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アイロンをかけているうちに
随分と沖の方まで流されてしまった
振り返ると街の明かりが遥か遠くに見える
自分の家は海沿いにないから
さらにあの遥か向こうだ
すぐ脇には洗濯物が山積みされ ....
他に何もない日
野原にひとつ
屍があった
今にも、ストン
と落ちてきそうな空を
屍はただひとつで支えていた
誰が手向けたのか
頭の近くに
オオイヌノフグリが咲いていた
たとえ ....
木漏れ陽のような
小さな音を立てて
空論が机上に落ちた
静かに生む
静かに壊す
その繰り返しが
繰り返される
知ってる
ずっと昔から知ってる

誰からも
忘れられた窓があ ....
頬杖をついて
窓から夏が終わる頃の風
リモコンが息絶えた
まだ若かったのに
もうチャンネルを
変えることもなくなった
言葉にすれば
命は軽くなる
そんなことばかり

いただ ....
弟の息遣いが聞こえる
浄水場のある街に
敷設された線路を
今日も走っている
誰よりも足が速くて
誰よりも
列車の真似が上手だった

弟は皆から
関口さんと呼ばれていた
だか ....
深夜、冷蔵庫から
紙飛行機の
墜落する音が聞こえた
微かな音だったけれど
突然の出来事に暫くの間
中は騒めいているようだった
翌朝、扉を開けると
すべては終息していて
冷蔵庫の ....
夕刻、私の大切な床屋の店主が
営業を終えて鋏を研いでいる
今日は裏宿の常連が
髭を当てに来ただけだった
それでも夕陽の中
長年の日課として鋏を研ぐ

この夏最後の蝉が鳴き止み
 ....
幼いヤコブが死んだ
通りがかりの旅人が埋めた
弔いの言葉が添えられ
墓石の代わりに
ヤコブより背の低い
バス停の木が植えられた
幼い死の尊厳は守られ
旅人は旅を続けた

バス ....
雨傘の言葉
そぼ降る名前
閉じられていく風船は
わたしが作った
窓、その音と
旧スエズ文字の羅列
それだけで
終わらないように
海の便箋も
階段に添えた
日々の死に
追い ....
悲しみより澄んだ夜明けの
集配室から発出した文書が
まだ届かない、と
先方から連絡があった

わたしはベンチで
草のための列車を待ちながら
遅れがちの頁をめくり
しおり紐の形を ....
銀座に触れる、と
わたしの戸締りは終わった
暮れていく週刊誌を
めくり続ける侍の姿が
何よりも美しかった
誰かにそのことを
伝えたかったのに
みんなサーカス小屋に
入ってしまっ ....
朝方、目が覚めて
右手に話しかける
右手が最初に
目に入ったから

次に左手に話しかける
左手は黙って聞いている
右手も隣でじっと聞いている
手には耳が無いから
僕の耳で聞い ....
夏、街は
もぬけの殻になった
開け放たれた窓
ラジオから流れる雑音
駅前からも公園からも坂道からも
人はいなくなった

がらんどうの街路を歩く
私もまた空っぽになっていく
視 ....
のりものに乗った
小さな真昼だった
窓際の席に座ると
すぐ側には
窓があった
外は色彩豊かな
景色で満たされていて
足りないものなど
何もないように見えた
懐かしい誰かが
 ....
午後になった
扇風機をとめて
水を届けに出かけた
ひび割れた路面と短い影
歩く時も俯く癖があった
草刈の辺りで風鈴売りとすれ違う
音、聞いたのだからお代を、と
干からびた掌を差し ....
エビデンス
そう言うあっしは
カニでんす
でも本当はタコだったので
イカんともし難い、という
砂漠にすむ魚が
未明に見た夢の話
誰も知らない話
屋根のない部屋で一人
雨にうたれながら
朝食をとっている
ご飯も僕も水浸しになって
それでも今日の活力のため
食べ続ける

新築の家だったのに
とんだ設計ミスだった
隣を見る ....
ゴミステーションで
水色の捨て金魚を拾った
可愛がってください
という手紙が添えてあった
水槽も金魚鉢もないから
洗濯槽で飼う
上から覗き込むと
金魚は驚いたように
奥深くに潜 ....
繊維の構造に
光が降り注いで
戸惑ったわたしは
少しだけ早口になった

アジノタタキ、と
呪文を唱えた
日除けの帽子は
柔らかな海になって
凪いだまま
わたしの身体に
収 ....
給食の時間に落とした
わたしの唐揚げは
数十年も宇宙を漂っていた
「宇宙空間に謎の唐揚げが」
という報道で知った
写真を見ると確かに
あの日に落とした唐揚げと
同じ色と形をしてい ....
どうして
そのいろに
したの
はなびらといきた
あのはるを

+

あめの
かどをまがる
どこまでもつづく
くらげいろの
みず

+

ふうとうから
なみおと ....
○白めいた

色があった
君の白めいた指やその先
外海が言葉で満ちる頃
僕らは改札口で
無くしてしまった水棲生物の
欠片を探していた
でも本当は
最初からそんなものはなくて
 ....
冷蔵庫を開けると
あなたが中にいた
わたしと同じ話をするので
イカを取ってもらった
里芋と煮る
母に教わったとおりに作る
調味料の分量は
いつも適当でその度に
味付けが変わった ....
屋形船に乗りたい、と
あなたが言うので
わたしは台所に
船着場を作ることにした
ホームセンターや森で
材料を集めて
冷蔵庫は多少
使い難くなったけれど
何とか船着場が出来た
 ....
水のように眠った
連続する穏やかな
体液の水面
幾つかの色を見つけては
金属の味にしたがって
溶けていく
あなたが寒がるから
手袋とマフラーを買った
行く所がある訳でもないのに ....
砂漠のバス待合所で
君と雨宿りをする
雨は降っていないけれど
いつか降るのを待って
二人で雨宿りをしている
いつもこうして
何かを待っている
そして待っている間は
いつも君が隣 ....
椅子の背もたれに届く
夏の小さな雑音
子供になった父は
昆虫採集に出掛けたまま
帰ってくることはなかった
大事にしていた許可証が
風に飛ばされて
どこか遠くの海溝に
沈んでいく ....
あなたの耳の中に
階段があった
手摺はないけれど
転ばないように
わたしは一段一段
下りていく

一番下にたどり着く
幼いあなたが
膝を抱えて泣いている
もう大丈夫だよ、と ....
花野誉さんのたもつさんおすすめリスト(28)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
咳払い- たもつ自由詩6*25-10-3
オオイヌノフグリ- たもつ自由詩7*25-10-1
机上- たもつ自由詩10*25-9-30
水羊羹- たもつ自由詩12*25-9-23
浄水場のある街- たもつ自由詩5*25-9-15
昨晩見たこと- たもつ自由詩7*25-9-12
裏宿- たもつ自由詩8*25-9-8
幼いヤコブの死- たもつ自由詩825-9-4
真似事- たもつ自由詩8*25-9-1
プラスチック- たもつ自由詩6*25-8-28
フルーツサンド- たもつ自由詩16*25-8-23
夏休み- たもつ自由詩9*25-8-20
一瞬- たもつ自由詩10*25-8-16
のりもの- たもつ自由詩8*25-8-13
八月九日- たもつ自由詩13*25-8-10
Evidence- たもつ自由詩6*25-8-6
スウィート・ホーム- たもつ自由詩6*25-8-3
水色の金魚- たもつ自由詩7*25-7-30
アジノタタキ- たもつ自由詩6*25-7-22
隙間- たもつ自由詩6*25-7-16
からあず- たもつ自由詩7*25-7-12
COLORs- たもつ自由詩7+*25-7-6
母の味- たもつ自由詩6*25-7-2
屋形船慕情- たもつ自由詩6*25-6-18
優しい沈殿- たもつ自由詩525-5-26
いつも- たもつ自由詩4*25-5-22
青空の続き- たもつ自由詩8*25-4-22
迷子- たもつ自由詩4*25-3-21

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