言葉は 世界を変え得るだろうか
病を癒せるだろうか
絶望に塗りつぶされた 魂の闇夜に
明けの明星を 手繰り寄せ得るだろうか
今日も 書斎の周りには
白いキーボードが貪婪に貪った
文字の ....
相変わらず、生きている
でも
それでいいのだ
それが いいのだ
絶望と戯れるには 人生は短すぎる
真実から目をそらすには 人生は貴重すぎる
街人の手で 世話をされたサク ....
仕事から帰って
まあとにかく 手に取ってみる
テレキャスターのネックを掴んで
壁に背中を預けて 床に腰を下ろし
腿の上に ギターを抱いてみる
まずは 調律する
そして 手癖のように ....
好きだと 言うべきだったのだろうか
好きでもないのに?
それは僕らを貶めると
そんな乾いた 中身のない言葉を放るのは
愛について 考えるべきだったのだろうか
興味もないのに?
....
空が涙をせがむから みんな互いに殺し合った
立ち昇る黒煙と 未亡人の嘆き
立ち尽くす 一人の少年
泥に覆われた 丸い頬
額にかぶさる 前髪の茂み
その奥にきらめく ひび割れた瞳
干上が ....
毛羽立った 古いテニスボールを
空高く 投げ上げる
ナイスキャッチ
捕まえたのは カラスのくちばし
休日の 午前十時
郊外に 散歩中
獲物をくわえたまま ゆったりと滑空するハ ....
苦痛の茨が
絡まりあって
庭園の門にはびこる
旅の途中で足を休める
三月の雨雲たち
深い地の底の熾火を届ける
生垣の椿の花びら
屋敷の番犬が
黒い身体をしならせて
砂利道を巡 ....
曇り空
天駆ける白馬の足跡が
頭上を覆う 掛布団の裏に刻まれていく
世界はまだ 眠っている
憎しみや 苛立ちの悪夢に
苦しげな 寝返りをうちながら
それは白い眠り 長い冬の終わり
....
強くなれない
それは醜いから
弱くなりたい
それは儚いから
生きているのは
鈍感さの証し
感じやすい奴らは
みんなもう 逝ってしまった
鳥は鳴く
誰も聞いていなくても
鳥は鳴く
木々の梢から
光あふれる 林冠の隙間から
まぶたの裏側に赤く滲む
陽光の温もり
鼻をくすぐる 芝草の匂い
シャツの下で身じろぐ 数匹の ....
冷蔵庫の中に
悲しい思い出をしまう
それを新鮮なまま
また手に取って 眺めるために
指先で掬って 口に運ぶために
人の経験の総ては
無意識の内に求めたものだと
語る言葉があった
恐 ....
研いだペン先 手首を切り裂き
赤い言葉が流れ出す
真夜中のキッチン
冷たい蛍光灯
君の目は
糸を引く赤い流れを
舐めるように追いかける
冷や汗
白い寝巻のワンピース
今年 ....
目覚めても まだ何も感じない
ストロボを焚いたように 視界は真っ白なまま
君は起き上がる ベッドの上で部屋を見回す
昨日見た 夢の欠片を吐き出すと
耳につくのは 壁掛け時計の呟き
締め忘 ....
俺はストーカーよろしく
君にまとわりついているけど
全く振り向いてくれないんだな
言葉のメッキを塗りたくった
俺の虚像の裏側を
君はとっくに見抜いているんだろう
頭がいいからな
....
まるで自分が 他人みたいだ
マネキンみたいに 温もりがない四肢
片足でポーズをとり続けたせいか 右足首に亀裂が入っている
駅ビルの外向かいに面した デパートのショーウィンドーの中で
丸一日 ....
月を{ルビ齧=かじ}る
空に凍てつく月光を
画鋲を摘み取るように
指の合間にひょいと挟んで
口の中に含む
すると世界が暗くなり
おまえの喉は冷たく燃える
噛み砕いた光は 食道を這い下 ....
下弦の月の両端に
二羽のフクロウ舞い降りて
シーソーみたいに揺らしてる
眠りに落ちた街のビル
その足元に落ちた影
月の動きにあおられて
ゆらゆら ゆらゆら 揺れている
俺の頭も ....
生きるのは痛い
北風の切っ先
酷暑のサンドペーパー
でもこたえるのはむしろ 肉体よりも 心
人々は 視線の剣を結びあいながら
肩を怒らせて 通りを行き交う
道端の植え込み 鳥たちは 素 ....
やけくそになった時 何がしたくなるか?
鏡の向こうに住む 男に聞いてみた
奴はこう答えた お前と御同様
欲しいのは自分を 変えてくれる薬だぜ
町の空はビルに塞がれ カラスの群れがゴミを漁る ....
月光をグラスに落として
バーボンを注ぐ
舌の上に
冷たく燃える
冬の夜のエッセンス
庭先で
君の幻と踊る
その虚ろで
優しさに満ちた微笑み
白いガウンの下で
その身体は
磨り ....
もしも神に出会ったら
すがり付くだろうか
狂った歯車を止めてくれと
飛びかかるだろうか
生きる痛みの責めを負えと
それとも
お茶に招くだろうか
穏やかな春の午後に
....
君は ポーズをとる
傷ついた純真
夢の紡ぎ手
{ルビ女王=クイーン}
その他 もろもろ
その全てに 飽きたとき
君は 煙草をくわえる
春先のプラットホームで
紫煙の中に霞む 擦 ....
殻を破った指先が
外気に触れて凍りつく
口を広げる卵の亀裂の間から
盛大な湯気が上がる
でてきた
でてきた
やあ 冬景色にようこそ
素っ裸の体に鳥肌を立てて
君は生まれたての大 ....
母さん
随分あんたと
話してないな
いつも 棘を踏むような気分にさせられるから
母さん
今日も元気に働いてるかい
俺のいない町で 遠い空の下で
自由を楽しんでるかい 暴君だった親父か ....
やあ
何も愛してないぜ
俺は今 何も愛していない 何も
鎖にぶら下がった流しの栓みたいに 底なしの穴の上で 所在無げ
黒いゴムの顎先から 滴が垂れる ゆっくりと
涙型に結ばれた水滴が ス ....
経験という鍋の中で茹で上がった
卵の殻を剥くように
お前の理性や
潜在意識を
一枚 一枚
ひとかけらずつ
はぎ取っていって
その むき出しの魂を
この手の中に 見つめてみたい
白く ....
倦怠は ぬるい酸のように
この肌を 柔らかく溶かしていく
このバスタブから 立ち上がれば
街の風が 洗うだろう
むき出しにされた 俺の白いあばら骨を
カルシウムで出来た 籠の網目の隙間か ....
突然現れた希望が
暗闇の中ですさんだお前の身体を
光の元に暴き出した
お前は頭を抱えてうずくまる
ふしくれた指の間から
針金のような髪が四方八方に飛び出している
かびたパンのような身体には ....
トンビが輪を描いた
僕はそこに
メッセージを探す
空っぽの空に残された 足跡に
寂しいけど 寂しくない
不思議な気分だ
君の温もりを求めなくても
すでに世界の腕が
僕を抱きかかえて ....
いいって 気にすんな
そう テーブルの上の
サイコロが 言った
そこで 僕は
この肩に 乗った
もろもろの 煩いを
サイコロに なすりつけて
もう一度 転がしてみた
キン キン ....
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