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東京は
私たちの隠れ家だった
誰も私たちを知る人などない街で
なにもかもを忘れたふりをして
ただのオトコとオンナになるための
狭くて大きな隠れ家だった
東京タワーも水族館も
....
いったい誰がどうして落としたのか
道端にポツンと淋しくひと袋
飽食なこの国の片隅に置き去りの
真っ白な「えのきだけ」
その宿命をまっとうできないまま
秋風にさらされて
さぞ寒かろう さぞ無 ....
暗いはずでした
起き上がっても
見えるわけがないと
思い込んでいました
ふすまを開けて
階段を 見下ろすと
一段 一段
角も はっきり
見えるのでした
外に 降り ....
高層マンションの谷間に
ひっそりと公園
そこだけは昔のまま変わらずに
闇の中に
ぽっかりと
術後麻酔のなかで
すべてをかけた無意識で
あなたがいま
探しつづけている
あなた自 ....
咲き残る
幾重もの紅き花片は
誰人かに
散ることを留め置かれた
木枯らしに晒されて
「私はもう疲れたの」と
通りすがる男達に
哀しい微笑を投げかける
彩るうたを{ルビ口遊=くちずさ}む
こんな命があるかしら
{ルビ水=み}の{ルビ面=も}に蝶が浮いている
ちらともせずに浮いている
こんな命があるかしら
あすを知りえず浮いている
....
だまっていたほうがいいことは
わかっている たくさんのことば
わかるということは
ことばでいえるようになることでなく
いいつくせなくなること
わからないということは
ことばでい ....
やわらかな陽射しに顔を照らされて
ふと立ちどまる
それはあの人の腕の中と同じ温もりで
ぽっかりと空いた胸の空洞に気づく
子供みたいに駄々をこねて
一夜だけでいいからと縋ったの ....
こっちは雨だよ
と、すこし憂欝そうな声
じゃあ明日はこっちも雨ね
と、窓から空を見上げる
それくらいの距離
おやすみ
と、ささやく声を
耳をくす ....
潮の匂いのする河口で
きみが釣り上げた秋は
きらきらと
ヴァーミリオンの鱗を煌めかせ
すっぽりと
きみの心に還っていった
ぼくはといえば
あいかわらず
仕掛けを空に垂らし
風を釣 ....
ちいさな
ちいさな
こどものように
すみきった
わがままを
いっぱいにもった
ひとだから
ぼくは
はらはらと
いつも
めがはなせない
だからぼくは
きょうから
かぜになる ....
ねぇ見て 不思議よね
こんなにちっちゃいのに
ちゃんと爪もあるのよ と
満ち足りた母親の顔で彼女は
小さなこぶしをを開いて見せる
アキアカネが飛び交う夕暮れに
生まれたから 茜
はい ....
ねえ、きみ
そのみせにいこうよ
きみのひみつのみせに
ねえ、きみ
そのみせではなそうよ
いろんなことを
みっつのころ
たけざおにたこいとつけて
ぱんのみみをえさに
ちんまりと ....
歌は
あなたの唇から
ほろほろ零れて
やがてひとつの連なりとなって
わたしの胸まで届いたのです
風見鶏のわたしは
風が吹くたびに
あちらを向いたりこちらを向いたり
惨め ....
この世が終わっても
私は 終わらなくて
途方に暮れて
あなたを みたら
眼に涙を滲ませ
終わり と言えないでいる
どうして 他人のあなたが
私達のために 泣くの
言えば 言 ....
サンディの煙草は誰にも止められない
と、誰もが思っていることを
サンディはなんとなく知っている
黒く長い髪
茶色のひとみ
その他の身体的特徴
にもかかわらず
サンディといえば
....
言わせてはいけないと
思い続けていた言葉を
言わせてしまった
苦しそうに飛び出したその言葉を
もう一度押しこんであげられなくて
ごめんね
ぼくらの夏は
本田さんの庭の前の川淵に
どぼんと飛び込むことから始まる。
終業式のその日は
水泳パンツ持参で
通知票はほったらかしで
どぼんどぼんと
淵に飛び込む。
先生が
....
猫の手も借りたいくらい
忙しかったりしてる時も
日溜りで遊んでいる
となりの猫を掴まえて
手をとってバンザイさせてみたり
ぷにぷにの肉球を瞼に押し当てて
和んでみたり
そんな時間はあ ....
宝の地図を頼りに
ひた歩く森の緑の匂い
素足に刺さる茨の棘も癒されて
掌にこもれ陽を受けながら
小さな影を追いかける
悲しみなら深く
悦びなら永久に
真昼の森は爽やかな喧騒
小 ....
誰も知らないどこかの
小さな部屋で
歌わなくなったピアノに
ほこりが積もっています
鍵盤を叩けばまだ鳴るのに
音符はまだカエルになってないのに
歌を忘れてしまったのは
きっとわた ....
笑うことが苦手でした
泣くことはもっと下手くそでした
顔の端と端とがこんがらがって
笑っているのか泣いているのか
自分でもわからなくなる
そんな時は大抵怒っているのだ
と上手に笑う ....
ぼくのろうやにいる
りゅうちにんは
みんな
びょうきがち
しゃばにいるときは
ぎんぎんに
げんきなのに
りゅうちじょうのなかでは
とたんに
びょうきがち
いれずみの
のぼ ....
風に乗って越してきた次の日から
せっせ、せっせと
庭の草取りをはじめ
ごんごん、ごんごん
掘り起こして土作りをし、
次の次の日には
どこからか太陽の種を
仕入れてきて
ぱらぱらぱらぱら ....
ふりふりふり っと
どれすの すそを
ゆらして
まるい
ぼうるの なか
きのせい かなー
うわめづかい
きのない ふりして
さそってる かなー
そとは
....
身体の自由を奪われることと引き換えに
過去の重荷をどこかへ置き忘れて
少しづつ解き放たれていく
その手を見ればわかる
長い年月を耐えて踏んばって
あなたは生きてきたのだから
ちょっ ....
ふりつづく雨の
ほんのわずかな晴れ間に
少しの希望が見えたなら
それにすがってみようと思う
生きつづけるなら
あきらめも肝心
妥協だってしてやる
けれどまだまだ
何かが ....
おばあさん たべねば だめだ
見舞いにきた人が
そう 励ましてから
おばあさんの 体調は悪化した
食べれねぐなったがら もうだめだ
と 急に思いつめたらしい
看護婦さんがみかね ....
少女のために
空き地のために
泥靴のために
良かれ、とついた嘘
自分の肩幅も
かえりみず
良かれ、とついた嘘
あの頃は
そうでもしなければ
苦しくて
....
イカサマでも 幻でも
生きてゆける世の中で
君はきっと あの雲の上
泳いでいったのさ
走れば風も吹くし
流れは穏やかだよ
振り返れば
いつの間にか花が咲いていた
君の話をしよう ....
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