暗い地平の
遥か向こう
白く光る湖
空をかける
黒い群れが
夕陽を遮る
赤赤と沈む
失語の湖水
夜毎
幾重にも重なり合う
夜のとばりの中で
子供のように
うずくまるもの
それは
命名しようとすると
いなくなる
「名前なんかいらない」
と うそぶく
「そんなのなくても
 寂し ....
梅雨にうたれながら
名のない暗い橋を渡る
向こう側に行きたい訳でもなく
ただ
濁り始めた広い流れを
見たいため
曖昧に濡れてけむる
遠景を見ようとして
俯瞰ではなく
流れる川の音と
 ....
窓には
色々な表情がある
内側から見えるもの
外から垣間見えるもの
人のココロの襞のように
内と外では違う
違うから人なのだ
だから
深いところで
おしはかろうとし
それでも
思 ....
今まで会った
いく人もの
あなた
 (たちではなく)
の輪郭は
時間に洗われて
薄くなり
次第に
わたしの中の
小さな歴史になる
不揃いで
気まぐれな
「その時」「あの時」
 ....
祭りが終わっても
参道の石畳には
終電に乗遅れて
ざわついた足音が
見えない檻の中に
取り残されている
祭りの終りの合図を
聞きそびれて
数え切れない
視線の集合が
中空をさ迷い
 ....
いつも
果たせないことばかり
でも
借りを返すように
律義に
約束を果たすと
どこか寂しい

約束ハモノデハナク
ココロナノデス

容易に果たせるのなら
約束ではない
どうし ....
夕暮れの
青いショー・ウィンドーの前を
行き交う
それぞれの時間が
いくつもの
雨粒の中に
溶け出し
雨上がりの朝
それらは
昨日の思い出の中に
消えてなくなる
散る春惜しみつつ緑の露に映(ハ)ゆ初夏の風の色青き 僕が留守の間
初夏の
風が吹いて
春が
名残の桜の花びらを
身にまとい
土手の向こう側に
転げ落ちて行った
初夏の昼下がり

真紅の花びらが
ぼってりと
頭(コウベ)をたれた

熱病のような愛の果て
水平の闇が
けものの声を響かせて
よじれるように傾(カシ)ぐ
見えない神事のために
鳥居の下を
泣きながら
往き来する巫女の袴
拝殿の奥の
不規則な
太鼓の音が
夜の鼓膜を
共振 ....
川面に漂う
名残の桜の
花びらめがけて
一粒の雨の旅は
小さな
波紋を残して
終わる

旅が終わるとき
一粒の雨は
何を見たのか
何も言わなかった
ただ 最後の光景は
波紋の ....
驟雨は
色々なものを流し去る

遠い月を見ていると
いつの間にか
僕の中に
月が
照っている
月の光は
ひとの視線に似ている
美しいと思ったもの
かわいいもの
哀しいこと
通 ....
転調する夢の中に
あなたは また
夢の中のあなたを
訪(オトナ)う

澱んだ夜に
薄く流れる血の
膜を 刺のような
視線で突き刺す
と あなたの表情は
わづかに歪む

あなたは ....
ダンプティ・ハンプティ
そのあと どうなるのか
いつか思いだすだろう
あなたは知っているのに
教えてくれはしなかった
ハンプティ
生卵 それとも
ゆで卵 とにかく
われやすいので
あ ....
あなたの言葉が
重過ぎたので
きのう貰った羊羹を
切るみたいに
二等分する
それでも
まだ 重過ぎたので
また 二等分した
羊羹だったら
小さくなるのに
あなたの心は
軽くは ....
動物園に行くと
いつも
妙な気分になる
動物園は見に行くのか
逆に 見られに行くのか
ガラスの向こうには
牡のライオンがいて
こっちを見ている
隔てているのは
汚れの見えるガラスだ ....
それは
よぢれ
絡み合う
ほどこうとすれば
古い糸のように
切れてしまう
世界を前にした
私 という
存在の脆弱
糸のように
世界とつながる
糸のように
世界から孤立する
本を読みながら
封印のように
しおりをはさむ
思いが
揺らがないように

感動という声が
一瞬聞こえ 打消す
失語したわたしに
感動の言葉はない
劇的なこと
思ったこと
全てが ....
その掌は
緩慢に
闇を
押し拡げる
最後の
夜明けのための
祈り
を捧げる
祭壇には
いつのまにか
わたしがいて
わたしを見ている
早い朝の
透明な風と
柔らかな
乳白色の
朝日の中で
眠っているひとへ
もう 夢の終り近く
名残惜しむような
やさしい寝息と
微かな頬のさくら色
起こさなくっちゃ
いけないけど
 ....
二人の話声が
雨後のしじまに
遠のいて行った
それから もう
何も聞こえない
闇はゆっくりと
比重を増し
畳に拡がる
今夜も
夜が
卵を産みに
やって来た
あれは昨日のことのよう
どのくらい
待っていたのだろう
分からなくなるくらい
来るのを
待っていた
人の流れが
何度も
通り過ぎた
流されように
君はより遠ざかる
今という現在と ....
夜の雨に濡れて
八重桜の花びらの
細いながれが
夜を
夢のように
匂い
艶めかせる
雨音だけの
柔らかな夜を
低く
漂う
花びらの春を
雨に濡れて
見送る
ピリオドの
打ち方を
忘れてしまったので
いつまでも
終われない
今日

ピリオドを打つと
世界は
彼方の青空に
後退する
いくつもの今日が
重なり合い
いくつもの昨日
と ....
転生
お前が
風に吹かれているのを
見ていると
時間が
逆に流れているのに
気付く
薄緑の繭が
光に透けて
若草の宮内卿の
おもかげが
重なる
天蚕(ヤママユガ)が吐き出す糸 ....
その薄緑の
繭は
風に揺れた

四回の脱皮の度に
記憶は
まばゆい光の
緑の揺籃の中で
眠っている

いつまでも
見つからなければ
いいのに

人の来ない
山の奥で
ず ....
都市の夜を
救急車のサイレンが
次第に近くなり
点滅する赤いランプが
尾を曳きながら
架空の領土への
搬送車のように
ゆっくり 遠ざかる
このまま終るはずだった
今日

昨日の ....
ゆるい陽射しの中で
体温のぬくもりの
風に吹かれながら
冬の風に思いをやる

春の余白には
冬の物語を
書こう
たまには冬の風を
吹かせて
震え上がらせる
恋物語には
波乱はつ ....
フクスケ(176)
タイトル カテゴリ Point 日付
自由詩109/6/4 21:52
無名自由詩009/6/3 20:27
暗い橋自由詩109/6/2 19:23
自由詩309/6/1 20:41
どこへ自由詩209/5/30 10:03
足音自由詩109/5/24 10:04
約束自由詩109/5/19 20:42
五月の雨音自由詩409/5/17 18:26
散る春の短歌009/5/16 10:45
土手の向こう側自由詩109/5/13 20:56
薔薇自由詩109/5/12 20:46
巫女自由詩109/5/9 19:40
波紋自由詩309/5/8 20:12
月明かり自由詩109/5/4 8:11
99のアイロニーのために自由詩109/5/3 9:41
ハンプティ自由詩109/5/2 15:44
切り分ける自由詩309/5/1 20:16
動物園自由詩009/4/30 11:17
糸のように自由詩109/4/29 8:56
しおり自由詩109/4/26 20:01
祭壇自由詩209/4/25 14:13
眠り自由詩109/4/24 19:58
夜の卵自由詩4*09/4/23 21:07
待っていて自由詩109/4/22 20:29
夜の体温自由詩209/4/21 21:36
終れない今日自由詩009/4/20 21:53
転生自由詩109/4/19 20:04
山繭自由詩109/4/17 21:21
架空の領土自由詩009/4/15 20:50
余白自由詩109/4/14 21:03

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