2024年11月13日に谷川俊太郎さんが92歳で亡くなったとのニュースがありました。
あまりに偉大な詩人で、日本で生まれ育った人で谷川さんの詩や絵本にふれたことのない人は居ないかと思われます。
そ ....
こどものころ
朝顔の種をもらった
それは幼くして亡くなった子の
短い間育ててた朝顔がつけた種の系譜で
いのちの大切さが書かれた
小さな紙が同封されていたように思う

朝顔は朝だけ咲く花
 ....
砕けたガラス、こころ
鋭角な光がきれい
どうにもできないものは水に流せよ、せよ

川の水に放たれて
砂利に磨かれて
まるい石に角をぶつけぶつけて
砕いたあっちはハンマーのままなのに
こ ....
髪に白いものがまじって
目尻に笑い皺ができて
腹がたぬきになって
アッハッハと笑う
陰鬱な17の春にはできなかった溌剌さで

ながく、あまりにながく
春が続き
たくさんの芽がひらくこと ....
もう服を買うな、買うな、と言い聞かせながら
またショッピングサイトを漁ってる

季節の変わり目には
巨大なショッピングモールを足が棒になるまで
ぐるぐるまわるが
どこにもぴったりなやつがな ....
怒りを抱きしめる
しっかりと両の{ルビ腕=かいな}で{ルビ抱=いだ}いて
だれにも盗まれないように

他人の怒りに迂闊に乗っかったりしない
酔っぱらいがハンドルを握る暴走車に乗るのと同じ
 ....
境とは細い線のようなものではなく
どこまでもどこまでも続く長い道のりのどこかにあるまぼろし

どこかで今までの着物を焼き捨てて
河岸を変えなけりゃ
この旅行きは終わりやしないが
そもそもど ....
深い夜やおら身を起こし
冷たい水を求めて蛇口をひねった
それから数週間。
ずっとぽとりぽとりと音がする
蛇口を力いっぱいしめてもしめても
ぽとりぽとりと落ち
滲み出るそれ
どうにもくくれ ....
思い出せないくらい長いあいだ履いていた靴の
ソールがなめらかになり
雨の日にツルツルすべって
ひとりだけ氷の上を歩いているようで
それも悪くはなかったが
いつかは転んで頭を打ちそうと思い
 ....
黒い波がやってくる
水を吸ったぶ厚い毛布のように
重く冷たい波が
夜ごとあなたを覆い
震えるあなたのまぶたの奥に
サイケデリックに光がはじける

耳をすませば
声が聞こえて
最初は囁 ....
17時15分、浴室の混雑が落ち着いたころ
Мさんの髪の毛を洗う
独特のウェーブが水をはじくので
シャワーが頭皮に浸透するように
丁寧に指でもむ
濡れた入浴着が脚にまとわりつく

Мさんが ....
印画紙に染みついた影
人生から落とすまいと誓っていたものから
手を離した瞬間を覚えている

何度も何度も反芻する
記憶が消化器官と口内を往復する
輪郭がとけ筋も擦り切れ味もなくなる
そん ....
幼いころ
あした学校が爆発しないかなと思いながら
すべてやり過ごそうとして
石のふりをしていた
すこしのぬくもりもない
割れたばかり
そんな印象の石だ

大人になって
壊れた学校を目 ....
やわらかい布を
やさしい手つきで
そっと顔に
シャンプーのスッとする香りと
頭皮をマッサージする指

うちに来てくれたひとが神妙な顔で言うには
これは訪問入浴の道具と同じものだって
ふ ....
そらはあおい
みんなそういうし
ぼくもそうおもっていた
でも
じっさいよくながめてみると
そらって
あさやけはみかん
くもりはふるいふとんのなかみ
あめはへやのすみのほこり
ゆうぐれ ....
嘔吐物の匂い
リネンの手触り
二日酔いの痛み

神さまが死んだあとに
うまれてしまったので
自分の重みを
神さまとわかちあえない

昨夜
目につく鏡をすべて割ってしまった

や ....
毎日アンパンを食べている
このアンパンはすべての栄養がバランスよく入ってると宣伝されていて
飢えないためだけに食べる

完璧な栄養のアンパン
それを手にしたブラウン管のなかの刑事、張り込みを ....
新年のはじめての夕焼け
久々に会う家族とこたつで雑煮などを食べ
あるいはふだん遠方に住む同窓と旧交をあたためていた
あの日

それは突然に来て
なにがなんだかわからないうちに
時間がひび ....
手のひらですくえるほどの軽さ
ふっと息をかければ羽毛のように
水のようにさらさらと
それくらい
それくらいと言いたいのに

あなたが踏んだ泥は何億年後かにも
化石になって残るだろう
た ....
あなたが天にましますかどうかに興味はない
あなたが起こす地上の奇跡も期待しない
あなたが開いている天上の門もどうでもいい
ただあなたと呼ばれるもの
あなたを呼ばう人の声の
ただくちびるの動き ....
神を探している
渦巻く嵐に仕え
霞に額づき
灰色の聖餐を受ける
そんなことができるような神だ

雪が降るよ
遠く故郷を離れ、胸の中に
あの重い、湿った
削ったばかりの木片のような
 ....
ひみつ
口にもしないから
風も通らずよどんで
古い醤油瓶底のようなそれ

そんなものが胸のすきまに
たまって
口がどんどん重くなる

もう一言も発せないから
すこしばかり目 ....
おんなたちがあの崖から飛んだんよ
つぎつぎと
あの美しい波濤に
着物の端が消えてったんよ
おんなたちの背後にはなにがあったんか
なにをおそれて飛んだんか

波間の白い泡
地上では生きれ ....
花の種を植えようよ
そこに種があるかぎり
植えようよ

おおきな水が
うずまく火が
ようしゃない光の炸裂が
通っていったあとの
街の
そのあとの
地面を探して
土があれば
植え ....
走ってる
走ってるよ
ただ走るために走ってる
ああ、明日が追いついてくるよ
影が手を伸ばしてるよ
もっとはやくしなくちゃ
とまったらだめだよ
立ち上がれなくなっちゃう

足がもつれて ....
秋に撒いた種が花を咲かせたか
わたしは知らない
春になる前に去らなくてはいけなかったから
瓦礫のなかに
そっと咲いていたらいい

眠ると亡くなった人に会える
まだ生きているような感じで
 ....
ずっとおれを見ていてくれといったのはおまえなのに
おれがおまえをずっと見ていたら
おれを見ている人間はむりだ
と言って遠ざかっていったおまえ
わたしが習ったことのない踊りを
みんなが踊ってる
わたしには聞こえない音楽
踏めないリズムで
ようようと
あたりまえの顔で
大通りで隊列を組み
ひとつの祭りのように

わたしの身体は ....
1台のシーシャのように
同じ味の夢を共有した
あおい煙をくゆらせて
交互にホースを持ち替えて
ぽつりぽつりと交代で話す

夢ってね叶わないんだよね
そんなこともわかる年ごろで

けれ ....
さみしさはすきま
からのポケット
置きざりにされた影

白く柔らかな波で覆い隠し
なにかもみちみちている
そんな人に見えるように
努力している

けれど一分のすきもない人は
これ以 ....
ほしがることがむずかしい
いろいろほしいものがあるのに
舌が糊で貼りついたように
口蓋にくっついて声にできない

夢を語るだけならお金はかからないけど
断裂があちこちにあり
わたしは押し ....
凍湖(144)
タイトル カテゴリ Point 日付
会議室スレッド
谷川俊太郎さんの好きな詩について教えてください会議室24/11/26 17:04
投稿作品
いのちの朝顔/2025.7.5自由詩425/7/6 3:41
シーグラス自由詩325/7/6 1:30
長い季節自由詩325/6/26 21:29
ファッションモンスター自由詩325/6/15 15:02
オパール自由詩5*25/6/14 10:05
越境者自由詩325/6/13 3:11
滲み出る自由詩4*25/6/9 2:11
新しい靴を買いに自由詩425/5/28 23:56
黒い波自由詩125/5/28 22:58
それぞれのかたちの自由詩625/5/1 1:45
反芻自由詩725/4/28 23:35
やわらかい石自由詩4*25/4/7 22:09
湯灌自由詩125/4/5 23:32
そらはあおい自由詩425/4/3 2:06
無痛自由詩625/3/30 23:09
アンパン自由詩425/3/24 22:48
あの日自由詩2*25/1/1 14:01
たましいの重さ自由詩924/12/30 1:19
傾きつづける自由詩424/12/28 2:31
神を探している自由詩324/12/25 1:35
ひみつ―澱自由詩524/12/18 19:22
自由詩324/12/5 22:31
種を植える自由詩324/11/7 2:16
走りつづける自由詩424/10/6 21:44
花を渡す自由詩524/9/29 3:20
_自由詩024/6/30 20:57
囲まれた時間自由詩324/6/14 12:56
煙の味自由詩324/5/22 22:46
さみしさはすきま自由詩624/3/30 2:35
ほしがること自由詩724/3/30 0:46

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