わたしは
ノスタルジーだけでは詩はかけない
安易なイメージだけでは詩にならない
安易なイメージは、現実のなかにはないことが多い

詩を書くときはいつも、おし込めた思いが、わたしを食い破ろうと ....
その道もふつうになればいいよね、と
あちらで言ったふつうのひとが

結露した掃き出し窓の縁側の腐った床に常にいる虫

酸素水ってなんだよって、言ったけど
ほんとはいつもいきくるしい ....
白いシャツに染み付いた
香水の匂いとスパゲッティの点々に
日曜日の名残を感じながら
指先を黄色くして
ごしごしごしごし 洗う

とっちめてやる!
という わけのわからない怒り ....
できるならば、あの葉脈に、幹に忍び込み
同じように呼吸し、尋ねたい。

棘(いばら)したたるみどりに囲われて
整然と並ぶ長屋と、神社とお寺とおはかがあり、子は決して生まれず、入り口があって ....
わたしはうばわれない
わたしの肉は獲物ではない

おとこの不満の
不安の
うらみのために
たちこめる灰けむりのなか
凍えた血が沈んでいく

打ち捨てられた ....
私の名前を呼んでください。
「お嬢さん」や、「お姉さん」、あるいは「バイト」なんかじゃなくて。
私の名前を呼んでください。
父の名や、母の名、あるいは恋人の名前なんかでもなくて。

私の名前 ....
どうしてかあなたと飲んだマッコリが苦かったから好きだと言った

抱きあってころげまわったあいいろのセーター毛玉だらけくやしい

365分の1の日に見せつけるため、浴衣を買った

はじまりは ....
今朝きみが脱いだパジャマを畳む、いまごろきみはかれと寝ている


しんぞうにおおあながあいたときだけ撫でるのでいい、きみのねこだし


バリンって突きぬけた街なかで恋人繋ぎするじっぽん ....
ざりざりと行軍をするつむじたち、生活のため波に飲まれて

ストーブのやかんよろしくシューシューとため息を吐く汽車じゃないのに

ひそやかに皆息を詰めているのに足音電車耳を壟する



 ....
いくつかの、一生残るであろう光景に
思いかけない人たちが
私の時間に押しピンを押す

押しピン毎に私は分裂する。殖えていく
過去に縫い止められたわたしと、否応なしに流れていく私

青いま ....
切り花のうつくしさ
根を持たぬ、管理された美
土からとおく
まいにち、冷たい水を待っている
淀んだ水では、たちどころに腐ってしまう花

そうあるように求められたおんなたち
彼女らの容色が ....
はるが来た。
決して、ただ暦のことだけじゃなく。

よのなかが、はるだ、はるだ、と騒ぎ
書店に「新生活特集」の見出し跳ね
アパレルがパステルカラーに染まり
けれど、相変わらず
わたしは黒 ....
いわないけど、ないしょだけど
けさ、前髪切って
おさなくなったの、わたし
せかいの見通しよくなり
切り揃えたまっすぐな視覚
ぴかぴかの鉄砲水がさらってく。

きみとあえるうれしさが
心 ....
重なるたび、すこしずつ、わたしは失われ
すかすかの肉がさみしくて
取り戻そうと、ふたたび、重なり
また失われ
ぽちゃぽちゃと、太ももの脂肪がつめたい

波のように、寄せては返す、痛みにう ....
おおきな、まるいわのなか
みんな、そっと、ゆすられている。
河原のこいしのように。
ぶつかり合い、こすれあい
ういういしいかどが、削れ
お行儀よく、揃えられたこどもたち。

わ がただし ....
せんぷうきが ゆっくり 室内を見回し
ざわざわ うなじを撫でる。
そとはかんかん照りで
けさ干した毛布がベランダで揺れる。

さっきから
赤い目をしたコバエが、しつこく小指にとまるので
 ....
こどもの手をにぎって
「あたたかいね」と言う。
「つめたいね」と言われる。

わたしが「あたたかいな」と感じたら
あなたは「つめたいな」と感じている。

いつもそうやって温度差があり
 ....
花の下肩口に君の声聞く「きみがすきだよ」春の夜です


あなたの名を呼ぶと鈴が鳴るんです胸のはじっこ ちりんちりりと


道ならぬ恋と呼ばせぬわたしらのふわりやさしいあの抱擁を


 ....
ベランダで洗面桶に水を張りすくえないかと膝濡らすつき

まだこよみない縄文もあったろう月光をみてはら冷やすこと

中秋の名月ぷらす1しても、輝いてます。今夜もまた

真夏日に作ったハッカ油 ....
熱湯を浴びたあと
綺羅綺羅しくこおりが浮かんだ
キンキンな水に投げ込まれる。
いちばん色鮮やかで、歯ごたえのある状態でとまる。

サッて血が昇って(顔が熱い!)
サッて血が落ちる。
わた ....
手紙を書いた
何枚も便箋を使って
何度も鉛筆を削って
辞書も引いたし 有名な詩集だって見た

伝えたいことはたったひとつなのに
その一言が見つからなくて
どの言葉も足りなく ....
眼鏡をはずし
目の前を水中に沈めれば
外灯は滲み
ひとびとは陽炎になって
せかいはちいさくちかく、まるくなると
おもっていたけど
無限のひろがり

おとこもおんなもなく
泳ぐような身 ....
枕元に かばんに 机のひきだしに
いつもゆびさきでふれていた表紙
折りぐせのついたページ
だいすきな文のかたまり
好きなので ひゃっかい読みました
ひゃっかい読んで 覚えました

かんぺ ....
なつだから
かぜやみずがぬるくて
わたしもぬるい陽炎になる。

髪の毛がもつれ
からだとからだが近く
凍てついた冬よりずっと
いろんな匂いが生き生きと
なまなましく
あなたのうでは小 ....
もつれた毛糸をほぐそうと
ひっぱったり、ひっくり返したり
しているうちに
かたい結び目
いくつもできて、みつかります。

ああ、これはもう、すんなりとした一本の毛糸には戻りません。
しな ....
なつが来た。
皮膚が湿気を吸って、すーはーすーはー、酸欠の金魚並みに汗をかく。
自転車をこぐ。

なつが来たんだ。
虫除けスプレーの薄荷の匂いが、さわやかで
冬の渇わいて縮んだ、ゴム皮膚の ....
電車のおとが絶えたころ
ひとりで眠っている
わたしは砂になり、シーツのうえにさらさら
零れていく
ラピスラズリの砂です。

あの人の声とともに
ゆめがせなかに打ち寄せて
やわやわと脚に ....
きみの小指から熱い砂糖水が滴り落ちてきて
わたしの両の手で受けたとき
ああ、きみは海から生まれた生き物じゃないのだ、と悟る。
根本的に異質な生き物なのだ。
わたしにとってもきみにとっても。
 ....
梅雨の雨に打たれても
冷水のごとく頭を冷やしてくれるでもなく
ただじっとりと皮膚細胞の表面を融解させていくだけなので
五月雨には稀塩酸が溶けている。

猫は命が九つあるというが
命を七つく ....
うーん、もう
どうにもこうにも
まったく、やっかいなので
くちびるを接着剤でくっつけちゃいました。
くっつけちゃったので、しゃべれません。
これであんしんあんぜん、口は災いのもと。

あ ....
凍湖(147)
タイトル カテゴリ Point 日付
わたしに書かせるもの散文(批評 ...515/8/7 17:15
スタンダード短歌315/7/26 20:08
洗面台にて自由詩4*15/7/26 20:03
誇りのために、あるいは怒りのために自由詩115/7/25 2:15
あなたがたのものではないのだから自由詩1*14/10/10 4:12
私の名前を自由詩4*14/7/10 15:48
百合短歌2短歌2+*14/7/9 4:22
百合短歌短歌314/7/1 9:51
駅で(冬に)短歌114/6/29 5:44
ピンで押された姉妹たちへ自由詩114/6/3 20:36
生花自由詩314/6/3 14:01
春分に自由詩214/3/21 9:51
なちゅらるハイ自由詩214/2/28 8:08
レモン石鹸自由詩114/2/8 1:40
そっとゆすり、自由詩413/12/14 2:39
桃。自由詩213/11/28 2:23
手の温度差自由詩16*13/10/17 18:42
19歳の季節。恋をしていました短歌3*13/9/21 6:04
ベランダで洗面桶に水を張りすくえないかと膝濡らすつき短歌113/9/21 5:22
色止め自由詩5*13/9/15 1:37
手紙自由詩3*13/9/15 1:22
近視の夜歩き自由詩1013/9/3 3:43
おもいもかけない自由詩313/8/27 9:25
匂やかに自由詩113/7/11 18:15
もつれた毛糸自由詩613/7/4 18:06
なつが来た。自由詩113/7/3 0:50
自由詩313/7/1 20:37
親しいということ自由詩213/6/14 0:46
わたしは猫になりたい。自由詩5*13/6/13 3:53
お口にちゃっく。自由詩2*13/6/11 18:41

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