すべてのおすすめ
私は言葉だ
私は日々 消費される 切り売りされている
切り花のように美しく 華美でいて
造花のように どこかしら胡散臭い
私は言葉という散財好きな令嬢である
はたまた この世で最も蔑視される ....
せかい、というビンのなかに雨がふります。
あおくとうめいな悲しみが、
ガラスの内がわにすいてきとなって、
したたっていきます。
ビンのなかでも、
そらは、どこまでもはてがないようで、
....
A子(主婦39歳)は嘆いていた
価格破壊の世の中を
街を見渡せば
いたるところに100円ショップ
(なのにレジでは105円取られるのよね)
超ディスカウントショップも蔓延し ....
(でっかいのが、死んだ。)
風殺すようないかり肩に丸刈りの白髪頭乗せて来るのは あれは
ロブス 漁師で 工房の隣の教会の管理人だ
逆光でも分かる お調子者の いつものいたずら ....
打ち震える涙が、立ちならぶ
忘れられた街景の片隅に、十代の足音を揺らして、
失われた向日葵は、いまだ声を上げて、
古い風の臭いに浸り、
枯れた夏を首に巻いて、
届かない空の裂け目を編んで ....
照りつける夏の陽射しの下
墓石の群を横切る私の地面に頼りなく揺れる影
一瞬 頬に見えた{ルビ滴=しずく}は 涙なのか汗なのか
( {ルビ嘗=かつ}て 一途だった少年の恋は
( 夏の夜 ....
昨日は切なさを
今日は愛おしさを
明後日は狂おしさを
一枚
また一枚
引き剥いだ心から溢れ出る
あかい
あかい溶液は
あなたの眺める空を
あなたの愛でる花を
染めぬいてくれるでしょ ....
大理石の階段にひびく
軽い上品な靴音、
歴史の終焉に迫る
クライマックスの指揮と演奏
人物を物語る影はながく、
溶けだした気の迷いが 時の針を枉げる。
主役はみごとに不在、 ....
わたし疑われています
あのひとがとても大切にしている
ミニカーがどうしても一台足らないと
夜毎わたしを問い詰めては
狂ったように折檻を繰返すのです
わたし紅薔薇婦人じゃないのに
緋色のロー ....
足元は、崩れている。
真っ直ぐ歩くことも{ルビ覚束=おぼつか}ず、
肩が揺らいでいる日々。
( ぼくの脳内には
( 壊れたリモコンが内蔵されている
胸を張れども三日坊主。
....
曇天の空の下
ざわめくこころ
まだ若きころの青空が時折
脳裏をかすめて
ぼくを困らせる
表通りを行進する
きらびやかな衣装を纏った
瞳が宝石のように輝く人々が
新 ....
溺れていく夏の海の傲慢を乗り越えて、原色
の光景にすべりこんでいく。速度を上げろ。
減速してはいけない。止まってしまったら、
たちまちにして恐怖がおまえをとらえるだろ
う。夏に生きる恐怖。夏に ....
彼は今迄何度も転んで来た。
愛に{ルビ躓=つまず}き、夢に躓き、
恋人の前に躓き、友の前に躓き、
鏡に映る、自らの{ルビ滑稽=こっけい}な顔に躓き、
振り返れば、背後に伸びる
長い日 ....
女は宛ら 一室の部屋だ
好きな男好みに 設(しつら)えられた
日々模様替えする 夜々配置換えする
九十九を過ぎた婆さえも 「あれまあ不思議!」と云うような
女は部屋の 一室である
想い人あら ....
夜 眠ろうとすると
世界中のあちこちから甥がやって来て
カブト虫を探してくれと言う
逃げてしまったらしい
眠くてもしかたがない
夜はまだ長いから
大勢の甥たちと一緒に
カブト虫を探してや ....
夜が明けて
窓から朝日が射し込むと
目の前に
猫背の暗い男が両腕を{ルビ垂=た}らし
立っていた
「 私ハ生キル事ニ疲レタ
アナタノ生霊
アナタガ誰カト浮カレル時 ....
洗面台に両手をついて
鏡面にうつる
わたし自身の姿に
すまし顔のわたしを脱ぎ捨て
背後から
すべてを包んでくれる
あなたの胸元にすがりついてしまう
ひとは誰もそうするように
突きつけら ....
ほら
こんな朝だよ
おまえはまだ寝ているこの朝を
俺は吸っているよ
この朝を
ウミスズメが
隣で
少し悲しげだよ
でもそんなことは
おまえは知らなくていい
ひらめがあわ ....
昨日の帰り道に
なにげなく空を見上げたら
コンパスで丁寧に描いたような
丸くきれいな月が浮かんでいたので
ふいにあの人が教えてくれた
あの歌を思い出しました
ここは木屋町でも丸太町でも ....
海を見たことがなかった
見え隠れする光
あれがそうだ、と無骨な指で示された海は
たいして青くなかった、が
軽トラックが、ギシギシとカーブを曲がるたび
輝きを探して、車窓にしがみついた
....
リルケはトルストイの家を訪ねた。
彼の家は、家庭紛争の最中であった。
( 伯爵は、握った杖を叩きつけ・・・
眉を{ルビ顰=しか}めて玄関へと歩いて来るトルストイ。
リルケの肩に手を ....
今年も古い母屋の軒先に
つがいの燕が巣作りしました
生まれたての可愛い雛たちは
親鳥の帰りをひたすら待っていて
精一杯の幼い首を伸ばして
甘えたような鳴き声あげている
(なんだか可愛いな
....
真夜中には出掛けましょう
「抜け出す」後ろめたさはありません
それを叱る人もいません
昼間グランドを駆け回っていた
少年少女は今頃健全な夢の中
グランドが闇に染まったら入 ....
千代紙こうてくれへん?
匂い付きのやつやで。
嗅ぐと、鼻の奥んとこが、ジーンとなんねん。
何や懐かしいこと、思い出せそうで、思いだせへん
あわーい陶酔があんねん。
千代紙には。
何でやろ、 ....
小雨の降る夜道を歩いていた。
ガラス張りの美容院の中で
シートに座る客の髪を切る女の
背中の肌が見える短いTシャツには
「 LOVE 」
という文字が書かれていた。
....
「えくぼ」
六月の風にゆれる
さくらの葉っぱ。
よく見たら
ぽつぽつ 穴があいている。
虫に食べられてしまったのだろうか?
穴は どこかの虫の命を みたして
穴は みずみずし ....
真昼の公園で木漏れ陽を浴びて
癒える筈のない悲しみのことを考えていた
ときおり吹き抜ける風はすこし熱を帯びて
客待ち顔のアイスクリーム売りの老婆の
麦藁帽子を踊るように撫でてゆく
....
とうとう動かなくなってしまった
トパーズ色した わたしの鍵
普段持ち歩いているバッグの中で
かさこそ這いまわりながら
わたしの吐き出す
あのひとへの恨みとか辛みとか
どうしようもない思いを ....
あなたの瞳に映っている森が
あまりにも美しく澄んでいたから
僕はあなたの瞳を押し開いて
中へ入っていった
あなたは目の前にいた僕を見失って
慌てふためいている ....
にわか雨は窓ガラスを叩く激しさで
海辺の汐臭さをわたしの部屋まで連れて来た
波音のひたひた寄せるテーブルで
いつか拾った貝殻の擦れる音色がする
ハンガーにかけたわたしの白いブラウス
温もりの ....
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