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秋晴れの
空に、境界線
……らしきものが浮遊している
長いのも短いのも 互いに絡まり合って
私は 時期外れの薄着をはおり
アイスクリームを食べながら人 ....
ながい階段が その夜
わたしの内に滑らかに延び
喉の辺りで途切れていた
笑えるほどにせせこましい
悲しみなど疾うの昔に
桃色の床で何者かに
踏み ....
把手こそついていたが
その壁は 扉ではなかった
今のわたしにはそれがわかる
たわわな果実のように 美しい 直方体の
寂寥だけが 向こう側の 壁際に置かれている
....
玩具は既に壊れており
木張りの床に見棄てられていた
夕陽から親しげな香りが溢れ、
窓辺に置いた花瓶に纏わりつく
私たちは 壊れていた 跡形もなく
{ルビ抑=そ ....
天使は窓の縁に座り
少しずつ透き通り 外の闇と
見分けがつかなくなってしまった……
バッハの遺した鮮やかなコラールが
床の木目に 僅かな痕をのこした{ルビ後=のち} ....
青い葉が何枚か
あなたの肩に貼り付いている
後れ毛に似た愛おしい季節
小石たちが燻らすモノクロームの薫り
雨が降りそうなことは 少し前から
私にだって ....
狭い横丁の
ひしゃげた道路標識が
ともすれば我々だったかもしれない
食道の内壁を滑るような時間を生きて
人目を避けながら 遠い未来を思っていた
驚くに値しない
あなたの指のなかに
古い町がひとつ埋まっていようが
青い部屋でわたしは 静かなチーズを齧る
散らばっていた 丸い 悲しみの粒を
一列に ....
あの後、わたしたちは
ふたりで 雨の骨をひろった
萎れたすみれの花に似せて
造られたかのような
蒼い 夕暮れ
果樹園の頭上を滑る鳶の影
廃材が積まれた惨めな河辺
男がトラックの荷台に腰掛け
たばこを吸いながら私のほうをみている
私の人生から消えていったあらゆる者たちが
....
昨日の小さな咳が
その椅子の陰で
私たちを見上げている
物欲しそうに 実を言えば
見知らぬ女の口の中には
汚い野犬の歯が並ぶ
白い歌をうたう
わたしは悲しくない
わたしはあなたを愛していない
疲れた笑みのような夕暮れの町
静かな木板に穿たれる曲がった釘
汚されたシャツのために
....
きみに
話しかけることができない
脈をうつこめかみに手をふれて
ひとつめの言葉をさがしているのに
どうしても話しかけることができない
うまれて初めての夜がきた ....
左脳のなかに
右脳が休んでいる
縁石に腰かけ、私たちは
玉砂利をつかった遊びに耽る
あとほんの少し風向きが変われば
瞼の暗闇にともされた炎のかたちがわ ....
柄杓の水は
揺れていた 一つの言葉のように
だが青い空の深みに俯き
だが石たちの慎ましい薫りに愕き
私たちは 黙っていた 私たちは
小さな山羊たちが
ぬれた坂をおりていく
夕暮れ時は、浜からの風が
舞いあがる砂と 金いろに踊っていた
こんなことも すぐに わすれていくのだろうが
私たちは ....
春のうえに あなたは
静かな芝生を残していった
私は眠りたい
私はもう、何も歌いたくない
建物の影が私たちを押し潰す
月の光が埃のように降って落ちる
あ ....
長い雨でたわんだ箱に注がれ
わたしたちの影は混合される
飛沫は獰猛なひかりを二割ほどふくみ
素っ気ない白衣などに 付着する 未練がましく
そして だれもが わたした ....
{引用=––フレデリック・ショパン「夜想曲第六番」に}
球
それはひとつあった
それはさっきまでひとつではなかった
あるいはこれからひとつでなく ....
そらのいろはいつしか
こわれやすいビー玉ににていた
むらさきの焔をあげる焼却炉の
そばにたって、あなたは体を温める
それは遠いところへいくための
慎ま ....
明るい部屋に棲む薄暗い老女
出来損ないの散文に似た服をきて
皺のよったビニールじみた手には
何が為拾ったか判らぬ小石を力なく握る
愛してきた者たちの瞳にもう愛はなく ....
長い歩道が
河馬のようにみえる午後
男はあおいホースで車を洗っている
ふたりの老親と数十万程度の借金と
慣れ親しんだ不眠とが彼の歪な肩に載っているが
飛沫のな ....
橋の上に
貴方以外の人が居ない
只、雪と泥ばかりが撒かれ
汚れているところを引摺っていく
ながく、頑是ない、貴方の靴
雨はいつ止むのだろう
あなたの柔らかな胸のなかへ
いっぴきの野犬をときはなちたいのに
この雨はいつになれば止むのだろう
決意にみちたやさしさよ僕を睨め
凪より ....
あまい針を舐めながら あなたは
世界の骨に温かな肉がともされるのを見ていた
だれかがあなたの内側に積もった雪を道の傍に退ける
そしてもう一人のだれかがその雪をさらに傍に退 ....
四、
という数字は
光線に貼付きやすいのかもしれない
高架橋のナンバープレート群が何故か
西洋の婦人画をおもわせる夜、
わたしの精神はまたひとつ
緑色の ....
半刻ほど前から
組んでいた指をほどいて
あなたが落とす銀箔に似た笑み
ガソリンじみた水溜まりにひとつ、
爛れたショパンがしゅんと跳ねた
ボンネットに
縞模様の葉と夕日がはずむ
萌えゆく色のストッキングに
つつまれた腿をにらむ
どんな味がするのか
あなたとの愛は
入り口の方にあなたが立っていたが
出口の方にも同じようにあなたが立っていた
べつに邪魔をしているわけでなくただ立っているだけのこと
そういえばそのような薬物をわたしはどこ ....
夏影を
蛇の身がなぞる
あおじろくつめたく
すべての陽がきえていく
汗が鎖成す、おまえの鎖骨
由木名緒美さんの草野春心さんおすすめリスト
(72)
タイトル
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カテゴリ
Point
日付
sakai
-
草野春心
自由詩
3
15-11-1
ながい階段
-
草野春心
自由詩
5
15-9-22
把手
-
草野春心
自由詩
5
15-9-22
玩具
-
草野春心
自由詩
6
15-9-6
Choral
-
草野春心
自由詩
5
15-7-4
予感
-
草野春心
自由詩
2
15-6-13
横丁
-
草野春心
自由詩
2
15-6-6
並べる
-
草野春心
自由詩
16*
15-5-23
雨の骨
-
草野春心
自由詩
4
15-4-25
廃材
-
草野春心
自由詩
8
15-4-17
昨日の咳
-
草野春心
自由詩
3
15-4-17
白い歌
-
草野春心
自由詩
3+
15-4-11
話しかけることができない
-
草野春心
自由詩
6
15-4-3
瞼
-
草野春心
自由詩
5
15-4-3
柄杓
-
草野春心
自由詩
5
15-3-21
坂をおりる
-
草野春心
自由詩
4
15-3-21
残された芝生
-
草野春心
自由詩
3
15-3-21
憐憫
-
草野春心
自由詩
5
15-3-1
Q
-
草野春心
自由詩
3*
15-2-14
そらのいろ
-
草野春心
自由詩
4+*
15-1-17
老女の歌
-
草野春心
自由詩
7
15-1-9
敗北
-
草野春心
自由詩
4
15-1-9
橋
-
草野春心
自由詩
4
14-12-31
雨の歌
-
草野春心
自由詩
7
14-12-23
あまい針
-
草野春心
自由詩
6
14-12-21
四
-
草野春心
自由詩
3
14-11-3
爛れたショパン
-
草野春心
自由詩
9
14-10-29
ボンネット
-
草野春心
自由詩
3
14-10-4
悪魔
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草野春心
自由詩
7
14-8-20
蛇と鎖骨
-
草野春心
自由詩
5
14-8-3
1
2
3
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