旅にでよう
おれは空っぽの植木鉢
枯れた川底の石っころ
風の一筆書きなのさ
蜃気楼から現れた古代人が
すべてで触れて 無知のまま
時を違えた恋人を追うように
たった一人 旅をしよう
帰 ....
フェイスブック
ライン
メール
電話も
手紙ですら
もう つながることはない
遠い人

色づくことの葉 散り積もり
掻いて 集めて 徒然に
燃やしてみる その 煙の
立ち振る舞い ....
雨 いつのまにか
静かな吐息のように 
染まりはじめた黄葉から
ひとつ ふたつ しずく おち
{ルビ中空=なかぞら}はしっとりして
往くトンボたち
ゆるやかに すこし乱れて


   ....
ある日{ルビ馬鹿=うましか}は恋をした
とても美しい理念に

薬はなかった
あっても飲みはしないだろう
なにせ

夕日を浴びた{ルビ馬鹿=うましか}の群れが
一斉に嘶いた

美しい ....
朝の光が問いかける
空ろを残して辿る海辺で
初めから抜け落ちた地図が飛ばされる
一日か百年かも分からない始まり 

わたしは呼び起こす わたしを
塵ひとつ動かすこともない精神で
囚われた ....
悪びれることもなく時は捲れ
ゆるゆると確実に老いてゆく
胸に立ち込める冷たい霧
晴れる間もない
季節より早く深まったあなた
色づく言葉が黙々と
忘れ去られた詩人の墓を覆う頃
斜陽に目を細 ....
海が見える新興住宅地
まだ買い手のつかない広い区画には
イタドリ ススキ タンポポ 
何処からともなくやってきた
柳や白樺の若木も生え
地面は覆い尽くされることもなく
盛り固められた土が腐 ....
公園のベンチに座っていた
そよ風が恋人のように寄り添っていた
古いノートの中で
ことばは悶えた
それとも窮屈な服を着せられて
詩がのたうち回っていたのか

その時ひとひらの蝶が
記憶に ....
絵のない絵葉書が届く
ことばのない詩が書かれていた
ピアノソナタが雨に溶けて
コスモスはうつむき顔を覆う
山の精気が少しだけ薄められ
ものごとを前にしてふと
過去からの声に手を止めている
 ....
あんた証明したい
なんにも 
嬉しいね卵持ってかえりなよ
釘打ってごらん釘
ぎったんばっこん傾いて
地球も発泡してら
ああ君ら目から艶墨ちろちろ流すが
猫がしどろもどろだね
あんた主張 ....
光と樹木が交差する
あの夏の濃い陰りを抜けて
ヤンマゆくよ

感光した記憶の傷痕なぞり
迷える樹海の鬱蒼を越えて
ヤンマゆくよ

うすい双翅に光彩を弾き
風の流れを遡り
この目が耳 ....
見開いた瞳が何もかも拒む時
舌が千々に裂け石となり果てる時
世界がおまえとおまえ以外に二分される時
おまえの奥深く
開く扉があり
時間の揺蕩う土地があり
虚ろな空があり 明けのような暮れの ....
胸のファスナーを下して
白い綿毛に包まれた
幼い夢の息の根を止めて
そうして入り日の燃え落ちる
血だまりへ
交わることで違え 
意味を失する言葉のように
縺れたまま ひとつの肉塊となり
 ....
物憂い季節の飴玉を
煙る眼で舐めていた

 「印象かもしれない
 塗り潰された貝のように

破れたレースの隙間から
凝らす朝が射竦める

 「人形かもしれない
 あるいは蒼 誰かに ....
風の強い日にも蝶は飛ぶ

気流に乗って巡り

波を越えたり潜ったり

泳ぐようにすり抜けては

喉を潤す 揺れるクローバーに佇んで

ヨットのバーでカクテルでも飲むように

洒 ....
――皿が割れた!
まわす皿はもうない
みんな落として割ってしまった
誰かのせいにしたくても
皿を落として割ったのは自分
落として割れたのは自分の皿
何事も寸分変わらない
仕方がなく
架 ....
光で埋め尽くされて行く影
影で埋め尽くされて行く光

詩で埋め尽くされて行く空白
空白で埋め尽くされて行く詩

沈黙で埋め尽くされて行く会話
会話で埋め尽くされて行く沈黙

過去で埋 ....
雨が降り始めた
何処で これ以上 笑えばいい
景色の感覚を剥ぎ取られて
白い足の子供たちが
死の石と兎の上を
水蜜のように歩いた
さらわれてしまう耳目
暗渠から招く文字のうねり
疑問と ....
春 そよ風の優しい囁きに
夏 肌を滑る熱い眼差しに
秋 想い出の肩を包む腕に
冬 肌の温もりの静けさに

とろけても ながされない
自分のかたちを失くさない
凛としてつめたく だけど 
 ....
乗り合わせた連中と
サイコロ振ったりカードを捲ったり
酔っぱらって歌ったり
ここで生まれた
もの心ついた頃には船の上


過去の航跡をぼんやり眺め
濃霧に満ちる行き先に目を凝らす
詳 ....
スパイスと宝石の匙で
耳を穿られる

《誰の膝が欲しい?――

頭の中から始まる旋回舞踏
透明な花びら 光彩のミスト 
すぐに船内の浴槽が揺れるよう
隠れた海が押し寄せて捲れだし
突 ....
家族や国を守るため
自ら志願し戦場へ行くと言うのなら
その人は行けば良い 後ろ指さされても
人殺しと罵られても

たとえ国家権力が徴兵しても
誰の血も流したくないと言うのなら
その人は拒 ....
平家の怨霊に千切られたり

画家が自分で切り落としたり

耳だけになった耳は

視ざる 語らず

そばだてるだけ

集めつづけて

誰にも渡せない

にくの花弁の内がわで
 ....
真理を見たのです
燃えて輝く光を
そうして心は石と化し
硬く刻まれて死の使者となりました
冷たい墓石のセールスマンが
来世を高らかに謳うように


ある日ミミズが降ってきて
声のよう ....
木影に影を重ね 静かに見送る 
蟻たちに運ばれて往く
ことば 肉から零れ落ち

    熱い 取っ手を掴んだ

わたしは夏に生まれた
きっと夏に死ぬだろう
光の色彩が教えてくれる

 ....
長い雨のレースを開けて
六月の陽射しが顏を出す
反射して散らばる子供たち
ビー玉みたいに素早く駆けて

ひとり離れて
シロツメクサを編む
首の細い少年

意識されることもなく
満ち ....
霧が湧き 雲は下り
天と地の息吹が交わり合う
噛み合わされた大地 喃語の潤い

ぱせり ぶろっこり やまのみどり

熊や鹿が嗅ぐ土の匂いが知らしめる
地脈の辿り 遠く 深く 息みて

 ....
朝陽から刈り取って食卓に供えられた獅子の首
金色は瞬く間にとけて白い皿に蒼く翳りを残す

あるいは初めから造られなかったニケの頭部
永遠に像を持たない神聖 あらゆる問であり答え

あなたは ....
黄色いシーソーが二つ
同じ方を下げて
ならんで寝ころぶ恋人同士みたい 

ブランコも二つ
風にほんの少しだけこぎ出して
仲睦まじそう

のっぽの滑り台はひとり
空を見上げている 雨が ....
はい 間違いございません
わたしが〝ラッキーストライク〟です
本家本元 
「首相投卵事件」以来
多くの有名著名人ばかりを狙った
スロウアンエッグテロリスト
今や多くの模倣犯が現れて
巷で ....
ただのみきや(987)
タイトル カテゴリ Point 日付
いざなう声がする自由詩15*15/9/27 12:14
つながらないあなたへ自由詩23*15/9/26 20:06
秋・湿傷自由詩13*15/9/23 11:55
美しい馬鹿自由詩13*15/9/21 6:01
いつかロマンス風の自由詩8*15/9/19 20:55
秋・滑落自由詩19*15/9/16 18:43
わたしは自由詩12*15/9/12 22:54
わたしのメルヘン自由詩14*15/9/9 19:59
秋・逡巡自由詩19*15/9/5 8:18
萌えて悶えて自由詩7*15/9/2 21:00
ヤンマゆくよ自由詩18*15/8/30 16:31
聖域自由詩14*15/8/29 17:58
闇の恋人たち自由詩16*15/8/26 19:08
自意識風呂敷自由詩10*15/8/23 13:14
風の強い日にも蝶は飛ぶ自由詩16*15/8/21 22:07
皿まわし狂言地獄自由詩22*15/8/19 20:33
翼に鉛のピアス自由詩17*15/8/14 21:35
笑いの刑自由詩21*15/8/12 14:10
アイスクリーム自由詩16*15/8/8 20:34
船旅自由詩14*15/8/5 19:06
音楽の効能自由詩16*15/8/1 20:47
正直なところ大言壮語すれば自由詩10*15/7/29 19:23
すでに萩原でも日吉でもなく自由詩9+*15/7/25 19:14
律法自由詩14*15/7/22 19:49
消失の夏術自由詩17*15/7/20 18:45
六月回廊自由詩25*15/7/18 15:32
巻き戻されることはない自由詩16*15/7/15 18:08
わたしが詩の中で掻き抱くあなたは自由詩18*15/7/11 21:15
雨の日の公園自由詩18*15/7/8 20:42
『ラッキーストライク』  卵から始まるはな詩⑦[group]自由詩15*15/7/4 14:08

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