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起きたら形を保てなくなっていた。
持ち上げた腕がとろりと流れ、指は境目を失い、膝を立てようにも重たく淀む。なんとか頭を起こして身体の様子を見られるようになるまで40分近くかかってしまった。
記号が ....
明けようとする夜の裾を掴む手は 切れて汚れて私の手
朝の迫る 小屋の中で
瞼のない鶏が 夢を見ている
句点の間に
翔び 落ちて
読点の染みになる
それは
憧れ 贖い
取るに足らない
それでいて
代えのきかない
祈り
....
去年よりはだいぶましな10月と11月を過ごしたと思う。
たくさん捨てたし、いろいろなものをたべた。ベランダに出していた観葉植物を部屋のなかにいれてやると、とたんに空気がしめっぽくなる。
色 ....
詩は果てる?
男じゃあるまいし
じゃあ 言葉は気持を超えられる?
女じゃあるまいし、むりだよ
そんなことより
そんなことより眠っておいで
寒くてみじめで、女で男で、大きくて小さくて ....
甘ったるいパンケーキをたべ
昔書いた 鳥についての詩についてふたたび考える
コーヒーがビールにかわり、
それが香りのないワインに変わるころ、
街の全ては朽ち果てている
わたしが愛したコン ....
眠、覆い、考えられるかぎりのイメージ、それから細いタイヤ、太いキーチェーン、議事録、半円状の、氷、「実際よりすくなく感じられる」
どれくらい必要だろう?
どれくらい必要だろう、遠くなってい ....
あと2分しかないよ と言われて
あなたは詩を書きはじめる
あと2分、と言われてわたしは
あなたのことを愛しはじめる
安らかなのは
2分後に
ぜんぶおわるのがわかっていること ....
きみが夢をみているあいだ
僕は街中のあかりを消してまわる
きみがジェラートを食べているあいだ
僕は南のほうから暖かい風をつれてくる
きみが泣いて泣いて濡れているあいだ
僕はあたらしいハン ....
なんだっていいよと言いたかった
あなたがさえずるのが聞こえたから
音の羅列があれば
どんなことでも想像できたから
となりの部屋で
だれかにむかって
さえずる愛が
わたしにだけ聞こ ....
いみなんてずっと前からのこってない「かくこと」だけがここにあるだけ
転がって火のつく指に背に頬になんどもつめたい口づけをする
七七の拍子で揺れる夢だから 五七五はきみにあげるね
....
早く帰らなきゃと思った
あの午後に
わかっていた、
さみしいこと
あなたが
さみしいまま笑うこと
そうされるとどうしようもないこと
名前のない感情を
手近な恋でくるもうとす ....
愛の膝
まるく揺れる口づけをして
明日に向かおうとする小鳩たち
ひかって、まぶしいのは
どこにも触らずにまっすぐに落ちてきた光みたいな
きみの愛の膝
くらやみのひとつもない街でするなら明かりを消せる恋がいいよね
目をあけるとそこは世界で
夏は夕方のにおいがする
もうぜんぜんどこにも行けない、と思うので
玉子を買っておうちに帰る
涙のような夜があけていく
かたく結んだ祈りが破られていく
君のまぶたに塗られた祈りだ
本当に愛するつもりなんてなかったのに
ただ風が強く吹いただけなの
清潔な指のあいだで跳ねる闇
わたしはたぶん すべて失う
光から溢れ散ばる蜜の束 あの子の耳を少しゆらした
手をとめて見てほら部屋の隅にある 打ち明け話のなれのはて
あなたは長い間わたしの神様だったように思う。たまに来て笑って、ちょっと触ってくれる神様。見るたびに薄く透けるようになって、最後には滴る水になった。いまは、そして「あなた」という言葉になった。
ど ....
たぶん、文字に本当に重さがあって、わたしのなかにあるのだ。
文字が体のなかにないとき、軽くて、食べる必要がある。
あんまり文字が多すぎるとき、ものを食べられない。
人参を刻んで、夜な ....
遠くまで来たねと言うが それは嘘
散々愛して 行止まりだよ
底なしに冷えるからだとしゃぼん玉 愛されながら 高く飛べずに
欠けたようなよろこびが
胸におちるたび
あなたのかたちになってへこみました
愛だと言い切ればよかったね
宙にうかべたまま
少しずつすりへって
もう見えないのにここにある気持でい ....
また体の向こうがわで文字が跳ねている。戻っておいで、戻っておいでって思いながら見つめていると溶けて行ってしまう。さきに起きた娘が炭酸水をのみながら、まだ眠ってていーんだよ、と言う。やさしい。朝から ....
紫陽花を行きつ戻りつ濡れながら 中中あかない夕暮れのドア
明日のない身と知りながら夏椿 羽根のかわいた雛が飛んでく
風がいよいよつめたくなってきた
頁をめくるときがきた、と君が言う
ぼくは12頁めの一行めを読む
愛してくれるなら誰でも良かった
乱丁だろうか
次の行は暗く潰れて
愛して良いならだれ ....
あらゆる全部に値札がついて
かんたんに花をつむこともできない
ぴかぴかの看板を背負ってあるき
いちにち集めた小銭とひきかえに
やさしい、こまかい花を持ちかえる
世界はわたしを許したこ ....
おしよせる 一切の祈りを
ものともせず 飛んでいく
あおい飛蝗たち
届かないと知りながら
対岸へ跳ねた
少女だった 絶望だった
永久みたいな 夏も暮れかかり
ソーダの飛沫にも ....
おもいのほか
ながい旅になったね
と
きみが言うとき
夏はもっと熱くなる
もっと遠くへ行かれたね
と
言い合いながら
右往左往した
春や秋や冬を思い出すと
夏はますます長く ....
言葉も体と同じなので、つかわないとこわばる。動かしかたがわからなくなる。
さいしょはねじを巻くように、ぎしぎしと動かす。だんだん関節が動くようになって、のびやかになる。ストレッチ。何でも試してみ ....
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