彼の郵便受けに「人間合格」の通知が届いた
差出人の名前はなかった
太宰治の「人間失格」なら知っていたけれど
人間合格っていったい何だ?
その封書を開いてみると
便箋一枚に手書きで書かれて ....
暑い8月さなか
フラダンスレッスンの見学をしていて
ほとんどがおばあさまなんだけど
波
風
花
ご挨拶
足元や腰
肩から指までの動きが
たおやかでおだやかで
いつまでも見ていられる ....
お義母さま
あきの こごえです
朝風に 精霊バッタの羽音が
そっと 雫を 天に すくいあげています
何が終わったのでしょう
もう はじまりはじめの空
むかしむかしの反対のはじまりのはじ ....
基準は一(はじめ)
石川啄木の本名だ
稲穂が風に揺れて
餓鬼道に落ちぬ為
私は歌を歌う早朝
オフを楽しめない
私はウルトラマンレオの
再放送しか楽しめない
保育園に通うと
芭蕉の木が ....
人混みの人に飲まれて見失う自分自身の存在価値を
真夜中の公園ベンチに座ってる人の幽霊なってみたいよ
さぁ何でそうなったかはわからないよがる女によがらせる俺
勃起する自然なんだよ愛より ....
呼ばれて振り返ると誰もいない
名前を呼ぶ声がしたはずなのに
気のせいか
あるいは他所の人が呼ばれたのか
停留所でバスが来るのを待っていた
百貨店の大きな建物の前だった
黄昏がその幕を垂 ....
適当に引っ張り出したTシャツから
今は使っていない柔軟剤の匂いがする
どうせ乾いていく通り雨の先
住宅街の暗闇でこっそりと線香花火に火をつけて
笑い合っているうちにぽとりと落ちた
光の ....
今度から天使を数える時は一人二人三人じゃなくて
一羽二羽三羽と呼ぶことにする
私は不感症でも不眠症ではないとおもうけど
夜は
寝つきの悪い女だったんだ
だから
ずっと羊を数えてきたけれど
....
○「ユーモア」
年を取れば取るほど
ユーモアが必要だ
それだけ悲しみが
多いから
○「川柳」
シルバーが
シルバー川柳読んで
他人事のように笑っている
○「自殺」
死に急ぐ ....
この体の表面
内部を包む皮膚には、呼吸をするために必要不可欠
微細な穴
他にも穴、穴、穴
匂いを嗅ぐ鼻
音を捉える耳
飲食の為に用意された口には
人間の意思や感情を外部に伝達するため ....
恐竜の高さのビルの二階階段踊り場で
二段階右折を見降ろしていることに気づく
早朝さんざめく目眩(めまい)の驟雨は
作られた樹々の明日を生かそうとする
寂しい風がゆったり ....
覗き込んだらがらくたばかり
俺の中身は
何だかまるで壊れた玩具を仕舞う箱みたいだ
お前の事使えないってみんな言ってるぞ
職場の上司に毒舌吐かれた
みんなって誰と誰と誰なんだよ
聞いてや ....
照明に
濡れた花びら目を伏せて
選んでほしいし、忘れてほしい
恋しくて
声を凍らす粉雪に、
降られた鼓動は、自由を奪われ
純粋を
このワンピースに飾りつけ
まるで地吹雪 ....
自分だけが
未来を選ぶような
青春のポジションを
守りたくて
買い戻した切符で
どこへ行くのか
人のいない海は
なかった
音のしない花火は
なかった
ざわめきの中を
....
北の
夏の終いの翡翠の海に 金の夕映え
ありまして
黒い夜 黒い波が
どこからか押しよせてくるのです
どこからか
ひえてゆく 色とりどりの浜辺でね
赤いカーディガン羽織った ....
トモダチはいません
トモダチはいりません
私は人生に大きな損失を抱えています
トモダチはいりません
と言う
捻れた心を持ってしまいました
そんなひねくれ者には
当然の報復として
....
咲いていく花の隣で
枯れていく花の測定
小さくなった体は
人も同じで
最後の匂いを
誰に残すか
花は何も選べずに耐えた
人は希望をひとつ許された
化粧ポーチの中に
赤い口 ....
何者かに肩叩かれて目が覚める
誰も居ない夜闇に腐臭が漂って
布団のなか嫌な汗かき死を拭う
死んだ恋、
僕の命という顔をして
こころのなかを転がっている
夜空には
青空かくす闇があり
雲を剥がすと、こっそりみえたよ
遠くから
聞こえる歌は花びらを
かすかに震わせ ....
私はあなたみたいになりたいの、
っていうと、あなた、
うつむいて、笑ってたね?
何を言われても、黙って、笑って
芯はつよくって
人をあたたかい気持ちにしてくれる、
あなたの言葉 ....
僕のちいさな時間をかえしてほしいんだ
双眼望遠鏡に閉じ込められたほんの僅かな視差を
星雲の光年には追いつけやしないけれど
僕たちは自分のひかりの速度をもっている
パラダイスには遠いが自 ....
月に行く夢に沈んで死の予感
漆黒に光る波間に浮かぶ声
枯れ葉舞う夏曇りの空の下
宇宙の武勇伝に気をとられて
鰻と共に忘れる何か
稲穂を渡り行く風
極暑が緩んだ夕暮れ
遠花火の記憶の重なり
ジミーでも思い出せない
ルーチンワーク
差の女がつい視界に入る
レジは半ズボ ....
わたしを壊してとお願いすると
あなたはもうとっくに壊れている、と耳を噛むのね
ひもじくてひざこぞうのカサブタを
食べた記憶をくちづけたら
眉をしかめて吐き出さないで
わたしそのものを
....
更年期だからもう卒業させて、と嫁さんに言われた。摩擦で粘膜が痛くなって耐えられないの。
それがセックスを拒む理由だった。
突然の卒業宣言に私は戸惑った。
男の性欲は簡単には終了日を迎えられない。 ....
おとうさん
おとうさん
ね、なぜ泣くの
わたし 涙も出ないで
ゴミを見るような
凍える目をしていた という
金色の夕日が差し込んで
葉っぱが
秋色に染め上げられていく
一 ....
この地球が何一つ前兆を現さずに
突然
引力の全てを失ってしまった
あってはならない事態が起きてしまった
もはや地面にへばりついていられなくなって
宇宙に飛散していく有り様に
全人類を代 ....
むせかえる
ような菊の花びらの
においもみえる気がする水浴び
きがつけば
あなたが誇る正しい孤独が
穴ぼこだらけのコップにみえだす
草いきれ
とおい雷鳴、夕焼けが
ビル染めると ....
今、息をしている命
今、感じている命
今、考えている命
今、悩んでいる命
それぞれが、
今、命の鼓動を感じて
生きている。
命が今を生きている。
命が今を生きている。
見栄張 ....
いまおもえば
恋人だったようなひとに
レイプされていて
いたくていたくて
ともだちのなまえをさけんだら
もっと興奮させろと
はたかれるのだった
腕は血まみれになって心臓が痛いのだった ....
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