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のりものに乗った
小さな真昼だった
窓際の席に座ると
すぐ側には
窓があった
外は色彩豊かな
景色で満たされていて
足りないものなど
何もないように見えた
懐かしい誰かが
....
午後になった
扇風機をとめて
水を届けに出かけた
ひび割れた路面と短い影
歩く時も俯く癖があった
草刈の辺りで風鈴売りとすれ違う
音、聞いたのだからお代を、と
干からびた掌を差し ....
エビデンス
そう言うあっしは
カニでんす
でも本当はタコだったので
イカんともし難い、という
砂漠にすむ魚が
未明に見た夢の話
誰も知らない話
屋根のない部屋で一人
雨にうたれながら
朝食をとっている
ご飯も僕も水浸しになって
それでも今日の活力のため
食べ続ける
新築の家だったのに
とんだ設計ミスだった
隣を見る ....
ゴミステーションで
水色の捨て金魚を拾った
可愛がってください
という手紙が添えてあった
水槽も金魚鉢もないから
洗濯槽で飼う
上から覗き込むと
金魚は驚いたように
奥深くに潜 ....
繊維の構造に
光が降り注いで
戸惑ったわたしは
少しだけ早口になった
アジノタタキ、と
呪文を唱えた
日除けの帽子は
柔らかな海になって
凪いだまま
わたしの身体に
収 ....
給食の時間に落とした
わたしの唐揚げは
数十年も宇宙を漂っていた
「宇宙空間に謎の唐揚げが」
という報道で知った
写真を見ると確かに
あの日に落とした唐揚げと
同じ色と形をしてい ....
どうして
そのいろに
したの
はなびらといきた
あのはるを
+
あめの
かどをまがる
どこまでもつづく
くらげいろの
みず
+
ふうとうから
なみおと ....
○白めいた
色があった
君の白めいた指やその先
外海が言葉で満ちる頃
僕らは改札口で
無くしてしまった水棲生物の
欠片を探していた
でも本当は
最初からそんなものはなくて
....
冷蔵庫を開けると
あなたが中にいた
わたしと同じ話をするので
イカを取ってもらった
里芋と煮る
母に教わったとおりに作る
調味料の分量は
いつも適当でその度に
味付けが変わった ....
屋形船に乗りたい、と
あなたが言うので
わたしは台所に
船着場を作ることにした
ホームセンターや森で
材料を集めて
冷蔵庫は多少
使い難くなったけれど
何とか船着場が出来た
....
水のように眠った
連続する穏やかな
体液の水面
幾つかの色を見つけては
金属の味にしたがって
溶けていく
あなたが寒がるから
手袋とマフラーを買った
行く所がある訳でもないのに ....
砂漠のバス待合所で
君と雨宿りをする
雨は降っていないけれど
いつか降るのを待って
二人で雨宿りをしている
いつもこうして
何かを待っている
そして待っている間は
いつも君が隣 ....
椅子の背もたれに届く
夏の小さな雑音
子供になった父は
昆虫採集に出掛けたまま
帰ってくることはなかった
大事にしていた許可証が
風に飛ばされて
どこか遠くの海溝に
沈んでいく ....
あなたの耳の中に
階段があった
手摺はないけれど
転ばないように
わたしは一段一段
下りていく
一番下にたどり着く
幼いあなたが
膝を抱えて泣いている
もう大丈夫だよ、と ....