日傘を差した女の影が


歩道の凹凸を滑って行く



            踵を返す青い熱帯魚
            フルートの鋭い閃光
            アイスピックを ....
おれは殺風景
 がらんどうで埃濛々


 だから昼の檻に閉じ込められた
オオミズアオなんか見つけると
こんな錆びついた工具のような手をしながら
そっと 捕まえてみたくもなるものさ

 ....
 頭の中で魚が跳ねた
   ぴしゃんと深みへ姿を消した


 黒い子猫が静かに見てた
   風がぱらぱら捲っていった


 時間は長くも短くもない
   人の物差しはいい加減だ
 ....
トラブルが起きると
誰かが泥をかぶる
誰かが猫をかぶる
噂が流れる知ったかぶる
怒りにブルブル
やがてはブルー


シンプルなことだ
プールの中で眠る
プルト ....
夢から覚めると
午後は陽炎の中 寡黙に佇んでいた
翻る あなたの影だけが冷たい魚


見も知らぬ者同士 これが
いつかの夢ではないと言えるでしょうか


ひび割れた心象が決壊する時
 ....
  ポポタンが笑っている
  太陽みたいに開ききって
  その中でアリが泳いでいる
  お菓子の家で溺れそう

  ぼくは憶えている
  きみのやわらかな面差しを
  すべり台へ走っ ....
赤い 熊出没注意の看板の右端上に
白い小さな張り紙で「最近」と補足されている
死ぬことより死に方が問題だ
熊に食われるのは天罰のようでどうもいけない
残された妻と子が葬儀の席で困ってしまうだろ ....
  雨に濡れたアスファルトに
 
  並木のみどりが映っている

  言葉に餓えた人たちが
 
  傘に隠れて哭いている

  雨は涙に良く似ている
 
  昼は処刑台に良く似てい ....
  さくらんぼの花が咲いている
  うっすら目を閉じ微笑んでいる
  ソメイヨシノのような艶やかな色香はない
  浮世を忘れようとその下で酒宴を張る者もいない
  白く清楚なその花は
  ....
  
     まるく

    表面張力で
   膨らんだ一滴の
   想いがいま落ち
    触れる間際

     はじけ
 
    残像のように

   ゆ っ くり ....
目覚め 
悪意が芽生える その刹那

化粧 
七色の砂嵐は旅人の死を覆い隠す 

時は
ナイフのように刻みまた削る 皺を 記憶を
残された心拍数を

図書館で
昼過ぎまで文字たち ....
北国に桜が咲いて幾日も経たず
昨日突風が吹いて花びらを散らして行った

今朝 桜は冷たい雨に濡れそぼち
うつむき滴る 運命を受け入れつつも

儚げな美しさを愛でる者が
その色香に誘われて ....
大惨事が起こるその瞬間
世界は目を閉じる
そして
後からくる絶叫の前に
世界は耳を閉ざす

やがて
時間という距離を経て
世界はそれを歴史と呼び
記念碑を建て記念日を定める
見もし ....
休日には光の姿態に花を挿し
寝そべる背中に猫でも乗せて
二三冊の本にマスタードをたっぷり塗って
後ろ向きに釣り糸でも垂らしてみようか

古い音楽ばかりが飛行船となる場所で
とりとめのな ....
春の公園に満面の笑みが咲く
お花模様のワンピースでタンタカタンタカ
お砂場までもタンタカ行進だ
お日さまが照らす世界はこんなにも広い
驚くことはあっても怖いものなど何もない
ほらほら お友だ ....
     雨の匂いがする
      川沿いを下る道すがら

     梅も桜も木蓮もまだ閉店中
      一度に咲こうとしめし合わせているのだ

     雨の匂いがする
      ....
朝日はね
特に良く晴れた日の朝日はね
そりゃあもう別嬪さんで
たったひとりで見ていると
もったいないような
独り占めできてうれしいような
不思議だね おれは
新しい朝と結婚したくなっちま ....
ひねくれて咲いた花は
つまらない冗談を浴び
触れない風潮にそよぎ
良く肥えた嘘に根を張った


 罌粟より見開いて
 月よりもあぶなくて
 桃よりも貪欲で
 嘘のようにやわらかい
 ....
インターホンの向こう
奥さんの返答が聞き取れなくなる
営業妨害の嫌なサイレンだ
気がつけば風にのって煙の臭いが満ちてくる
ますますサイレンが近づいて来た

    火事だ!

道路向か ....
冷たい雨が降ってきた
おれは黒々と木のようで
 心臓だけがガス灯
何を照らすでもなく ぼんやりと立っていた


小さな春は震えていた
おれの心臓に寄り添い 冷え切ったからだを温めた
 ....
時折 背負った荷物をすべて下ろしたくなる
 そしてまぼろしの中の風のように
 異邦人たちの衣を揺らしながら
  何も持たずに消滅したい

時折 鳥となって旅路の終わりへと飛び去りたくなる
 ....
     四月  灰色の午後
    
     湿った雪が舞っている


    人生で何度目のことだろう
   
     心は鉛の錨となり

    失望の海に深く下ろされてい ....
いつも表情を崩さない
お利口な君のこと
そりゃあ嫌いじゃないけれど
中身をちょっと覗いてみたくて
  一刀両断! 
スパッとやらせていただきました

中ら出たのは意外や意外
小粋なドレ ....
突風が春の入城を告げ知らせ
冬の残党は最果ての地へと追われて行く
変わることなく季節の車輪は廻る
時のレールを 一方向に

樹木もまだ裸のころ
花よりも先に咲く少女たちは明るい色の服を纏い ....
「……殺して 早く」
  
  「何も 殺さなくても」

「いいから殺して! 」

  「ねぇ 見逃してやろうよ」

「"それ″私のどっちが大切なの」

  「そっ そん ....
心の中では土足で暮らし
裸足で世界を歩き回る

ぼくは人間

月のように出たり隠れたり
雨になりまた雲になる

そんな人間

あなたもまた一個の太陽
少しずつ周りを温めながら
 ....
夜明けの明けの
ほのあおい闇と光の均衡に
無垢なクラゲが部屋を舞う
流れるままに漂って
夢から溢れたクラゲが舞う

夜明けの明けの
ほのあおい夢とうつつの端境に
大きなクラゲが天井を過 ....
誰か止めればよかったのに
投石器に自分の箱庭みたいな心を乗っけて
あいつは遠くへに飛んで行ってしまった
ほらそこのベンチ 降り積もった火山灰
虚ろなカタパルトがじっとしている

誰か止めれ ....
今年もこの日がやってきた
例年と同じ農園のビニールハウス前に
イチゴ狩りに魅せられた老若男女二十数名
斜に構えたり 無言を装ったり
だが皆が高揚を隠し切れずにいるのだ

農園の主人は愛想笑 ....
両の窓から見えるものはみな不確かで
ぼんやりと光に融け出しているようだ
心は焦げ付いた鍋のように
そのまま冷たく放置されていた

  杖をついて 
   時が行き来する

  昭和 ....
ただのみきや(988)
タイトル カテゴリ Point 日付
白昼夢自由詩25+*12/6/19 23:42
光が煙のように立ちこめていた自由詩17*12/6/17 22:10
釣りには良い日だ自由詩20*12/6/9 23:20
馬鹿王子と毒リンゴのパイ自由詩20+*12/6/3 20:58
心の向こうで絵を描いているあなたへ自由詩36*12/5/28 23:31
タンポポと選利矢自由詩12*12/5/24 22:21
こごみの天ぷら自由詩22+*12/5/20 22:07
映したものは自由詩18*12/5/17 0:24
母の日に自由詩18*12/5/12 23:23
白紙に降りる自由詩15*12/5/9 21:02
毒の香水自由詩13*12/5/6 1:00
悲恋自由詩11*12/5/4 23:57
遠く逆光を浴びた背中からは自由詩11*12/5/2 20:42
HOLIDAY自由詩25*12/4/29 23:37
とかく嫌いな人のことはあまり知らないものだ自由詩11*12/4/29 0:52
 いつかは虹を見るだろう自由詩12*12/4/26 0:28
黄金の花嫁自由詩28*12/4/22 23:28
時代の日陰の奇妙な花自由詩14*12/4/18 21:28
その笑顔が忘れられなくて自由詩14*12/4/16 0:07
つぐない自由詩22*12/4/13 0:23
乖離したものが いま 月のように弧を描き自由詩26*12/4/9 23:24
  尽きぬ恵み自由詩20*12/4/7 0:06
マトリョーシカ自由詩18*12/4/3 23:12
遅れる時計自由詩15*12/4/1 0:01
今は家族で一人だけ自由詩11*12/3/28 22:24
尊厳は人を手放しはしない自由詩9*12/3/25 23:29
潮流自由詩14*12/3/22 23:00
誰か止めればよかったのに自由詩8*12/3/21 0:15
イチゴ狩り自由詩9*12/3/18 21:20
春の悲哀自由詩13*12/3/14 22:30

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