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ぼくは女だった
夜に二人の侍女を従えて
杉の巨木が立ち並ぶ参道を歩いていた
崖に欄干がかかっていて
石窟が幾つも空いていた
ある石窟の前に来ると
礼拝をして中に入って行った
老人が一人
....
今日はオマエが氷壁から滑落して30年
オレは毎年この日に伽羅を焚いている
何故もっとオマエを止めなかったのか
記録を求めて命を賭けるのが解らない
あの酒席でもっと叩きのめしておけば
毎年この ....
サクリとトーストを{ルビ齧=かじ}り
ベーコンエッグ トマトにレタス アイス珈琲
マヨネーズは欠かせない
これがぼくの朝食だ
ふと…
朝方に見た夢を振り返ってみると
夢の中で夢をみ ....
故人を偲び
独り
骨を拾った帰り道
西陽がとても眩しくて
何も見えない
いっそあの夕陽に向かって
ふたり 空の果てまで行ってしまおうか
何時も一緒に{ルビ詩=うた}を歌っ ....
秋過ぎて
名残の風は
漂泊の
想いで刻む
たむけ花
{ルビ荼毘=だび}に付したる
{ルビ骸=むくろ}には
五色に浮かぶ
{ルビ懸想文=けそうぶみ}
てのひらほどく
文様も
....
伽羅の香を
独り静かに
聞く夜は
墨すりて
香る龍脳
沁みる夜
白檀の
甘き香りに
酔い深く
龍涎香
男はいざと
紅求む
やすらかな君の寝息をそっと聴き
独り静かにグラスを傾むける
まどろむ君に{ルビ詩=うた}歌い
もう一杯とキッチンに氷を求め
明日の天気を占った
酔い夢を…
否! 良い夢を
....
かくとだに
想いを馳せて
きみはいま
祈り捧げる
満月の夜
たらちねの
忘れた歌を
想い出す
今宵静かに
ぼくは歌うよ
あしびきの
夏に登った
山なみに
今はもう亡き ....
真夜中に
グラス傾け
訃報しる
酔い酔いて
一杯二杯
もう一杯
ウイスキー
琥珀は誘い
誘われて
あまやかな
味たる酒は
琥珀色
月の昇らぬ砂浜に
{ルビ唐紅=からくれない}の空眺め
忘れた歌を想い出す
衣を染めた{ルビ白鳥=しらとり}は
{ルビ空=うつ}ろな波に身をまかせ
{ルビ還=かえ}る{ルビ棲家=すみか}を ....
酔い覚めに
薄茶を{ルビ点=た}てて
{ルビ伽羅=きゃら}を聞く
子供たちが去った夕暮れの公園
鋼色の空に咲く
小鳥のような白木蓮
その一輪をきみにあげたくて
手を伸ばしても届かないもどかしさ
独りグラスを傾けて
想い出す 顔と顔
都会で育ったぼくたちに同窓会はない
車を出して
思い出の街を訪ねたら
空と路は狭く
商店街もなくなっていた
小川は埋め立てられ
桜並木もア ....
いまは無い
おでんの屋台
何処いった
焼き鳥の
匂いが誘う
帰り道
チャルメラは
スピード上げて
走り去る
もつ煮込み
野菜だらけで
吐息つく
コンビニに
行 ....
黄昏に
金の雨降り
幼子へ
みどりの壺に
骨を入れよと
泥沼に
もがき苦しむ
指先で
届かぬ糸を
手繰ろうとする
ブランコを
二人でこいだ
姉さまは
浴衣すがたで
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