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詩人は筆を選ぶと誰かが言った
釣り人は竿を選ぶ
今夜は憧れの渓流竿を落札した
宝石のような魚が呼んでいる
明日は雨だが深山の様子を視にゆこう
初夏の風に吹かれて
ぼくは睡魔に襲われた
李白と盃を交わし
{ルビ白酒=ぱいちゅう}を底まで飲んだ
青い瞳の舞姫は{ルビ胡旋舞=こせんぶ}を踊り
宴は興を増してゆく
李白は酔えば酔うほ ....
ゆらりゆらりと
漆黒の水底を泳ぐ孤独な生き物
彼らは輝く太陽を知らない
ぼくらは昼と夜が無いと
生きてはゆけないのだ
きみは渓谷のファイターだ
外来生物であるのに
上手く同化している
釣ってよし
食べてよし
新聞配達の帰り路
商店街の本屋で立ち読みをして
店主がハタキでぼくを追い払おうとした
芥川龍之介の短編を三作読んだので
もういいかと…
店主は咳払いをした
糸杉の生垣が植わっている坂道 ....
サルモ属には
キングサーモン、ピンクサーモン、シルバーサーモン、トラウトサーモン、スチールヘッド、チャムサーモン、アメマス、オショロコマ、イワナ、アマゴ、ヤマメ、アユ、ニジマス、イトウ、サツキマス、 ....
虹鱒はほっこりと
ヤマメはとても繊細で
イワナはホロホロと
みなそれぞれの味がある
ぼくは必要なだけで釣り終わる
素粒子はひとつの宇宙
この宇宙もひとつの素粒子
ぼくらはその集合体で
数えきれない宇宙をもっている
生死を無限に繰り返し
{ルビ縁=えにし}あるものと再び出逢う
生まれたものには必 ....
今夜は眠い
酷い不眠症なのに
何故か眠い
琥珀を飲んだら
眼が覚めた
来週はまた緑に溶けてゆく
透明な水をかき分け
鮮やかな{ルビ生命=いのち}を奪う
舌鼓を打つたび
一粒だけ涙を流す
突然の嵐に襲われ躊躇した
飲んで 飲んで 飲みまくり
今夜は酔いつぶれ
明日は本音を吐くから
信じてください何時までも
愛されて
十七年
妻は頬笑み
別れると
ぼくは涙を流した
光をいただき
空気をいただき
水をいただき
食事をいただき
愛をいただく
アマゾンの巨大魚
ピラルクを釣ろうと思い
ワイヤー製の頑丈な仕掛けを作った
これでは電車に乗れないので
少しコンパクトな仕掛けを作り
1mの鯉を釣ろうと餌を調合した
ひき肉とサツマイモと数 ....
紺碧の空のもと
緑の{ルビ渓=たに}に分け入り
髪より細い糸を頼りに
ときめく胸を押さえ
銀鱗が舞い踊る
鉛色の空の下
紫陽花が咲くのを待っている
そこにカタツムリが居たら
梅雨空も悪くはない
四季折々の美しさがある
普段は酒に肴は不要だが
今夜は鰹の酒盗を舐めた
こりゃいけない
酒がどんどんと無くなる
つい 追加購入してしまった
往き往きて
樹となり
水となり
渓に入り
命の重さを知る
宵闇に独りでそっと酒を飲む
これから雨の日が続くようだ
10日間の天気予報では来週の木曜日は晴れると
残念ながらその日は月に一度の通院日
{ルビ渓=たに}に入りたいが
増水で釣りにはならない
仕方がないので
髪の毛よ ....
きみという結晶は脆く傷付きやすい
透明な薄緑を纏った蛍石のようだ
ぼくは鈍重な鉛ようなのに
何故か妙に気が合った
初めて出逢ったのは渓流で宝石の魚を釣った夕暮れ
低温で溶けるぼくは直 ....
哀しくも
ぼくは詩人ではなかった
虚実を織り交ぜ
誰よりも大切な人を深く傷つけた
詩人ならば歓びを与えられたはずなのに
悲しいですね
人は誰でも独りで生まれ
独り死んでゆく
後ろ姿を追いかけても届かず
想い人が亡くなっても日々は変わらない
☆
楽しいですね
....
願わくば
五月の空に浮かぶ
羊雲になりたい
ぽかり ふわり
風に吹かれて
☆
強がりな若葉に誘われて
渓谷の流れに身をまかせ
透明な水に ....
風のささやきに誘われて
釣り人は初夏の{ルビ渓=たに}に分け入った
モスグリーンのいで立ちの彼は五月の若葉に溶けて
神経質な魚たちの警戒心を得ることはなかった
川面に近づくには音を立ててはいけ ....
初夏の風は柔らかく囁いた
緑の渓谷が呼んでいると
五月の魚たちは強がりだから
下手な仕掛けでは釣れない
明日は三時に起きて行こう
ぼくは森の中に生まれたような気がする
幼い頃から樹が好きで
朝は何時もの森を彷徨い樹を抱いた
今は木目を見ただけで何の樹だか分かるようになって
お気に入りの厚板を何枚も持ってい ....
初夏の風が渓谷の香りを運んできた
釣を止めて十七年が過ぎていた
改めて道具を確かめたら
釣り具には問題なかった
真夜中に車を走らせ
モスグリーンで統一した身支度をして
さぁ釣るぞ! と ....
何時か底まで酌み交わそう
人は時が薬になると言うけれど
ぼくには効かない
様々な記憶はあまりに生々しく
傷からは鮮血が滴り落ち
包帯を巻いても血が滲む
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