クジを引いて、中をみたとき消えるもの
花が咲いて、そのとき消えるもの
求めて求めてやっと辿り着いて、消えるもの
氷でできたグラスが消える
名のない匂いの記憶が消える
人には言えない重 ....
背中あわせに立って あるきはじめた
ふりむきざまに 撃ちあうこともなく
ふたたびは相まみえるはずのなかった
もうひとりの わたしとの
決闘が 用意されている
時を刻むより他に
自分にはすべきことがあるんじゃないか
時計は思った
けれど何をしようにも
手も足も出るわけがない
ただ柱にぶらさがって
そこはそれ時計の悲しい性なのだろう
正確 ....
世界のフィーリングで今ぼくは奇跡
よく聞いてよ星のくしゃみを
ためいきがピンクになるまで愛し合う
カーテンを閉めるまでの人間形態
×と書かれた改札にも入 ....
昼寝から目覚めるとぐるり真っ青になっていて
真っ青になっていてでんぐりがえった僕の眼球
眼球から涙は流れず一滴の血もこぼれない
かなしみ
僕は何しているんだろう?何もしていない僕のほころび ....
夏休み
街から人はいなくなった
窓という窓
木陰という木陰
ベンチというベンチ
そのいたるところから
少しの匂いと
体温を残して
静寂、というには
まだわずかばかりの音 ....
風も木も滅びゆくときわれもまた等しく愛に抱かれて過ぎよ
降りしきる雨でおまえの声は途切 れ遠い異国である公衆電話
たった今、落ちた花びらだけ見えたった今見えなくなったただ風 ....
どうしようもないくらいの
空の返還が
わたしに帰ってきた
わたしの唇は青いことでいっぱいになる
空に着歴がある
それは長い長い数列
雲は遠くの蒸気と会話したりするけど
やがて話が尽き ....
気温が下がると
外が気持ち良さそうに
ほどけているので
わたしはサンダルを履いて
恐る恐るドアを開ける
群青色の夕方
白いお月さま
ここはどこですか
自分のことを忘れ
感情を ....
「森のゲリラ宮沢賢治」という本の中で、西成彦は、宮沢賢治の創作スタンスとして「注文」を受けると言う在り方が「キーワード」だと述べている。
前回、井上陽水の「ワカンナイ」でも、「雨ニモマケズ」の「心 ....
Blue Sky
僕らが愛と呼ぶもののすべてが真実でありますように
僕らの幸せが誰かの不幸のおかげでありませんように
僕らのパズルはこんがらがっていつまでも解けない
このまま解けな ....
覚えてる
迷ったときの指先のちょっとした仕草とか
暑い室内でむっと漂ってきた身体の匂いとか
正午、君がサイレンの口真似をすると
僕らは作業を中断して
いつも小さな昼食をとった
今日 ....
空中に放り投げたる自転車の車輪の下の花びらが好き
背景として描かれる枯野にてかんざし拾うそれはゆうやけ
水没す古代遺跡の燭台にふたたび炎が灯る邂逅
風邪薬ばらまく園児裏山 ....
午後十字に花枯letter
リリー (腐乱したレイニーの霊に)
僕ら水銀体温計で空を飛ぶ
糖分過剰のアスピリンの月の雫を
静かに明日のカップに受けて
リリー (灰も蝋も凪 ....
石炭を掘りし祖父らの手のひらにひとすじ青き川の流るる
コーヒー店ここにあるぞと言う父の初恋よぎる遺伝子の夢
をさなごと眠る畳に健やかな妻うつくしき秋の遊具も
弟は真夜中銀 ....
脳みそが痒いな
朝から痒いな
のこぎりでギリギリと開けて
痒いところを掻きたいな
掻いたら脳みそぐちゃぐちゃになっちゃうかな
ぐちゃぐちゃになった脳みそは味噌汁になるのかな
....
道路の端っこに弟が寝ていた
こんなに寒いのに
と思いながらも弟らしい寝姿に
つい笑ってしまった
半身を起こし後ろから両脇を抱え
ズルズル引きずる
小さい頃はよくおぶったものだ
気づかない ....
てのひらにドアを取り付けた
白くてとても素敵なドアなので
一度遊びに来てください
と、旧い知り合い数人に手紙を出した
一通が宛先不明で戻り
それより早く金を返せ、という返事が来た以外は
い ....
心臓は崖へとつながっている
推定二百メートル
くらいでしょうか
そこから下を覗きこむのも可ですが
寧ろ僕は
ヤッホー
の魅力にとりつかれいつまでも
ヤッホー
ヤッホー
と繰り ....
寒 椿 迷 路 の ご と き 義 母 の 髪
約 束 を 破 り し 枯 れ 野 後 悔 や
梟 や お ま え の 瞳 に 映 る 森
み ぞ れ 降 ....
下駄箱の中
君はいったいどれくらいの間
神と呼ぶものに祈っていたというの
十七歳だったころの
愛されていた少年よ
牛皮の匂いがする両手で
夕日のたまごを包み込んで
バ ス 停 で 誰 を 待 つ の か 時 刻 表
ダ ム の 底 校 舎 の 上 を 泳 ぐ 魚
婚 姻 の 日 も 沈 み ゆ く 夕 日 か な
ふ ....
毎日涙を流しても平気だと言うな
叶うか ....
銀河の向こうには
銀河を超えた何かがある
造られた自然がある
華奢な蜃気楼がある
あの星の向こうには
広がる星空がある
傾いた調理場がある
晴れ時々夕立がある
夜の向こうには
....
休みの日前。午前七時位まで調子に乗って起きていた。
かみさんが俺の休みなのを知って、娘のカイリ保育園を休ませた。
午前中にカイリが起きて騒ぎまくっていた。
俺は眠くて機嫌が悪く布団からカイリ ....
寝転んで椿に話しかけるとき午後の紅茶もすでに冷たし
海のない地表の上を航海す既に明日も干乾びている
夕映えの冬の湖凍りつく阿修羅のごとく人生は鬼
バランスをなくしたきみは ....
すてきな
漆塗りの木の椅子に
画廊で座る
ご主人は魔法使い
みたい
椅子はお尻の部分が
固い木で
柔らかい不思議
肩が凝りがちな僕
でも
背筋に
木の中を水が通るよう ....
庭の木にセミの抜け殻があった
手にとって握りつぶすと
ぬちゃ
それはセミの抜け殻ではなく
抜け殻のようなセミ
もて余した僕はこっそり
ぬか床に隠してしまった
夕食の時
今日のぬ ....
北風はものごとを深く考えません。単純で、勝手で、自由なのです。
(ぼくは生きてるんだ!)
北風がそのことに気がついたのは、高い山を駆け下りているときでした。それまで北風は、何ひとつ ....
『紫苑の園/香澄』
松田瓊子著 小学館文庫 ISBN【4094044116】 733円
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4094044116/24 ....
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