過日、ヨーロッパを旅したこと、おそらく二度と行かれないだらうと、思いをめぐらすことしきり



周縁に隠遁するはたのしけれ死あり詩のありまれびとのあり



地を裂くは猛き神なれ巨大な ....
もう以前のことだが、足立巻一氏の名著「やちまた」をある驚きをもって読んだものだ。
「やちまた」は語学者、本居春庭の評伝であるが、本居春庭とは、本居宣長の長男であり、日本語文法の発見者として初めてその ....
学寮の{ルビ公孫樹=いてふ}のみどりたかだかとそのてっぺんの知恵深き鴉


「{ルビ去年=こぞ}の雪」ルフラン低くつぶやきつ絶交の友をおとなふ


悪徳も美徳もありき若さかな支離滅裂の理論 ....
{ルビ抱=だ}きたればくちびるひらき真珠見ゆわれまっさかさまにイカロスのごと


恋人の去りてコーヒーひえびえと洗面台のおきざりの{ルビ経口避妊薬=ピル}


愛なれば背はむけぬべし乾きた ....
「口を開けばうたとなる」そのさま覗き見の妹は{ルビ蝦蟇=がま}吐きたるを見る


ボードレエルほどの遺産を欲すれば生涯に花悪の華こそ


法華経に異形のけものまたがりてなほ恐ろしき賢治を夢 ....
出口{ルビ佇=た}つランナー病みてそのドアを叩けど無人のマラソンコース


熱病ランナー肺に熱風、血は沸騰。されども着かぬアラスカのゴール


沿道に激しく小石蹴り入れぬ石に付着の破傷風菌 ....
俺は桜 吠えるぞ  
俺の下で
そんなにうるさくすると

俺がいつヒラヒラだのというた
はらはら、ふーわりひらり だと
黙れ 俺は花をつけただけだ

俺は性交の時期を 一年待って
よ ....
死近く木漏れ陽足にまつはれば動かぬものはわが足のみ


カルメンを聴き誘惑者を求むれど落葉積もる妻の車椅子


口中にあふるるものは入れ歯さへ{ルビ緑青=ろくせう}浮きて痺れる歯茎

 ....
兄ははたち腿高くあげ走りけりその足に業病の兆し見ゆれば


祭祀より怖れられたる娘を娶り今宵ひと晩狼の鳴く


山の木々黒きかぐろきかさなれり目をあげれども空も見えねば


知られた ....
知られざる神殺さむと闇に伏す汗の額の酷く光れり


ネフド砂漠越えれど海は見えず{ルビ身体=からだ}延べて砂漠の土は甘し


進水式すみしドックに高波の波おしよせる暗き海より


海 ....
愛犬ガラス戸に>―<の字に飛びかかり はかなきはI love you


ぬくぬくと陽だまりに眠りを包みをり 若さすら包みをり猫は


{ルビ襤褸=ぼろ}で作りし{ルビ偽物=つくりもの}か ....
梅雨前線南下せよニッポンマイマイ銀に光れり


紫陽花に雨の痕のみ印されてかたつむりなぜ隠れ家に棲む


貝を模し縞模様模し花を模し粘膜粘る雌かたつむり


銀泥の涎を垂らし歩む牡そ ....
暖気は彼方から来る
唾液の滴る地平から
巨大な湿地帯を通り
夕暮れの砂漠を抜け
私の肺臓に進入する

絶える事ない暖気は
凶暴な森林を通過し
不安な脇腹をかすめ
ベッドに倒れる私の
 ....
乾燥した心には持って来いの、あまたの人形たち
一体ずつ語りかけてゆく
動かない人形の幽かな戸惑い
そんなことをされたことはありません
という動かない抵抗
ああ、腕をおあげなさい
そのために ....
湿気と暑熱が凝り固まるジャングルの奥
そのはば広の葉の重なりを覗きたまえ
黒く蠢くものこそ無数の毛虫
黙々と食べ累々たる糞を垂れる

糞は山となりジャングルとなる
すなわちジャングルとは彼 ....
幾分の恥じらいを含んでランナー
右足を上げる
拒みもせず微笑みすら浮かべて
ランナー
左足を上げる
心弱き者よ運動を直視せよ
ランナーは運動している
恥じ多きものよ停止を知れ
ランナー ....
考えることない足の裡に
沸き立つ筋肉がある
氾濫の予感に皮膚は青ざめ
狂おしくアキレス腱は悲鳴を上げる
陰画に刻まれた冬のランナーよ
スタートの位置を決めろ
地べたに奇妙に指を突き立て
 ....
丘を走る老いたランナーの濡れた額
君は見たことがあるか
皺だらけの手に
まとわりつく子どもの手
を払いのけ
上手く駆けられるだろうか
疑問は
ランナーの背後に残されるのだ
最後に拍手
 ....
被告の名が告げられた
その名が法廷に響き渡った時
傍聴席はエクスタシーに飲み込まれ
男も女も腰をくねらせた

皮膚が硬く臭う者それは裁判官だ
検事も弁護士もシャツをはみ出させ
法廷は不潔 ....
古代ではしばしば吟遊詩人の虐殺が行われた。吟遊詩人の言葉は「水鏡より真実を語り、猿より虚偽を述べる」とされたからである。しかしこの事実は吟遊詩人の言葉を後代に書き記した文献から判ったのであり、とすると ....
非在の虹(170)
タイトル カテゴリ Point 日付
辺境紀行Ⅰ 五首短歌109/4/2 15:47
短歌と文法、詩と文法散文(批評 ...5+*09/4/1 17:02
学寮 五首短歌109/3/31 21:57
抱(いだ)けばイカロス 五首短歌009/3/30 14:59
詩人気取り 五首短歌1*09/3/29 16:28
ランナー病みたり  六首[group]短歌0*09/3/28 21:03
桜ノ花ガ怒レル歌自由詩1*09/3/28 8:22
老齢    五首短歌109/3/26 18:24
神殺さむ Ⅱ     五首短歌1*09/3/25 9:19
神殺さむ Ⅰ     五首短歌1*09/3/24 21:49
愛玩、動物  八首短歌109/3/24 4:38
かたつむりの栖  五首短歌0*09/3/23 14:28
かなたから自由詩109/3/11 21:31
春の人形自由詩009/3/9 2:07
毛虫[group]自由詩109/3/8 16:08
ランナーを試みる[group]自由詩109/3/5 0:54
冬のランナー[group]自由詩0*09/3/3 14:25
老いたランナー[group]自由詩209/3/1 4:45
被告自由詩3*09/2/28 16:16
偽る人自由詩109/2/21 17:06

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