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八月の暦に耳を押し付ける少年いつしか海原のうへ
生い茂る真緑の原に埋もれゆく廃工場に響け恋歌
遠回りで帰る夜道に横たわる近道えらびし野うさぎの母
飛行機を追うてふもとの村 ....
われ先にわれこそ先にと同じ日に蒔かれた姉妹の朝顔の咲く
狩りそして狩られることの無き国の王女の不在のごとき静けさ
水中を沈みゆくバス、運転手、乗客らみなほほえむ夏日
コン ....
遠き田の隅に孤独は佇みて親しきわれの呼ぶ声を待つ
白きゆり手折る微々たるゆびさきの力でわれをあやむるおまえ
君が代をふたりで唄うさつまいも甘き田舎の夏の縁側
....
風も木も滅びゆくときわれもまた等しく愛に抱かれて過ぎよ
降りしきる雨でおまえの声は途切 れ遠い異国である公衆電話
たった今、落ちた花びらだけ見えたった今見えなくなったただ風 ....
空中に放り投げたる自転車の車輪の下の花びらが好き
背景として描かれる枯野にてかんざし拾うそれはゆうやけ
水没す古代遺跡の燭台にふたたび炎が灯る邂逅
風邪薬ばらまく園児裏山 ....
石炭を掘りし祖父らの手のひらにひとすじ青き川の流るる
コーヒー店ここにあるぞと言う父の初恋よぎる遺伝子の夢
をさなごと眠る畳に健やかな妻うつくしき秋の遊具も
弟は真夜中銀 ....
寒 椿 迷 路 の ご と き 義 母 の 髪
約 束 を 破 り し 枯 れ 野 後 悔 や
梟 や お ま え の 瞳 に 映 る 森
み ぞ れ 降 ....
バ ス 停 で 誰 を 待 つ の か 時 刻 表
ダ ム の 底 校 舎 の 上 を 泳 ぐ 魚
婚 姻 の 日 も 沈 み ゆ く 夕 日 か な
ふ ....
寝転んで椿に話しかけるとき午後の紅茶もすでに冷たし
海のない地表の上を航海す既に明日も干乾びている
夕映えの冬の湖凍りつく阿修羅のごとく人生は鬼
バランスをなくしたきみは ....
身 を 任 せ 川 の 流 る る 渓 谷 や
冬 の 雨 宿 る 旅 人 つ ゆ 知 ら ず
さ わ る 脚 さ わ ら ぬ 脚 の 炬 燵 か な
冬 座 敷 少 年 ....
イカロスときみに呼ばれた五月から芽吹きだしてる背中のつばさ
滑走路駆けるあなたを追い駆けて追い駆けられて閉じてゆく恋
鋼鉄の翼たたまず夜を待ちどこへ飛び立つ思春期の冬
無 ....
バス停で君を待ってる手の平に人とゆう字を千回書いて
鉄棒に逆上がりして校庭を空へと落とすサッカー部員
難解な数の定理を飛び越えてブッダのように眠ってるきみ
教科書の隅に落 ....
朽ち果てた夜行列車の寝台に
寝転んで星空を見ている
至るところが錆びていて
天井屋根はぬけたまま
よじ登る君はそのまま戻らない
仲間たちもどらない
まるで夜だ
屋根裏部屋で見 ....
今日、雪が降らなかった土地に
雨が降る
今日、晴れなかった土地が
曇り
曇らなかった土地が
晴れる
起こらなかったことも起きたことであり
起きたことも起こらなかったことのなかで
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