蝕     ある天体が他の天体の一部または
      全部をおおい隠す現象。日食・月
      食、星食のほか、惑星による衛星
      の食や恒星同士の食などもいう。


蝕 蝕  ....
焼けた石の上を滑らかにすべる水銀
光ったかと見えてそこにはない
それは一匹のとかげ
生き物であることを頑なに拒否する

草むらに放られたまま忘れられたナイフ
発見からまぬがれる殺人事件の凶 ....
転がる空き缶を追う犬
犬は追う生き物だ
しかし犬は追わない
目前の暗闇を

餌の残りを掘った穴に隠す犬
犬は穴を掘る生き物だ
しかし犬は掘らない
飼い主の墓穴を

わたしはそれを不 ....
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老いた造船家の仕事部屋は紙と鉛筆と分割器が置いてあるだけだ。
そして窓の夕暮れの光。充分な設備だ。 
なぜなら造船家は夕方 ....
真夏の川で
二艘の小船が出会った
船頭は一人ずつだ
だが一艘は自転車を積んでいるのだ
川は驚きに流れを停めてしまう
よく見れば自転車は逆さまになっているのだ
川は植物のふりをする
船頭た ....
合歓(ねむ)の木の上で眠りをむさぼる不らちな内臓
不透明な猫が目覚めたところだ
今そこにいた所に白っぽい魂を残して
静かにとなりの木に移る

走り去る猫
睾丸は膨らみ過ぎて目玉と区別がつか ....
かつて、ポエムvs現代詩という対立がネット上でありました。
僕がネットに詩を投稿するようになったのは、2002年のことですから8年も前のことです。
僕自身の印象では、ポエムと現代詩がお互いに競い合 ....
 怒り           怒りは死を招く
 怒り           怒りは死までを招く

 わたしの怒りはあなたを奪う
 わたしの怒りはわたしじしんを砕く

 疑う           ....
母は 捨てる
真昼に閉じた雨空へ捨てる
滑空する白色の鳥が堕ちる所
そこに堕ちる母のものを捨てる
湿地帯に隠された 母の書いたもの
そこに堕ちる母のものを捨てる
滑空する白色の鳥が堕ちる所 ....
試みに彼の鞄を持ってみる
革製のそれは大きさばかり目立つが相変わらず軽い
きっといつものように家族が入っているのだろう
そのことは彼から聞いている
彼は信用するに値する人物なのだ
だから中身 ....
浅瀬の悔恨

波打ち際の羞恥

足もとの砂をさらってゆく喪失という名の波



これ以上 

ぼくをなぶって何とする

これ以上 

ぼくをあざけり何とする
(父、父、父、と泣く声が聞こえるがあれはなにか)
(息子の声か、ならば過去からの声か)
(父の声か、冥界の声か)
倒れたまま父は泣く
足をすくわれ転ぶ
父が「あかの他人」と呼ぶ人々から
湿 ....
粘土と唾液で造られた都市から
悪臭が漂ってくる
鼻のつまった男達が希望を語り合っている
むごく発達した上腕筋
愛撫はハンマーの一殴りだ

雷鳴の方角をさぐれ ひびわれた夜空の
耳垢だらけ ....
わたしは男の帰りを待つ
待つ時間こそわたしを
存在させる
つまり待つことによってわたしは
男への愛情を確認している
しかしそのことを誰にも悟られたくない
そのため日常の動作は速く 
人の ....
愛するわたしは愛するあなたのように語り
愛するあなたは愛するわたしのようにつまずく
わたしはあなたを愛するから帽子を脱ぎ
わたしはあなたを愛するから最初の皿を割った
あなたはわたしを愛するから ....
悲劇、というものがあるとすれば
ミルクの乾いたコップや
公園でさかだちをする男や
尻を突き出し注射におびえる少女が考えられる

喜劇、というものがあるとすれば
冬の朝の凍ったパンとズボンや ....
 詩集『月に吠える』より「猫」

まつくろけの猫が二疋、
なやましいよるの屋根のうへで、
ぴんとたてた尻尾のさきから、
糸のやうなみかづきがかすんでゐる。
『おわあ、こんばんは』
『お ....
……とある蛙氏が、詩の現状と難解ということについて「私論・詩論・試論」という文章で議論している。
ぼくはこの文章の存在を知らず、きのう初めて読んだのだが、それについて思うこともあるから感想文としてこ ....

その絶望



把手


のある

の胸
あるひは穴
のある

の腕


「夜の要素」の冒頭の二連です。
この奇妙な形式の詩の作者は北園克衛(きた ....


ああ麗しい距離(デスタンス)、
つねに遠のいてゆく風景・・・・・

悲しみの彼方、母への、
捜り打つ夜半の最弱音(ピアニッシモ)。


ぼくの周りには、ランボーを読んだり、中也 ....
詩について語り合おう
             鶏の首を絞めてから
            鍋にたっぷりの水をわかし
           たきぎの準備をしてから
          風呂を ....
そこには夜のみだらな狼藉もなく
煌々と一個の卵が一個の月に向かっている
                             「静物」より


吉岡実(よしおか みのる)の詩集『静物 ....
二つの日のあいだのある一日、そしていつものように、星のない夜という夜はなく、女の長い腹が、それは小石だ、ただ眼にうつるもの、ただ真実なものが、瀑布のなかをのぼってくる。    
           ....
「書斎に於ける詩人」

それゆえに・・・・・
儂(わし)は雪の振る日の午下(ひるさが)り
水晶のやうに明るい牕(まど)ぎはの長椅子でこれを誦(よ)む
嗚呼(ああ) 書籍よ
爾 ....
「雨」

南風は柔らかい女神をもたらした
青銅をぬらした 噴水をぬらした
ツバメの羽と黄金の毛をぬらした
潮をぬらし 砂をぬらし 魚をぬらした
静かに寺院と風呂場と劇場をぬらした
この静 ....
「春」

てふてふが一匹韃靼(だったん)海峡を渡って行った。



「春」という一行詩です。
作者は安西冬衛(あんざい ふゆえ)。僕の最も好きな詩人のひとりなのです。
安西冬衛の詩との ....
ふらちなよみのくにから来る男は
   死んだ者をむりやりたたき起こし 
   ふとどき者の口からなにごとか聞こうとする

その行為 その汚らわしい行為に
あしも ....
ふと あなたに呼びかける声がある。
あなたはコーヒーカップを置き
(あるいはオンザロックグラスを置き)
戸口を出てゆく。
 
   外はあなたにとって
   意外な季節だ
   たとえ ....
老いたれば母は苺に喰ひついて
   
       赤き果汁をだらだらとこぼす。




とんかつもたまに食ひたし施設なれば

       母のきもちはわかれども黙る。


 ....
エプロンににじみて母は微笑めり氷菓のうへの苺シロップ


母はまだおみなごなるらむデザートの凍れる苺冷凍庫にあり


わが母のちぶさ重しも苺{ルビ熟=う}れ口にふくめばつぶつぶが刺す
非在の虹(170)
タイトル カテゴリ Point 日付
自由詩2*10/8/13 20:52
とかげ —鳥獣虫魚より—[group]自由詩010/8/12 0:59
犬  —鳥獣虫魚より—[group]自由詩310/8/10 11:35
造船家 —レンブラント画より—自由詩2*10/8/9 17:40
真夏の事件自由詩010/8/7 12:15
猫 —鳥獣虫魚より—[group]自由詩110/8/6 10:26
ポエム・現代詩散文(批評 ...1*10/8/6 9:53
オセロオ自由詩1*10/8/4 21:39
書かれた—母(2010年参稿)自由詩7*10/8/2 23:11
彼の鞄自由詩1*10/7/31 21:17
去年(こぞ)の海自由詩010/7/23 20:06
書かれた—父自由詩2*10/7/17 20:43
洪水自由詩210/6/27 16:53
日常自由詩110/6/27 16:15
新しい生活自由詩110/6/25 22:00
悲劇、喜劇自由詩110/6/22 22:39
大好きな詩人を紹介してみます  「萩原朔太郎」散文(批評 ...5*10/6/17 19:15
詩の行くえ散文(批評 ...410/6/16 0:52
大好きな詩人を紹介してみます  「北園克衛」散文(批評 ...10*10/6/11 21:22
大好きな詩人を紹介してみます  「吉田一穂」散文(批評 ...7*10/6/8 22:08
詩について語る自由詩210/6/4 21:51
大好きな詩人を紹介してみます  「吉岡実」散文(批評 ...4*10/6/4 14:17
大好きな詩人を紹介してみます 『処女懐胎』ブルトン—エリュア ...散文(批評 ...3*10/6/1 20:18
大好きな詩人を紹介してみます  「日夏耿之介」散文(批評 ...4*10/5/29 12:37
大好きな詩人を紹介してみます  「西脇順三郎」散文(批評 ...6*10/5/26 8:51
大好きな詩人を紹介してみます  「安西冬衛」散文(批評 ...4*10/5/23 21:14
詩を遠ざけるための断章自由詩4*10/5/23 16:54
ふと あなたは自由詩110/5/15 13:48
食ひ物と母短歌2*10/5/8 23:15
短歌010/5/4 20:15

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