すべてのおすすめ
このドロドロした
赤ワインの
澱んだとろみのなかに
君と僕の歪んだ愛のかたち
全ては収縮を繰り返し
この赤ワインの瓶のなかで
絡み合う存在であり続ける事の意味
この刹那
僕 ....
記憶と想い出は
にていて、ときおり
くべつがつかなくなる
枝に懸かる
満月
いま、そこにあるのに
想い出のようで
あの 夜のように
そう凍るように美しい
ひゅうと、あしもと ....
君は変わったね
同じことを
君が言い出す前に
キスをしよう
全てが始まったあの日を眺めながら
全ての終わりを語る唇を
塞いでしまおう
傾く船にはもはや
救いの手立 ....
末端の夜で
日常にある
輪郭のない
さびしさを
手繰り寄せる
その顔は
か細くゆがみ
青白い灯火に
照らされて{ルビ寝=い}
さまざまな角度で欠けている
ほおいほおい
呼 ....
テーブルから
持ち上げたグラスの跡の
丸い水溜りをかき乱した指が濡れた。
夏の熱が引いてゆく。
グレープフルーツジュース。
そのグラスを頬に当てれば
あ、この匂 ....
地へ圧し掛かる空と
空へ高揚する無数の緑の視線との間
夏の声帯が震え、静かに感情を燃やしている
若い耳で、耳鳴りが日常になってゆく
若い目が、陽炎に依存してゆく
信じられるものを ....
たとえば
君が僕の背後に忍び寄り
両手で目隠ししても
見えちゃうものは見えちゃうよ
君の指先は細くてやわらかいから
ついでにぺろりとしてあげる
隠すから見たくなる
子供には毒って言い ....
今時マニュアルシフトなんて流行らない
二人の行為はオートマチックで
燃えあがる
ハンドルは君の肩
僕がアクセルを踏み込んで
君の肩を軽く揺らせば
甘くさえずる君はカナリアになって
....
サービスで付いてきた
しおりの柄が気にいらない
本の中身は上等なのに
どうにもこうにも
これではいけない
気にいったしおりを
自分で作ろうか
それでは本に失礼ではないかな
それでも ....
かざぐるま
自分では回れない
竹とんぼ
自分では翔べない
( 風を起こし風にまわる )
風鈴
自分では歌えない
三日月
自分では輝けない
夏の終わりを待ちこがれ
飛 ....
七面鳥は醜い
青くなったり赤くなったりしながら
肉瘤を伸ばしたり縮めたりする
肉瘤は強さの象徴
弱そうな雄鳥をみつけては
目一杯に伸ばした肉瘤をみせつけてやる
今夜は久しぶりのお食事会 ....
不幸は甘い蜜の味がする。
だから一度でも
不幸を味わうと、その甘美さを忘れられず
毎夜毎夜、
幻覚に捕らわれてしまう。
自分の不幸は蜜の味。
不幸の一滴を口に含んでみる。
初めは ....
わたしがむやみに数えるものだから
蛍はすべていってしまった
わたしが思い出せるものは
ひとつ
ふたつ
と
美しい光
いつつ
むっつ
と
美しい光
けれどもそこ ....
真昼の公園で
全身、汗にまみれながら
ジョギングをしている人がいる。
両の手に
ペットボトルを握り締め
汗に濡れ、体に張り付いたランニングシャツから
鍛えぬかれた筋肉の動きが感じられて
....
すれ違った自転車の子供を
振り返る
白線が
鮮明に割き続ける
通学路だったアスファルトから
子供たちの声が古いものから順に遠のいてゆく
肌で増殖する蝉の羽の ....
手のひらを包みこむように
五本の指を握り固める
これが拳
ぐっと握りしめ頭上に突き出せば
シュプレヒコール
これは遠い過去の苦い思い出
ぐっと握りしめ目の前に突き出せば
血の雨が ....
薄暗い蛍光灯の光をあびて
シルバーのリングが色褪せている
長い年月
狭い部屋にひきこもっていて
時間を止めようとしたはずの僕が
いつの間にかとり残されている
友人はすでに家族を ....
良き友よ
お前の肩を
叩かせてくれないか
軽く 一度だけ
そして
良き友よ
おれの肩を
叩いてはくれないか
軽く 一度だけ
渾身の力を注がない分だけ
渾身の ....
私の
家の裏には
杉林があって
その向こうには
すこしばかりの空があって
夏になれば
蝉時雨が満面に鳴り響いているのです
しばらくそれを
みつめていると蝉の声が深く
静かに命を説いて ....
よそゆきの言葉を使うのは
僕には似合わない。
それを君は良く知っているくせに
イタズラっぽく僕を転がしては
人差し指で2回ほど僕の額を叩く。
何も出やしない。
僕の尻尾はゆるゆ ....
あれは浮気なんかじゃないよ
可愛い子猫が夜の街角で
人恋しげにニャアニャア泣いていたから
朝までかまってあげただけ
郵便屋さんの行く末なんて関係ないな
解散するなら早くすればいいじゃ ....
明けて、色彩が始まり
かつて刻んだ果実の朝の瞬間に
黄緑色の芳香と共にかつてたちこめた笑い声が
初々しい果実として、生まれ変わっているのを感じるから
わたしは齧る
あ
ずっ ....
13年ぶりの大きな地震があった
あの日の午後
僕は都心にいたから
あわてて君の携帯に電話したよ
でも、何度電話しても繋がらないし
メールを何度送っても返事はこないし
山手線は何時までも止ま ....
買い物袋から
オレンジが転がったのは単なる偶然で
私の爪の端っこに
香りが甘くなついたのも単なる偶然で
果実が転がり出さぬよう
そろりと立ち上がった頭上に
飛行機雲を見つけ ....
曇った窓ガラスに
家の印をつけて
それから
母の勤めている店の印をつけて
でたらめな道でつなげる
窓が汚れるから、と
後で怒られたけれど
それがわたしの初めて描いた
世界地図でした ....
少し湿った空気のせいにして
ずっと見つめていられない
まばたきするのと同じ一瞬で
咲いては散る火の花は
たくさんの星を集めたように
火薬の匂いをひいて流れてゆく
ほら
星が夜空に ....
赤と黄と
ラムネの包み紙色をした
オシロイバナ
濁り月夜に照らされ
隘路の脇に華やいで
鼻腔くすぐる慎ましい芳香
帰宅の人を誘惑するよ
水煙りの朝に
頭の膨れた花弁は重たくなって
....
花火だとか祭りだとかその類の
絵柄を下にして
団扇を伏せるという其の場凌ぎの隠滅法は
やけた畳の匂いがします
だから
私の脈拍が夏風邪に飛び降ります
溶け果てた氷枕の代 ....
紅さし指で
この唇をなぞっておくれ
宵をにぎわす祭りの夜に
提灯ゆらり
光はたぶんに
正しいものだけ捕まえる
ほら
燃える可憐な蛾がひとつ
短命ながらも風情をもって ....
適当に掘られているようなトレンチ
きちんと測量されて
合理的な設定なのだと
発掘で変な日焼けあとのついた
汚いヘルメットの学芸員
掘り出された破片は
プラスティックのコンテナで研究所に ....
1 2 3 4 5