あゝ、わたしの枕元に
瑞々しい橙を置いたのはだれでしょう
橙の一つ分、ちょうど掌に一つ分の匂いが
わたしを空に誘います
いつかの夕陽からこぼれ落ちた
橙が
たわわになった
樹々の間を ....
なぐさめるなんて性に合わないね
お酒に飲まれるなんてらしくないね
明日は雪らしいよ
都心はてんやわんや
去年はすごかったね
手すりに積もった雪が
滑り台からスルスル下る
でも背の高い花は ....
フルートを吹く君の横顔が
紙袋によく似ていたので
ぼくはおもわずクロワッサンを詰めたくなった
取手のない、閉じるときは口を折るだけの
簡素な作りのやつさ
官能をおびやかすものが
永遠に悩み ....
ドーナツ一つあれば
生きていける
午前に半分
午後に半分
真夜中に
真ん中を
あることと
ないことは
何がちがう
考えているうちに
眠ってしまった
蛇がいる
君の微笑む裏切りを
しんじず毒牙で首すじを吸う
キラキラと
瀬戸内海の橋である
入り日を吸い込み赤い息はく
音も無く
飛んで火に入る蜂の羽
そして泣いてるみ ....
午前、ノイズを盗んで冷徹
小さな鞄を持ったまま
君は長い廊下を駆け抜ける
振り向けば残像、夏の音
正午、チャイムに隠した微笑
摩天楼の隙間から
君は鋭い八重歯 ....
正論は正しいだけにタチ悪い
岸辺を撫でる
さざなみは
私にいくつもの
音を書かせる
川面で弾ける
きらめきは
私にいくつもの
色を撮らせる
私の中には
川が流れている
花弁を浮かべ
渡り鳥を ....
金魚がうちにきたとき、はやく死なないかなとおもった。
かならず金魚は死ぬので(わたしよりはやく、それはほとんど確かに訪れる)、早いほうが良いようにおもえたし、単純に生きてるものが、夫と娘と自分以 ....
一角獣が来ないかなあ、と思っている
全部解決するのになあ、と思っている
さっきから突っ立って待っている
一向に来ないので待ちくたびれている
乙女じゃなきゃだめかな、と思っている
確かに年を取 ....
寂しいのは怖いんです
心や
言葉まで
寒くなってしまうから
寒いのはいやなんです
子供のころの
冷たい雨に打たれた
終業式の日が思い出されて
通知簿を仕舞い込んで
悩んでいた ....
うそをついたり
ひとを泣かせたりして
パンくずを集めている
刺さりそうに白い
陽だまりをよけながら
ぼくの愛がはしってくる
うけとめよう
とすると
パンくずはみんな舞い
いく ....
次の面接は
猫の事務所
氷河期だから
買い手市場だ
面接官は三匹
目つきの鋭い黒猫と
まだら模様の虎猫
そしてスラリとスタイルのいい
ペルシャ猫
お土産のつもりで持参 ....
ええねんで。せやかて工藤!ええねんで
信仰はかつて宗教。今科学
動悸する?僕の体と同期して
二十歳過ぎ振り返るほど何もない
ああ酒が酒が飲みたし飲めぬ今
俗人の二言目には ....
遠い
在るものすべて
遠い
言葉は浮遊し声さざめき
(意味と響きは解離して)
通り過ぎる人、人、人
わたしは母語を失って
記憶の像にうっとり沈み
遠い
在る ....
昨年の12月4日に初めて投稿させて頂いてから、1ヶ月私にとってあっという間の充実した時間となりました。
それまでは、詩を書かかれる人に自分の書いたものを読んで頂いたことなどはなく、閉じた自分の中 ....
ある日
細胞が
繰り返し若返り
我々は
死
を超越した
死なないというのは
こんなにもハッピーで
喜びをもたらすものなのか
誰もが思った
し
かし病気には ....
「ちょっぴりゼツメツ寸前の詩をめぐる冒険◆詩をへだてるベルリンの壁」https://po-m.com/forum/showdoc.php?did=339862&filter=usr&from=list ....
空気の感に誤魔化されると
いいねの基準が分からないんです
あなた本当にそれが本当
ブレの渦が鳩尾に
大きなお世話です
みんな大好きです
表裏一体の
垂れ流し社会
ソサエティは散 ....
一月一日、お正月。軒さきを小さな人がとほつた。
岬の根元にある町の上に、夏の海のやうな空がひろがつてゐる。
中学校の音楽室で、若い先生がバッハのオルガン曲をひいてゐる。
春には結婚す ....
死ぬものは死ねばいい
医療が進歩して、死ぬべきものが死ななくなってどうなったか。
災難に逢う時は逢えばいい
技術が進歩して、災害を防ごうとしてどうなったか。
....
ぜんぶ、紙吹雪になったらいいのに。
そう呟いた人から順に紙吹雪になっていく。
街は君の涙を無感動に見つめていた。
僕達の毎日は、いつまでたっても世界に届かなくて、
幸福な朝にだって白い孤独がち ....
僕に関係の無い人が笑っている
僕に関係の無い人が泣いている
僕に関係の無い人が風に揺れている
僕も少し風に揺れながら口を開けて
あの日のことを思い出そうとしている
あの日、が何のことなの ....
鮭の皮は
「きりみのような方と 先の程まで銀色の 煉々は死んじゃったの後の先…」
好きだから 最後に残したんだよ 解説はマイ箸
飲み込んだ爪は
「わたしは わたしとなり わたしの ....
犬も歩けば棒に当たるというけれど
今朝から当たるべき棒が見つからないし
君が大切にしていた犬は
もうとっくにこの世にはいない
手を握り
お互いに年を取ったね、と笑う
話したいことは ....
みぎひだり ほろけた蝶 比翼と過ごした私と猫と
靴ひもを 結ばぬ怠惰に 縁丸く濃紺に矢継ぎ早な窓辺から
線路沿いに不明な景色のなか
命ひとつを浮かせて身から剥がし終えたと
ひととせを十は巡 ....
うらぶれた母屋の近くで
朽ちていく頼りない樹木に
果物が二つも実って
どちらかは甘くなれない
かつて生活があった土地に
ヤクルトの容器が風に転がり
明るく後に暗い空を
椋鳥の群れはう ....
海の色が黄土色だったのを見て
僕はそらが分裂するような眩暈におそわれた
やまももを今朝、摘んでから胸ポケットにいれたことも
忘れ果てて、じんわりと果汁が胸のなかにひろがっていた
目が覚めて ....
ゆるやかなかたちをした盆の夜に
引き離された電信柱は
ふるえる蝉の叫びを聞きつつ
ただひとり
とーん
と、立っているのであります。
向こうの小路の小さな光は
いったいどいつのあかりで ....
おにいちゃんの夢を
巻きとった滑車が落ちて
あたりは一面トルエンの泉になりました
うつくしい場所です
眠っていると
肩にとまったツイバエに憑りついて
3秒前のことはぜんぶ忘た
....
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