が
ある日 ひらりと裏返つた

―決して気紛れでは ....
恋月 ぴのさんの杉菜 晃さんおすすめリスト(72)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
波打つ草原- 杉菜 晃自由詩11*12-3-15
救世主- 杉菜 晃自由詩8*12-3-13
- 杉菜 晃自由詩6*12-2-23
野兎- 杉菜 晃自由詩8*12-2-21
森の奥- 杉菜 晃自由詩5*09-6-5
流れ星- 杉菜 晃自由詩6*09-4-19
愛のポエム- 杉菜 晃自由詩4*09-4-13
我は清らかならねども湧く水聖にして- 杉菜 晃自由詩6*09-3-20
晩鐘- 杉菜 晃自由詩7*09-2-24
斜塔- 杉菜 晃自由詩4*09-2-18
小詩集__日は出づ__暗き予兆のまま- 杉菜 晃自由詩2007-1-2
ボート- 杉菜 晃自由詩15*06-12-7
小詩集__雪の扉- 杉菜 晃自由詩15*06-12-4
一羽のカモメ- 杉菜 晃自由詩15*06-11-28
夕日のマフラー- 杉菜 晃未詩・独白15*06-11-22
閃光- 杉菜 晃未詩・独白7*06-11-21
売れつ子になつた夏子- 杉菜 晃自由詩18*06-11-18
静けき時間- 杉菜 晃自由詩11*06-11-17
ある少女の独白- 杉菜 晃自由詩15*06-11-15
光_・__粉雪_・_蟻_・_・_・- 杉菜 晃自由詩15*06-11-11
命の音- 杉菜 晃自由詩11*06-11-10
路上- 杉菜 晃自由詩14*06-11-9
赤い山肌- 杉菜 晃自由詩13*06-11-8
太陽が喋った- 杉菜 晃自由詩9*06-11-5
月が出た_夢に出た- 杉菜 晃自由詩10+*06-11-3
朝顔のゆくへ- 杉菜 晃自由詩10*06-10-31
コスモス_金魚__・・・・・- 杉菜 晃自由詩13*06-10-29
白い旗_夏の終はりの海岸線- 杉菜 晃自由詩14*06-10-27
- 杉菜 晃自由詩6*06-10-26
気紛れではなしに- 杉菜 晃自由詩15*06-10-25

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