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花がしづかに揺れてゐる。
その横に小さな言葉がおちてゐる。
姉さんがそれをひろつて、お皿にのせた。
子供たちは外であそんでゐる。
まぶしいほど白いお皿に ....
薄曇りの空を浴び
錆びたトタンが発色する
剥げかけた というよりも
薄い金属の表面を
浸食している赤ペンキ
腐蝕しながら
守るべきものを阻害していく
かつては輝きそのものであり
....
みどりいろした
星をなぞる指先が
燃える
やわらかい
歯をたてては
めいめいにいのって
慈しむ紺色、宙をけって
絡まるいばらが
すきとおる喉元で
ひろいあげた木の葉の
ささやかな屈 ....
一直線に伸びた微粒子の放出
光りは彼方へと繋がり
藍色の権力は力強さと共に形を残す
過ぎ去る景色
そこには風がなく
過ぎ去る感情
そこには母の優しさが無い
やがて果実は実を開く
....
影かすめ
ふり返り だれも
――夏よ
荒ぶる生の飽食に晒された{ルビ石女=うまずめ}よ
あの高く流れる河を渡る前に
刺せ わたしを
最後に残った一片の閃光をいま
仰向けに ....
真夏の太陽が
目に厳しい午後
思い立って
アスファルトの上を
走ってみる
全力で
走ってみる
緩やかに
変わっていく景色
穏やかに
蘇っていく記憶
息が切れて
走れなくなった時 ....
空の城址、たてがらの
緑照り映え、草いきれ
この八月の末に吸い込めば
穢土の悪臭、一度ならず二度、三度
襲い来るのは必定にしても
透明な緑の叡智の詩想の許に
たてがらの空の城を現にせんと
....
彼方から雨が降ってくる。その雨たちを束ねて
鋏で切って海を千切りたい。鎖につながれたこ
の心は固まったまま四角の水槽を往来している。
夢を見ることも赦されずに、花咲く季節も見れ
ないまま私は歳 ....
光りが照らされる白い葉に
運命の蒼い一筋の水が滴る
鼓動は動きを忘却し
風が南に向かって吹き始める
私は沈む
私は沈みゆく
底に溜まった感情は
肉を膠着させ
出口を求めて彷徨う
....
廃線になった駅のベンチに行ってください
コスモスが揺れているのがみえますか
だれもこない駅の伝言板に
「おかえりなさい」とだけ 書いておきました
ベンチの下に 海の紙でできた封筒を隠し ....
牢であり城である街を浪が洗い
壁から瀧があふれている
奴隷の子と皇女は手を結び
錆びた真昼の水たまりを踏む
呼吸が
忙しく他者を連れ去る
水の底の 舌のようなもの
....
総合病院からの帰り道
うねる熱気を
振り払い
見据えると
真っ青な空と
混じり気のない雲
数えきれないほど
見てきた光景は
なぜか
少しだけ
生気に溢れて
眼前に現れた
見つめ ....
風鈴の音など聞きたくない
汗ばむ額が太陽を拒否するけれど
乾いた足の裏は砂を求め
軽い目眩を歓迎する
蝉の鳴き声に起こされて
この上なく不機嫌になり
八つ当たりする矛先を見つけられず
....
苦しくて苦しくて
もうここにはいられないと思った時
見あげた空に、火の鳥が飛んでいた
あの鳥は私に見せたのです
すべてをまばゆい光で 照らし
この世こそが 天国だということを ....
まだ強い日差しを俯く花のように
白い帽子で受けながら
歩道の向こう
小柄な婦人が歩いている
ゆれるバッグの中で
小さな鈴が歌っている
{引用=――しゃらん しゃららん}
たったひとりの{ ....
共に過ごし
波のように
恋のごとく
ゆらいだ歳月の不確かさ
と確かさの、
月が半月で
表裏のよう
相反するおもいの
春めいた
花びらが落ちる、より
忙しく接吻し
....
夏の日差しが音を立てて崩れてゆく。
音楽は鳴り続けていた。
誰かの後ろに隠れているのは誰?
曇天は私の心模様に似ている。
誰かの奏でる音楽に耳を澄ませていた。
時折見せる ....
わたしの詩は、わたし自身
偽ることはできない
魚なのに鳥の詩は書くことはできないし
苦悩に暮れているのに
歓喜の詩は書けない
逃げることも
隠れることもできない
本当が体現される ....
夜は窓を踏み
窓は夜に座す
がたがたと
風のふりをする亡者
記憶は波の上に居る
はばたきとくちづけをまちがえる
羽のような蜘蛛の巣があり
風を抄い 揺れつづけ ....
季節は 夏をわすれて
夏とも秋ともいえない
空白の季節がうまれた
夏をさがして 野山をかけても
秋のみのりの かげりを
みつけるばかり
朝おきて そらをみあげると
いいし ....
黒焦げのアカツメクサを労うように
レースフラワーが風に揺れ
夏が終わると歌っている
排気ガスまみれの分離帯にも
芽吹いた種は繁らせた
波打つ夏の色
色褪せた空のキャンバスに
ぽたりと ....
{引用=夜明けのこない夜はないさ
あなたがぽつりいう}
懐かしい歌が
あの頃の私を連れてきた
そして今の私が唄うのを
遠い窓枠にもたれて
聞くともなく聞いている
夜のはてない深さと距 ....
大時計の針の上で寝そべる
空の瑠璃色を映す
湖の波紋が 夜の膜のように拡がってゆく
その浅い水の褥のうえには
夏に日焼けした物憂げな表情が
よりいっそうに青く映り込んでいる
その細ながい胴 ....
あァ、
もうこんな時。
刻限を忘れるほど
夢中になっていたか
あっという間だった、なぁ。
顔上げれば一面炎のよう
夕日がきれいで
朱色に染まる体
泪は無色
なんで色付 ....
しろい光をうけて
まぶたを閉じた
過ぎ行く夏の
忘れもの
瓶の中の南の島に
寄せては返す波
貝殻に耳を澄ませば
懐かしい故郷の唄
星よりも遠い
あなた
面影を抱 ....
(ねむっているように、うつろに開いて
よこたわっていても、私には見えてる)
瞬きで合図をくれていた
感情もなぜかくみ取れた
そんなにあふれていたんだね
枕元にたくさん落ちていたよ
....
真夏にふる雪をみたいと
きみはいう
北アルプスの上高地へゆけば
雪はみれるよ
とぼくはこたえる
きみは
この高層マンションからみえる
みにくいものや
よごれたもの ....
哀しみは、この駅の1番線に到着し、9番線から出るという。無人駅は、待つ人は疎らで、降りる人ばかりがやたらに多い。1番線にやって来る列車は日に何本もあるが、9番線からは滅多に出て行くことがない。俺はそん ....
最初とりとめもなく
かわいた歩道にうずくまる影を
そっと押さえただけ
絵本の中の魚を捉えた
子猫の白い前足のように
半眼で
光の粒の粗い朝だった
明けきらぬ森の外れ
木漏れる光にふ ....
朝はきて指にささくれ
やわらかい油を塗って雲は湯立ち
居残りの夜を掃き出して
開ける窓の軋む音
夏に 朝に 街じゅうの轍に
わかる 私は
くっきりと弱い
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