わたしは失格者
子供の頃は子供として失格
いまは大人として失格だ
夫として
父親として
男として失格なのだ
当然女としても
地獄に堕ちる者として失格
天国に入る者として失格
社会人と ....
老夫婦が
買い物袋を提げて
楽しそうに歩いて行く

幸せは案外地味な装いで
まだ冷たい風の中
首を竦めて待っているのかもしれない

知らん顔して
何度も通り過ぎて行った
それは自分 ....
真っ赤な林檎の皮をするり剥きますと
白く瑞々しい果肉が微かに息づいて
頬張れば甘く酸っぱく
口いっぱいに広がっては
心地良く渇きをいやしてくれるのです

そのおんなもまた
高い梢に輝いた ....
造られたのだ
望んだ訳でもなく
花の像に似せられて
花の代わりに飾られて
その美しさに比べられ

蔑まれては
やがて飽きられ捨てられる
色褪せても尚
枯れることも許されず
土に還る ....
わたしのやる気が逃げて行った
元気や根気も一緒のようだ
荷物をまとめ
手に手を取って
わたしのやる気が逃げて行った
追いかけることなどできはしない
途方に暮れて
薄闇の
終わりとも ....
春がやさしく微笑むと 
白く積もった嘘が融け
ぬかるんだわたしの心を
悲しい泥水となって流れ下る

ひび割れたアスファルトの肋骨
空に頭を踏まれたままの道あるいは時間か
仰向けに開いた記 ....
アパートの暗い階段を上って行くと
二階には嵌め殺しの窓があり
そこだけがまるで古い教会の天窓のよう
純粋に光だけを招き入れていた

迷い込んでいた一羽のすずめは
幼子の震える心臓のよう
 ....
  ――なんの欠如を
    怖れているのか


 踊りたいから踊るのだ
 何が悪いか阿呆ども
 元来人は踊るもの
 踊って歌って
 笑って泣いて
 怒れるものが人なのだ

 鳴 ....
雪に埋もれたまま青く影を落とし
家々は俯き黙祷する
気まぐれにも陽が歩み寄れば
眩い反射が盲目への道標

抱擁されるまま

冷え切った頬が温もり
辺りに耳が開かれるころ
頭の後方 梢 ....
無骨な魂の素描をさらしたあの頃 
恋は糖衣に包まれた苦い薬
駄々を捏ねても得られないものがあることを知り
喪服を脱げない大人になった

今 砂糖とミルクを入れてゆっくりとかきまぜる
あなた ....
たまには自分の信仰について書いてみる

そいつはキャッチボールみたいなもの

この友はいつだって良い球を投げてくるのだ

「愛」とか「希望」とか「信仰」とかね

おれもそれなりに返すの ....
あなたはいつも雨降りで
子猫みたいに濡れそぼち
そのくせ強く匂わせる
刃物を当てた乳房のように


ぼくの真顔の疑問符も
蒼く滲んでインクのよう
何時のころから遺書めいた
ことば遊び ....
四角い団地が建ち並ぶ
その中には四角いドアが並んでいて
ドアの向こうには四角い部屋が連なっているのだが
暮らしているのは どこか
丸みを帯びた人間だ

四角い暮らしに疲れてくると
 人は ....
月は 水底から仰ぐ小舟
雲の向こうをかろやかに滑り


 だが本当は流されているのは雲の方 
 月は自分の道を行くだけだ


きみは 月のように生きるのか
風に流されることもなく 
 ....
スーパーの立体駐車場に車を入れて
そのまま買い物に降りて行く
おにぎりとお茶は持参だが
ちょっと甘い物が欲しくなる
ねらい目は見切り品コーナー


 大きなシュークリームが一個68円
 ....
一巻の蝶がほどけ
色と熱を失った記憶の羅列が
瞬きもせずに四散する
錐揉みの燃える落日に
ことばには満たない鱗粉が
乱反射しながら霧散する


重力が半減したかのように
その長すぎる ....
陽射しは澄んだ冷気を纏い
静かに微笑んでいた
病床から起き上がる母親のように

すると蒼白い時と仄暗い人の群れで編まれるはずの朝が
心なしか ふと暖色に染まり
視線は飛翔してはまた憩う 小 ....
あなたのかたい頬
思いのほかやわらかくて
その冷やかな瞳にも
熱い涙は宿るのだが

心の奥深くに一つの扉があって
それは故郷へと繋がっている
絶対零度の沈黙
この地上の何よりも冷たい場 ....
季節の車輪を転がしながら

時代の坂道下って降りて

さあ年の終わりと始まりのテープが切られました

あなたの目にはどんな時代が見えますか

世界は灰色にもバラ色にも染まります

 ....
クリスマス以降
全くやる気が起きなかった
どうにか今日で仕事納め 
やっと時間が心に追いついたのだ


裸婦像みたいな街路樹の肩にカラス


除雪車に削られた白い壁に車を着けて
ふ ....
何のことはない

君自身が落し物なのだ



たとえば君が左のエレベーターに乗る時

右のエレベーターから降りてくる

すれ違ってばかりの斜に構えた運命が

今日も君を捜してい ....
冬は突き放すような抱擁
軽くドレスの裾を振るだけで
白い吹雪が真昼を閉じ込める
冬は火傷するほど冷たいキス
サイドミラーの氷を指先で落とすと
風の中 君の声が聞こえてきた

子どものころ ....
今が 日付を一歩跨いだのか
時が 向かい風のようなのか

昨夜から
     今朝へ
        光が溢れ

新雪積もって白紙に戻り
一文字人文字人間が
寒い眠いと起き出して
 ....
友よ 教えてくれ
いったい何処へ行くのだろう

君とは長い付き合いだ
離れてはいても仲間たちと繋がり合っていた
私は決して孤独ではなかったが
すぐ側にいた君と親しくなるのに時間はかからなか ....
青く開いた空の深みから
一つ また一つ
無言の頷きのように
頬に
建物に
大地に寄せられる
ふわりと白い口づけ

それは
氷柱のように尖らせて行く
生ぬるい毎日の中で肥大した妄想を ....
閑散とした海辺のペンションのように

広々と逸脱した時が迎えてくれるのなら

片手間に解いてみるのも良い

この絡まった七色の意図を


だが

雨の指で打たれ続けることばは嘘
 ....
霙と嵐と雷鳴で
十一月の夜が揺さぶっている
手のうちなんざ知れたもので
瞳は渇いたまま空を切る

初雪が覆った小さな棺
添い寝をしたくてもできなかった
小さな棺がゆらゆらと
時の浪間を ....
人生はだまっていてもギャンブルだ
伏せて配られたカードは平等なんかではない
そこからスタート
幸せな人生がどんなものか本当はわからないまま
何かを捨てて
何かを拾って
ペアだとかハウス ....
ラジオで誰かが言っていた
「小さなことからコツコツと」を
「小さな琴から骨骨と」なんて変換していた翌日
ご近所でお骨発見のニュース

家族すら知らないうちに家の中で骨になるのなら
たぶん友 ....
きみのことばは

秋の冷たい雨のようだね

仄かな愛の燃えかすを

ひとつ ひとつ 丁寧に

つまむように消して行く

夏の陽射しに彩られた

一輪の記憶が今しがた

明け ....
ただのみきや(988)
タイトル カテゴリ Point 日付
失格三昧自由詩20*13/4/12 0:13
気になる季節自由詩17*13/4/6 21:49
心の化石自由詩25*13/4/1 23:03
造花の詩自由詩24*13/3/28 22:02
自由詩18*13/3/24 18:18
この春を何と呼ぼうか自由詩28*13/3/21 0:17
嵌め殺しの窓自由詩24+*13/3/6 23:07
自由舞踏派宣言自由詩23*13/3/2 19:25
永久の瞬自由詩27+*13/2/24 22:01
投降命令自由詩20*13/2/17 1:16
たまには自分の信仰について書いてみる自由詩20*13/2/11 20:14
雨の鳥籠自由詩19*13/2/6 20:34
まるしかく人間論自由詩20*13/2/1 22:31
孤高の旅人自由詩21*13/1/26 20:43
なんかさめちゃって自由詩25+*13/1/23 21:23
残像自由詩22*13/1/19 0:05
稀有な月曜日/あたたかいもの自由詩21*13/1/9 20:11
黒髪彗星自由詩20+*13/1/4 22:02
2013年 新年に思うこと自由詩24*13/1/1 1:03
連休熱自由詩15*12/12/29 22:50
気休めという天使に足を踏まれた聖夜自由詩19*12/12/26 0:14
幼馴染自由詩23*12/12/19 0:45
人間詩自由詩19*12/12/9 21:43
存在と錯誤自由詩28*12/12/5 23:54
冬に見つけられてしまうと自由詩18*12/12/1 23:38
七色の意図自由詩17*12/11/26 22:13
正気の沙汰自由詩20*12/11/18 23:47
わたしがギャンブルをしない理由自由詩20*12/11/17 0:53
小さなことからコツコツと自由詩21*12/11/11 0:37
冷たい雨自由詩22*12/11/8 0:02

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