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おはよう
で、今日も誰かが溶けていく
それでも、空を見上げることを止められなくて
いつの間にか、あちこち穴だらけになっている
使い古しの気持ちを手紙に残して
あなたもすっかりと溶けて ....
散乱が止まらない新宿で
途切れない音量につぶった目の裏の
堆積を泳がせるかなしげな夜に
それは冷えきった街灯の指先だった
視覚のぽつりとした後
肌触りがしびれて遠くをめぐり
ぼくは静かで硬 ....
ぼくたちはときに、ひややかな空をうっすらと着て夜闇の蛍光灯の照らす端で立ち止まる。「ん」とか声にならない音で喉をきしませて、まず見るのは足元の靴だ。重力がぼくをきちんと踏みしめている ....
ゆるく、なります
( ゆるく、なります )
髪の毛の先っぽ
まで
凍ったまま、に
肩までつかっては
たちのぼって消える
白、を
ひとすじ、ひとすじ、
つむいでゆく
と
わ ....
どこにでも
約束は無いとして
真夜中で
月の沈む場所
緩やかな寝息で
どこへ落ちていく私にも
約束できる
ものは無いとして
少し
はぐれる
月の端を狙撃して
落ち ....
風上に立つ冬が
耳に届くすべての海を
耳鳴りに
します
遠く
遠くに
此処には無い海が
あるとして
それは遠くの
ずっと遠くに
此処には無い海が
あるとしても ....
*
声とともに遠ざかる
深い闇はいつも僕の外側にあった
それは宇宙とつながっていて
私はそこにひかれたの、と彼女は言う
その声に僕は身をかたくする
夕暮れに開け放たれたテラスに
路地 ....
りんりんと
しなびた空気をいま
のみこんで
ナイフを もっています
ナイフは 金物屋のおじさんが
よく切れるよ と言っていたので
(おじさんは嬢ちゃん、といった)
(ナイフを売っ ....
1
あのお姫さまみたいにうそぶくあなたのその声の中では
死んでしまった方が、良いのですか
初めてそんなことを思いながら
今日もピンを刺します
このピンでは、手のひらを
1センチだけ ....
ぼくはよく考えるということをしようと思って
正座をして
ジーンズが電気ストーブで焦げないようにして
冷めた珈琲をすすり彼を真似る
素敵なことが起こってきたので
このまま勘で行こうと
....
偉い人と 偉い人の話は
よく わからないので
ぽつん
私は 蚕蛾で
さくさくと 桑の葉をはむ
ずるい人と ずるい人の話は
よく 聞こえないので
ぱりん
私は 繭 ....
向かい風の吹いている
地図の上です
収縮と膨張を繰り返す波打ち際の
緩やかなカーブをなぞること
波音は届かずに
待ち焦がれるばかりの
海岸線が近い
そうで
少しずつ僕らに迫 ....
冬の木漏れ日の中で懐かしい歌を聴きました
懐かしくてももう泣けない自分がいました
それが寂しくてそっと瞳を閉じました
太陽が淡く輝いた冬の日のことです
太陽 ....
夜中、目がさめて階下に降りると
君が僕を積み上げていた
たどたどしい手つきで慎重に積み上げ
途中で崩れると
ふうとため息をついてまたやり直す
時々どこか気に入らないようで
何か ....
いま
昇ってゆく
はりついた水平を
捨てて
乾いた土も
取りこぼして
一人きりの
拍手のように
器用な着地も
知らないまま
誰を
背負うことも
ない
あの
....
たろうを眺めるたびに
こそばゆくなる
こそばゆい
こそばゆい
こそばゆい
くうらんの何にも入っていないあそこから
押し寄せる
大群
真っ赤な
魚
のわたし
たろうを眺める ....
ダンボール
捨てたいものをつめた
ダンボール
は、ちいさかった
そしてなにもなかった
わたしはなかった
あ、あ、あ、
みじかい音をいくつも出して
壁に羅列のスタンプをして
そ ....
過ぎ去るものがあって、僕は奏でられているものを聞いている
耳から耳、手から手
それから
夕立に降られそうになって、傘を買った
小さく折りたたまれた傘で、雨が降らなかったので広がることはなか ....
そっといじけたような光でいる
まるくまるくなでられたいのに
そっぽをむいて目を閉じて
大きな花の実を食べている
ずっとむずがゆく思っている
ときどき次の次がほしくなる ....
[唇がはなれてことばを、すべりだす。昼過ぎのガラス窓に緑色がぼやけて逃げる畳の、角に埃、ふわらふわら舞う。涼しく吸い込み、からだの中を撫でて回るやわらかな無が、人たるぼくのこめかみの先まで届くらしい。 ....
ガラス玉の中で夜が
凍ったみたいに動かない
だからここには何も来ない
昼も夕方も往ってしまって
世界がポツリと佇んでいる
私は夜を握ったまんま
電車に乗ってひとり
闊歩している
こ ....
花占いをする少女の背中から
日向の匂いがしたりして
指先からこぼれる花びらがオレンジで
昨日降った雨の湿土を
温かく変えて行くのは
その答えが「イエス」だからなのでしょうか
お幸せに ....
どうにもこうにも
犬の糞をふんずけてしまった時みたいに
マヌケだ
きれいにかしこまった感じで
「どうでもいいよ」と
受話器からのご返事
ああ
がぶがぶとポカリでも飲んで
その後ティラミ ....
ステンレスキッチンに置かれた
一枚の紙切れ
強烈に窓からそそがれる
陽射しにめまいしながら
水をのんだ
昼の電波網では
とにかく男と女が終止
運命の出会いをくり返している
のに中庭には ....
閉ざされた窓の外は氷点下の青空
冬には
見えないものも見えるものも等しく正しい
さよならも云えないままに消えてしまった夏は
凡てが微熱に喘いでいた
空
向日葵
海
神様
....
娘よ
すまない
おまえが初めて空気を吸った時も
おまえが冷えた
つま先抱えて
泣いていた時も
25年間
父さん
おまえにとって
死んでいたのだろう
混んだデパートで ....
褪せた街に似合う青い蛇のようなものが夜、落雷のように足元をするり抜けていった。「早いよ、早いよ」と、遠い声。ネオンの西新宿に降るか降らぬかの小雨に湿り髪の毛のぼくが、古ぼけたコンクリートのビルが濃くす ....
砂塵に覆われたコンクリート
目を凝らせば
ほつれ落ちた枯れ枝、その向こう
目を凝らせば
灰皿代わりだった冷たい赤い一斗缶、その向こう
公園を閉じ込め続ける鉄条網、その向こう
澄 ....
出て行くのです
朝早くの電車に乗って
霧の中のレールに乗せて
席は自由で
同じくらい不自由で
透明な朝に気付いてしまうと
そればかりを求めてしまう
ススキの群れる白い世界を
滑り込 ....
あの人は頭にツノがありました
ある日
頭にツノがあって大変ですね
と言うと
あなたはツノがなくて大変ですね
そう答えました
あれを初恋と呼んでいいものか
今でも戸惑います
ただ、あ ....
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