白樺からか
ハンノキムシ
熱で磨いた色味して
降って来た
フロントガラスの向こう
鈍い光を投げ返し

 ひとつ
   ふたつ
     みっつ

涙の粒
星を深く沈めた
夜を ....
天は雲から雨を紡ぐ
恵み災い七重八重
おぼろ単衣に織り上げて

 過ぎ去る盛り嘆いてか
 逝ったものを想ってか

俯く{ルビ顔=かんばせ}つめたく包む
想い溢れて七重八重
火から滴る ....
命がけで海の深みに潜り
古の眠れる宝を手に入れた男の話
錆びついた鍵を抉じ開けた
宝箱の中には
見覚えのある割れた手鏡ひとつ

結果より過程
得るよりも追求
流離うなら古代ギリシア
 ....
今朝は青っ{ルビ白=ちろ}いぬっぺらぼうすっきりしない暑くなりそう
砂ぼこりに跳ねる光キラリ目の端っこで鰯の稚魚みたいに
きっとありゃガラスの欠片だれが割ったか知らないけれど
小学生の道徳を中学 ....
雨粒の一つ一つが水の惑星として多くの生命を宿している
ちょうど今日のような日に
水は忍び寄る 音楽に紛れて
耳の奥の貝を発芽させるために

アンモナイトが石の生を得るずっと前
いい陽気の朝 ....
意識は一本のロウソク
辺りの闇を仄かに照らし
朧げにでも識別し得たもの
それが全て 世界の己の だが
寄り添い合えばより遠く闇は開け

意識は一本のロウソク
にわかな風に脅かされて
人 ....
風を見ていた
風のない部屋の中で
誰かが見返していた
風に翻弄される
鵯の眼の中から
当然のこと
眺める者は眺め返され
卑しめる者は卑しめ返される
風のない部屋の中で
酷薄なわたしと ....
盃から溢れる涙のよう
漲る色香をその身に収め切れず
こぼした花弁 拾って風は 囁くほどの足取りで

月しか知らない子どものよう
蒼白いその身を五月の光に晒しながら
淡く 萌え出る想い そっ ....
南のルーキーにとっては棚からぼた餅
北の三代目には渡りに船だったろう

中の親分は放し飼いの犬をしつけた
吠え過ぎてはダメ 吠えな過ぎてもダメ

米の社長は鎮火さえすればいい火の粉さえ来な ....
黒焦げのトーストがいいマーガリンでいい
バターじゃなくていい
蜂蜜は国産 養蜂屋の小さな店先のがいい
種類にはこだわらないがシナ蜜なら尚いい

雨が降る前に用事を済ませたいが
用事の方がは ....
風の戸棚から匂って来る
木の葉一枚一枚の時間のずれと
牢獄から嘆願する女たちが
脳の一部を炙っている


飛行機は他人
張り伸ばした皮を擦るように
蒼い空ろを響かせた
わたしたちはあ ....
罪人を眺めている
誰かの腹の中のように風のない夜
迎え火が目蓋の此方
灰に包まれた心臓のよう
ゆっくりと消えて往く
ただ罪人を眺めている
正義については微塵も語らない
なにかを殺し続ける ....
ひと粒のキャンディーが舌の上で溶けて無くなる前に
いつも噛み砕いてしまう男が馬乗りになって
犬には解らない母親譲りの言葉でトイプードルを撫でながら
時折その首を絞めていた女を殴っている
二人の ....
長い冬の間ハリネズミの毛皮のコートを着ていた女
今は春の嵐を纏っている やがて
花と言う花を散らし生乾きの恋情のむっとした匂いが消えるころ
裸のまま海に溶けて往く
白いブラウスが風の乳房を包ん ....
四月に降る湿った雪を眺める憂鬱は
終わらない梅雨を眺める憂鬱に似ているのかもしれない
月日は愚直に戻らないが
季節はマンボのステップで
なんて陽気な気分ならいいけれど
四月に降る湿った雪を眺 ....
鐘を失くした鐘楼の
倒れ伏した影が黄昏に届くころ
わたしは来てそっと影を重ねる
深まりも薄れもせずに影は
その姿を変えなかった
わたしは鐘
貝のように固く閉じ
自らの響きに戦慄いている
 ....
耳の奥の海の青さ
朝のまま蝶よ渡れ
俄かに結びまた解ける
気まぐれな踊り手たちの
死の求婚を袖にしながら
ただ風を漕ぎ あの島の
今は盲いた娘の白髪を
露こぼす花となり飾れ
高まる日差 ....
雨上がりに光は音を脱ぐ風に踊りながら
胸に二マイルめり込んだ古い写真機の中で

クスクスを盛り付けるには相応しくない
冷たすぎる大皿を放り投げるまであと一日

蝶々のようにスカートの裾を掴 ....
火の風船をだれかが突く
わからず屋のネクタイを締め上げて
笑っているが笑ってなんかいない

ゆっくりと傾いで往くビルにも死守したい角度がある
朽ちない果実の籠を持った老人
腐った果実を山盛 ....
秒針はびっこを引いていた
分針は静かなカタツムリ

わたしたちは同じだけ出会う

あなたは追い越し未来へ わたしは
逆行しているまるでそう見えたでしょう

同じ今を黙殺しながら互いにず ....
風は荒れ狂うものさ 解かるだろう
やがて虚ろな静けさだけが残るって
風向きを変えることはできないし
目的地を変えることもしたくない
帆船ってやつは風頼みの上
腕に頼りもやめられないってこと
 ....
胃袋を焼く
少しずつ焼いて往く
脳を殺す
微細な匙の加減
からっぽの冷蔵庫みたいに
ロックンロールが居なくなると
窓と窓の間に挟まった
蛾の身悶えが
耳のすぐ傍から聞こえて来た
嘘だ ....
一つの知らせ
一枚の枯葉のように軽く
風の悪戯な囁きのようで

隕石のようにこころ深く
波立たせ沸々と滾らせる
一つの知らせ


冷たい火夢を注射した男が蜥蜴になって
すばやく夜の ....
あのバラはなにを叫んで萎れたのだろう
色味を残し 姿を保ち
精気だけをすべて失ってあのバラは
果てしなく続く沈黙と引きかえになにを

あの船はなにを乗せて燃えているのだろう
水平線をゆらゆ ....
エンジンを切った軽ワゴンの屋根を打つ
冷たい春の雨のリズム
捉えきれないπの螺旋を
上るでも下るでもなく蝶のタクトで
震えている灰を纏って朝は皮膚病の猫に似る


   考えている
  ....
木片の内には像も形もない
{ルビ自=おの}ずと示す雛型も
なぞるべく引かれた線も
一つの像が彫り出された後で
木片はその内部に
一つの像となりうる可能性を秘めていたと
言えるだろうか
限 ....
まっすぐな道を曲げるのも
曲った道をまっすぐ往くも
はたから見れば
つむじ曲がりのへそ曲がり

味や香りが劣ってなくても
曲がり傷もの二束三文
好きに選べる人もいる
ふところ具合の人も ....
今朝は冷たく澄んだ風と光のやわらかな壜の中
――長らく闇を枕にうつらうつら微睡んでいたのだが

凪いだ二月の日差しは眼裏を揺らめかせ熱を奪い
夢のへその緒を焼く 声を失くした叫びが黒点となる
 ....
精神の死と肉体の死の{ルビ間=はざま}に続く茫漠の荒野で
ぶつ切りにされた人間の断面を見つめていた
どんな言い訳も成り立ちどんな解釈も成り立つ
一枚の写真が辺りすべてを眩暈させる

朝の光に ....
上着から落ちた雪のかけら
ストーブの上すぐに 色を失くし
ふるえ悶えて消えて往く
あっという間
案外 ねばりもしたろうか
無になった訳じゃない
見えない つかめない 形がないだけで
身軽 ....
ただのみきや(987)
タイトル カテゴリ Point 日付
光沢自由詩3*18/5/23 20:50
五月の桜自由詩6*18/5/19 19:18
名無しの快楽自由詩12*18/5/16 20:39
きっと君はスカラベみたいな瞳で自由詩4*18/5/12 21:02
完全体のためのプロト自由詩5*18/5/9 19:49
蝋燭自由詩4*18/5/5 18:41
自由詩2*18/5/4 9:43
桜と白樺自由詩10*18/5/2 19:45
風刺漫画自由詩2*18/4/28 19:20
50階自由詩10*18/4/25 20:07
春と酒乱自由詩6*18/4/21 22:20
愛や情けを書けば良いそれは君らの仕事だから自由詩13*18/4/18 21:27
ままごとあそび自由詩5*18/4/14 19:58
逆襲自由詩5*18/4/11 21:55
ウイスキーを飲みながら自由詩11*18/4/8 17:14
鐘楼自由詩13+*18/4/7 21:16
蝶の便り自由詩5*18/4/4 19:56
難題自由詩2*18/3/31 22:00
春の頬に落書き自由詩5+*18/3/28 20:50
相対性自由詩12*18/3/28 20:37
散髪客自由詩5*18/3/24 19:51
誤謬自由詩5*18/3/21 16:31
あなたが来る自由詩4*18/3/17 22:02
あのバラはなにを自由詩5*18/3/14 19:00
金の林檎自由詩5*18/3/10 14:31
空を彫る者自由詩15*18/3/7 19:24
現実を弓とし概念あるいは感覚を弦として放つ矢のソネット自由詩5*18/3/3 13:00
酔っ払いの手記自由詩8*18/2/28 19:58
真逆の同一自由詩5*18/2/24 19:02
出来過ぎた話で自由詩5*18/2/21 17:26

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