拝啓、ムジーク。音楽的な夜が、ルララルラとやってきます。コルゲンのようなうずら卵のような、つるりと白く圧倒的にやわらかく飛び散りそうな、つきぬけてせつない月。ぼくらはぼくらなの ....
ある時ダヴィンチが
金魚鉢を眺めていると
金魚がウインクしたので
「魔が差したんだろう」
と思った
またある時ダヴィンチが
散歩をしていると
電信柱がおじぎをしたので
「人 ....
複雑な想いを孕んで熱風が吹く
季節は夏
まぶしいほどの青空と憎らしいほどの太陽
白い雲は元気よく
アスファルトの上では情熱さえも煙を上げる
じりじりと焦げ付くよ
流れる汗さえ蒸発させて ....
黒頭巾ちゃんが寝ているあいだに
内緒で神さまをこわしてしまおうか
慈愛のシャワーがどうしてもやまないなら
谷間のユリ
という名前の薔薇をささげよう
あかいゴマシオを世界にふりかけるよ ....
身体を懸け
窓硝子が投じくる色彩鈍角と
眼球につきものの悲痛鋭角との
区別が付かず
ずきん、瞑りました
それでなおさら
難解な幾何学を閉じ込めてしまった眼を
白く、拭き取 ....
僕の隣を35度線が貫いていて
本線から外れたところで
あなたがうつむいていた
ような気がして
振り向いてみると
変わらずに
距離は隠してしまう
あなたの隣を36度線が貫いてい ....
入浴中に屁をすると、泡になって上ってくる。水面ではじけた時のにおいをかぐのが好きだ。ある時大きめの泡が上ってきたので、食べてやろうと思った。開けた口を水面につけ、屁を食べた。次の瞬間、口の中いっぱい ....
秒針がふるえて
ぼくは ただ
青くなってゆくばかりだ
深みが光を吸収し
かわりに
無数の粒子が
まとわりつく
探してた言葉は
どこにも見えず
たえなまく
泡
....
あの雨を色に変えるには
少し時間がかかります
迷い花
どれもこれも
本当で
一晩ごとに
迷ってしまう
あの雨を花に変えるには
あと少し時間が必要です
ためらい花
....
日陰に生きていた
何も言わずに
川沿いで
花を育てながら
待っていた
一年ぶりに川の向こう
清らかに
静かにたたずむ
あなたを見つけた
やっと逢えたね
....
高速で自転し公転する地球に
ふりおとされまいと必死にしがみついている自分だ
朝が来て昼が来て夜が来るめまぐるしい展開に
なんとかついていこうと必死で追いかけている自分だ
あっという間に0に近似 ....
この世界のどこかに
わたしにならなかったわたしがいて
やはり ひとりで歩いているなら
おそらく わたしは
声をかけることができないので
せめて すぐ前を歩いてゆく
少しで ....
曲がり角に沿う壁を
鳥の影がすぎてゆく
風のない午後
一羽の午後
少ない雨が来ては去り
灰は薄く街にひろがる
置き去りの光
置き去りの火
黄緑 ....
何も食べず
何も犠牲にせず
何も汚さず
何にも汚されず
多くのものを育てる
ただ真っ白い牛乳に
僕はなりたいんだ
大切にしていた箱が
最近とうとう見えなくなった
白い輪郭を今でも覚えている
美しいと思えるものを
美しいのだと思いこんでいたものだけを
少しずつしまっていった
一番最初に消えたのは ....
眠くては
まったく思ってもいないことを言ってしまうので
振り返って斜め上を向いてまた振り返る先の
イメージを繰りだして思いやる勝手のそのまた先を
あと悔やむのもそこそこに それとなく諦めて ....
傾きかけた夕日に
静かに染められていく放課後の教室
たわむれあそぶ影法師たち
その風景からひとりひとりを
輪郭にそって丁寧にきりとり
ノートに貼り付けていく
ふるえる手で
間隔が
....
陽が当たらないこの部屋には夜が堆積したまま、おはよう。
けして眩しくはないけれど、それは挨拶だ。
腕を下にしていたのでしびれた。下敷きが平たく硬いのは、しびれずに楽に生きていくための防 ....
フォーラムのチャットでハナモゲラをけんくらしていたら、普通の会話しれてらすんぱらかなので家人にかんちこりられ、しからん大破で、こにこにらすこはいでら、なんからすたを書くことにしらんぺき。はき飯は、家事 ....
道は迷ってる間は途方もなく長い
決まってしまうと途端に引き返したくなる
この道でいいのか?
この道は私に踏まれていていいのか?
私がこの道を選んだのか?
私がこの道に選ばれたのか?
想いは ....
三月になるとクラスメイトのほとんどが濡れていた
雨、と言ってもいいのかもしれない、粒子のような
猿、なのかもしれない本当は猿なのかもしれないね
と、語り合う口の中から粒が
....
いつだって街灯は
見なければならないものしか
見せてくれないので
夜は直方体の中で俯せていて
換気扇は回さないでいる
ホラー映画を明るい部屋で見ていて
終わってから突然笑い出す ....
キミは何か間違っている。と
目覚めの次にインプットする。と
一日がゆっくり動きはじめる
先週工事していたビルは
1階をシャネルに似せたカフェで取り繕って綺麗
寝起きからローストの匂い 気がま ....
「ねえ、お母様。最近あの人よく笑って下さるのよ」
だってたくさんのドレスを新調したんだもの。
若い頃を想い出したかしら。
「あら、不安定なのねえ…」
そう。一日着たらもうおしまい。
カラ ....
解放されたからだで
地面を舐めてから飛ぶんですよ
地面の味を覚えてないと
きっと降りてはこれないからね
鳥は飛ぶ必要があったんですよ
飛ばなきゃ生きてはいけなかった
あなたも飛ぶ必要があれ ....
圧縮繊維 の雲
を 引っ掻こうとするも果たせぬ細枝 細り
凝り固まったアスファルトから続く
彫刻的な彫刻的な陰影まみれ の樹皮には
纏足をほどく糸口が ありません
何か ....
さがしあぐねた太古の村里
官能の奥にゆれうごく川面
頑迷な細根の入り組む過去
身悶える蒼白い肌が密かに
産卵する苦悩の狡猾な意図
かも知れないのにもっとも
外見は無口な黒いシャム猫
....
みかがみが
てらり、と照らすので
波紋がまぶしそうに空気をつたっていく
みだれ飛ぶひかりがひとしずく
手のひらに落ちた
代わりにチェリーをひとつぶ落として
みなもを揺らし、くり返す
....
わが傷は暗黒の形にえぐられて遠い砂漠に見知らぬ人影
{ルビ落葉=らくよう}の赤錆色に濡れひかる秋の位牌の冷たきエロス
長崎のペテスブルグの上海の凍える窓濡れたるすべての窓
....
それでは納得いかないわ。
布団をパンパンたたきます。
恐怖の大王が降りてくる前に、
お日様のひかりをね。
まだまだ、パワーが足りないわ。
「カレンダーめくってやらないんだから」
と ....
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