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  なまこの指に溜まっていく
  季節はうつくしい
  ゴム長靴が 二、三組
  傘もささずに駆け去っていく
  この場所が 貴方の 唇であったなら
  忘れたものだけ
  見ることができた


  床に張った
  埃 夕日の格子型
  蛇口に残る 唇のような水
  言うことができた
  言い尽くしたことだけを


  ....
  約束の時間にすこし遅れて
  寂しさの続きのような場面が始まる
  駅舎の街灯に羽虫が 丸く 集る


  高架下 ラーメン屋に入る
  やがて感情は数枚の貨幣に似てくる
  ....
  日の光の血痕
  かさなった眼が ここにない
  熱い空 道すじをかすれて
  私たちの歌は時間の
  壁の裏におちた
  通り過ぎて
  あなたの胸に
  影になってから
  はじめて言葉がきらめいた
  海老蔓の秋 はじめから 記憶の形をして
  まるい
  光のとかげ
  うしろから頸を締めた
  深い 叫びのつぶて


  むかしのきみの幻に
  許してほしいと上目を遣った
  とっくに許されているくせに
   ....
  ボナールの赤を
  敷布にまるく包んで、
  心ある人間になりたかった……
  陽の光が 目に見えない雪になって
  町にふる午後 凄く かなしい
  その途中で
  錆びた窓は停まった


  おおきな 古い瓦屋
  やすでたちは疲労のように
  みている


  その途中で
  砂埃は窓の面から
  私たちの瞳に ....
  青空にむかって
  わたしたちは歌った
  夜はながく とても寒く

  深く 生きながらにして
  かたちのなかで毀れていた

  シャツをきて お茶を飲み
  静か ....
  誰もいない
  中ぐらいの部屋で
  音楽が静かになっていく
  というような気持ちで
  貴方を抱きたい


  小癪な 爪の光が
  凄い桃色へはじける
  先刻 ....
  栗色のながい弧が
  私たちの耳にふれてから
  鱗雲の向うへ塗れていった


  秋の街をならんで歩く
  ふたり 着古した服を着
  透明な壁の群をすりぬけていく

 ....
  中央署の傍 ながい
  みちを吠えた舌の葉に
  砂の月がやっつ、
   しろい やわこい
    まるい  あわい
  夜 銀 カセットテープ
  リールを、まわすように
 ....
  なにかに似たなにかが
  わたしの緑色を這って{ルビ滑=ぬめ}る
  朝陽も入り込めない太い闇を
  しずくのような眠りが円く湿らす

  
  葡萄味で棒状の鬱
  なにか ....
  見えつつ
  あるものの内壁へ
  つたう光へ、冷えた天使をみつめていた
  腫れ房を成す、{ルビ硝子景=ガラスけい}の、あなたがたの
  優しさから眼をそむけた
  見えつつ  ....
  一機の ヘリコプターが
  交わりをひとつずつ置いていく
      海色の稜線、わたしたちの
      茹だり、かげ沿いに膿んでくる、疼痛の粘り気
      冷えすぎた{ルビ ....
  床への
  暮れどき
  バナナ、薫り
  ふさがれる
  夢の耳


  碧い
  シャツの海では
  あなたらしき丸みが
  ちぎりすてた影が
  つぎのひかりを ....
  昨日 私たちは
  ぶ厚い夏の憂いの底で
  椅子に座り 黙って紅茶をのんだ
  西友で買ってきた安い{ルビ氷菓子=アイスクリーム}を
  紙スプーンで交互に食べて


   ....
  祝日、
  見あげたところに
  日の丸がはためいている
  木蔭では 優しい五月も笑う
  大切な人からの最後の{ルビ詞=ことば}のような
  陽射し…… 僕は思う、いつまでも ....
  銀鮭の
  苔かおる底を、
  小河らの肌がすべる 春という時に
  生きることができてよかった

 
  灰色の水に 憶えている
  歌の果てに燻る 哀しみの螢火
  耀 ....
割れた瓶から
歌が こぼれた
はてしない青をうつし
暗闇をふたつに切り裂く
ひとつの歌が今こぼれた
まだ名前はついていない
言葉さえ、まだ追いつけない
 ....
  花弁 さるすべりの
  あおい昏さにあかるみ、
  わたしたちは愛した 確かに
  弱さのかげにしおれた また一つの
  どうしようもない弱さ・ひとらしさを
  愛した 確かに  ....
  戯れに
  たまを投げ
  くれないの崖
  に、蜥蜴たちが{ルビ円=まる}
  い、女らから、嵩張る
  ち、をさそわれ、しらないまちの
  下水管にしたたっている師走の月の ....
  物陰にひそんでいる、一頭の
  動きののろい獣をみつめるみたいに
  流れているのだろうか、ぼくにとって
  あの時間もこの時間もどの時間も?


  不揃いの靴たちの
   ....
  蓬色の夜、
  つぶれた{ルビ褥=しとね}に居て
  夥しい数の接続詞らが
  わたしの躰の至るところで
  いっせいに哄笑をはじめたので
  何か 訳のわからない一塊の
   ....
  Lの音が一つ
  皿に一つ載った
  まもなくあなたの
  肺のあたりに茂る森へと
  死のような霜が降りる


  尖る、Sの音が
  折れまがった 裸体の
  女たち ....
  夢のかこいは
  {ルビ菖蒲=しょうぶ}のながい影に飾られ
  また、{ルビ蕩=とろ}けた夢のよう
  わたしたちは 遊ぶ
  いつまでもあそぶ
  るらる、るる
  りりる  ....
  辛抱づよく 壁を背にし
  紺いろの布巾をみつめている
  とじた唇のなかで くちづけの記憶が
  解かれた積荷のようにころがっているが
  やがて堰き止められる
  いずれ壊れ ....
  翼をゆるされたとき
  わたしたちに空はなかった
  あおい 哀しみのかたまりが
  遠い 海のうえに浮かぶだけで
    

  いつか わたしたちの何もかもが
  優しげ ....
  或る糸が……否、
  生温い 呼気に似た
  細ながく冷たい白さが
  頭上から垂れてくるのを
  待っている……夜に、私は
  その影が たとえば ツルリとした
  薬缶のお ....
  私は死にます
  毛羽立った蜘蛛猿を
  折りたたみ、鞄に詰め
  雨降りの後の細い小路を
  私は気軽に駆けていきます
  お元気で
  どうか、お元気で。
由木名緒美さんの草野春心さんおすすめリスト(72)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
なまこ- 草野春心自由詩423-12-28
果物籠- 草野春心自由詩1123-11-14
羽虫- 草野春心自由詩623-11-6
lensflare- 草野春心自由詩823-10-30
海老蔓- 草野春心自由詩10*23-10-1
天国- 草野春心自由詩11*19-5-5
烏瓜_4- 草野春心自由詩318-12-26
途中で- 草野春心自由詩218-5-24
愛に生きて- 草野春心自由詩5*18-5-12
中ぐらいの部屋- 草野春心自由詩2*16-10-9
栗色の弧- 草野春心自由詩416-9-25
柳夜のリール- 草野春心自由詩116-7-13
- 草野春心自由詩316-6-9
冷えた天使/見えつつあるものの内壁へつたう光- 草野春心自由詩816-6-4
交わりを置く/そらという球体/見ることの稜線- 草野春心自由詩3*16-6-1
丸み/時の棄て場- 草野春心自由詩416-5-28
昨日- 草野春心自由詩416-5-8
波光- 草野春心自由詩3*16-5-7
midori- 草野春心自由詩216-3-12
bin- 草野春心自由詩316-2-28
sarusuberi- 草野春心自由詩416-2-26
tama- 草野春心自由詩316-2-26
さよならなんて云えないよ- 草野春心自由詩4*16-2-16
shitone- 草野春心自由詩516-1-31
nakigara- 草野春心自由詩4*16-1-27
ukiyo- 草野春心自由詩516-1-3
kitsune- 草野春心自由詩316-1-2
omokage- 草野春心自由詩215-12-19
utsusemi- 草野春心自由詩215-11-22
kumozaru- 草野春心自由詩215-11-8

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