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またひとり 友達が逝った春
ホームの売店で香典袋を買う
無愛想な店員が差し出す
派手な化粧に 朝日が散乱する


押し頂くような仕草で受け取り
擦り切れたバッグに入れたとき
倒れた ....
夢中になった歌集は 本棚で埃をかぶっている
覚えている言葉は もう何も動かさない
好きだった花が 色褪せて見える
もともと 好きでもなかったのかもしれない


紅をさす 鏡の中にいるの ....
気まぐれな風が 鏡の水面に木の実を落とす
広がる波紋は 臆病な栗鼠の目に少しの不安を
それでも 冬支度の手を 休めることなく
すぐに静まって 平穏になるとわかっているから


羊飼いの ....
深い森の中を彷徨っていた あの頃
草木の名も 花の色さえも知らないで
認識は ぽっかりと開いた陽だまりの草地に
唐突に現れて 「境界」 を教えた


黒い雲の切れ間から洩れる 血のよう ....
命日には 花が咲き始める
あの時のまま 時間は止まっている
部屋は汚れ果てた 誰も来なくなったから
すべてが汚らしく見えて 手ばかり洗っている


不安の海は時化て 人魚は深い水底へ
押 ....
過去への扉を閉めて 歩み去った
思い出を 燃やしている その日までの
カレンダアに 印を付けるように
胸をつつく 夢の欠片を夜の河原に捨てる


葉を落とした 桜の小枝が 空に描く
 ....
月夜の帰り道
青白い横断歩道で 拾った
白い帯にぽつんと 真っ黒い穴
無造作に転がっていた 黒い石

指先が ぽっ と暖かくなったような
無機質な石よりも 柔らかい感触
左折してきた ....
透明な木漏れ陽が ころころと
転がっている 密やかな苔の森に
生を終えた 蝉が仰向けに凝然と
夏の終わりは こっくりと乾き始めた


風が流れて 何かを囁いて過ぎた
手を繋いでいたよ ....
布団は ばあちゃんの香りがしている
少し脚が不自由だけど 元気で
働き者のばあちゃんが干しておいてくれた
布団は日向の香りが充満している


ばあちゃんは もう年だから
同じ話を ....
しあわせな瞬間を
こっそり切りとって
あわいブルーのアルバムに
貼りつけてほっとする

あとから眺めるわけでもないのに
夢中でレイアウトを考えたりして
だれに見せるわけでもないのに
 ....
きみの旅が終わる時
黒ずんだザックの中には
通り過ぎてきた街の悲しみが
薄汚れた上着のポケットには
誰にも見せたくない たからもの
それはきっと
今のきみにとって
おおい隠 ....
きみが見る夢のはかなきうたかたの
まぼろし追いぬ夏のつとめて


あおによしならの都に鳴く虫の
声こそかなしきみが面影


西風にいかなるいろのこへ聞かむ
ひぐらしかまし ....
夕暮れの死は淋しい
夕陽が容赦なく
色を注ぎ込む部屋
異界から配膳の喧騒

疲れ果てて
干からびた唇は静止する
腐臭の隙間を漂い来る
まずい魚の煮物

LEDライトで確認する
 ....
由木名緒美さんの藤原絵理子さんおすすめリスト(13)
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