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｛引用＝たくさんの本棚に囲まれた部屋に
一つのテーブルと　一脚の椅子
灰皿には薬の抜け殻と　オーダー表
鳴らない黒電話、かける機会のない大型レコード
ここに来る人は饒舌の上にある沈黙を愛した
　.... 母のことを思う
始発のプラットフォームに立つ時は　いつも母に一番近づく
故郷を離れてダウンロードした新曲が　終わらないうちに
新幹線の窓の田畑や山の緑は速度に燃やされ
灰色の街が　繰り　.... 真っ黒い木々の影の中をさ迷うように
真っ赤な夕立の雲間から黒い雨粒が
車窓を叩きつけるように
走りゆくバスから
移ろいゆく黒いものたちを 目の当たりにしながら
避けることも 拭うこ　.... 乳の出なくなった母豚が　
子豚を育ててくれるという、　
やさしいニンゲンに預けた

彼らは　何もできない痩せた子豚を
段ボールの中で育てた

しかし　相変わらず豚は、豚
ただ　.... 幼い頃に頭を撫でてくれた手のひらたちは
引っ繰り返され　
彼女を叩たり、指さした

（公園で、一人、少女が濡れている）

常識の文字を見つけると丁寧に赤丸で囲みながら
恐る恐る　.... 珠を数えている。
腕に通された木目の珠を。

祖母が亡くなったとき　
父が握っていた大粒の珠を、
父が四角い小さな石塔になったとき　
母の手首に引っ掛かった数珠の珠を、
数えている。
　.... 母になれないこのままで
あなたに名前を名付けたい
あなたは黒い目玉を輝かせ
きょとんと笑ってくれるでしょうか

母のになれないこのままで
あなたを産んだといってみたい
海のな　.... ｛引用＝生きながらえて帰れば　非国民と呼ばれ
生きていたら　厄介者扱いされ
息をしていたら　珍しがられ
長生きをし過ぎると
見なくていいものまで見えてしまう

あなたの青春は何色　.... 家の敷居や襖の線や開閉ドアを隔てて　深い河が流れている
隣の部屋なのに、もう渡る舟の手掛かりはなくしたままだ
河の底から　十二年前に口を交わした孫の燥ぎ声が
時々聞こえてくるのが楽しみで　　.... スズや、スズ、と　呼べば白猫が一匹
呆けてしまった昭和の頭に　鈴の音だけでやってくる

年老いて逝く者の生きがいのために　孤独死を恐れてか
「アパート一室につき猫一匹飼育可能」、の高邁な　.... ｛引用＝たくらみを実らせた花はもう、少女ではない
女になれば脆弱な季節から嫉妬だけを学ぶ
かなしみ、は　夜を壊し牙をむく
いつも、淋しい姿で佇んではいない、と
教えてくれた　あなたの沈黙は深く　.... 「誰も彼も 渡ってくれば良いのです」

遺影写真に並ぶ祖父と祖母と父の目が
私をじっと睨み続ける
肉体の私を憎み後頭部の私の影に 三寸釘を打ち付けて
今日も十字路に磔にする

　.... 闇色のコートの肩に刺さる
いくつもの銀糸の雨を
拭ってあげることもできないままで
私は冷たい夜を行く

棘のある視線を伏せて
唇だけを動かして見せたけど
今さら何を伝えたかっ　.... ドラマチックに声をあげながら　静止していくのは
流れるはずの血液　聞こえるはずの心音

足早にそこから立ち去っていきたいのに
抱えた季節を手放せないから　動けない

与えられた名前　.... 【行方を尋ねないでください。
それは、行方不明になりたかった人、限定で、お願いします】
そんな紙を　寂れた下町の施設に　貼ってあげたい時がある
何の名札も値打ちも持たないということの
　....
由木名緒美さんの為平　澪さんおすすめリスト（15）
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
コト、たりない- 為平　澪自由詩1018-5-23
し、についての考察- 為平　澪自由詩617-3-23
疑惑- 為平　澪自由詩4*16-10-25
東京- 為平　澪自由詩616-9-26
ブロンズ少女- 為平　澪自由詩516-7-25
かぞえる- 為平　澪自由詩10*16-3-20
母になれないこのままで- 為平　澪自由詩816-3-2
白紙の回答＿ーあなたへー- 為平　澪自由詩1116-2-3
核家族- 為平　澪自由詩915-10-27
アパート＠猫一匹- 為平　澪自由詩9*15-10-22
哀歌- 為平　澪自由詩1015-10-12
手鏡- 為平　澪自由詩915-8-23
夜行- 為平　澪自由詩7*15-4-1
３６４日- 為平　澪自由詩8*14-10-1
行方知れずのゆくえ- 為平　澪自由詩7*14-9-28
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